新風のマーケティング

@stwbstwb

第1話「新しい風」プロローグ

東京のビジネスエリア、スカイラインを形成する高層ビルの影に隠れるような、控えめなビルの四階。そこに「橋本商事」という控えめな看板が存在する。この会社のオフィスの入り口を一歩進むと、どこか懐かしい雰囲気を持つ室内が目の前に広がる。古びた茶色のカーペット、木目調の家具、そして窓際には昭和の香りが漂うコーヒーマシンが静かに時を刻む。壁一面には過去の取引先との記念写真や、古い日付の入った賞状がずらりと並べられている。


中央のデスクには、シルバーの髪を持つ中年の男性、正樹が座っている。彼の手元には様々な資料が広がっており、時折電話のハンドルを取りながら、経験豊富な眼差しで資料を確認する。彼の声は安定しており、相手の言葉を確かめるように頷きながら話を進める様子は、まさにベテランの風格だ。


一方、窓際のデスクには、短めの黒髪を持つ若い女性、里美が座っている。彼女の前には最新モデルのPCがあり、その画面には色とりどりのグラフやチャートが表示されている。彼女のデスク周りは新しい。デジタルマーケティングの書籍、業界誌、そして彼女のアイディアをまとめたノートが所狭しと置かれている。時折キーボードを叩く彼女の動作は速く、その表情からは熱意を感じる。


正樹が電話を切った後、彼は窓の外を一瞬見つめる。都会の喧騒を背景に、彼の瞳には過去の日々の重みと、未来への希望が映っている。同じタイミングで、里美も新しいデータの分析を一旦ストップさせ、窓の景色を楽しむ。彼女の瞳には、新しい世界への好奇心と期待が宿っている。


このオフィスの中には、正樹の伝統と経験、そして里美の情熱と新しい風が同居しており、まさに新旧の融合を体現している。

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