無能力の高校生Aは生徒会長により世界を救うヒーローになる…予定です

紫雨

第一話 無能力である僕の手違い入学

「なんか、入学できたみたい」

 母の一言で僕は思わずスマートフォンを落とした。

 思わず「は?」と声が出る。

 反抗したかったわけではない。理解が出来なかった。

 僕が受けた高校は異能力者専用だ。それも、国家を代表する難関高校の一つ。かなり厳しい審査があるはずだ。

 無能力でスキルなし、おまけに勉強も運動もできない僕が入学できる場所ではない。


 二十年前、魔王が現れてから、この世界には二種類の人間が共存している。

 魔族の血を引く異能力者と純粋な人間である無能力者。国同士の争いは絶えない世の中だが魔族と庶民は良好な関係を築いていた。

 考えれば単純な話だ。異能力者は戦争に使えるし、国同士の取引にもお金にもなる。そんな無能力者の悪知恵が働いたこともあり、異能力者は国を背負う重要人物として生まれた瞬間から優遇される。その生活があまりにも快適なため、彼らは無能力者に手を出したりはしない。国内は常に平和であった。

 そう、僕以外はみんな上手くやっていた。

 国内が平和なのはあくまで利害の一致。特別に優しい人間がいたわけではないのだ。

 僕は魔族の血を引く無能力者だ。たくさんの医者に診てもらったが、結果は同じ。魔力を持っていながら何の能力も与えられない無能な人間らしい。その上、魔族の血の副作用で太陽の光を直接浴びると皮膚が焼けたように痛むし、夜も上手く寝られない。本来なら消費するはずの魔力は体内に溜まり続けるため体は弱く、一年に数回激しい吐き気に襲われる。

 何よりもつらいことは味方が誰もいないことだ。異能力者でも無能力者でもない僕は人類の仲間はずれだ。両方からいじめられる

 父は僕に失望し、無関心。母は夢を諦められず、僕に難関異能力者専門高等学校を受験させた。そして今、なにかの手違いで合格してしまったのだ。


 魔法使いを彷彿させる制服は、日中も活動できるように長めの袖と顔がすっぽりと入るフード、手袋まで用意されていた。

 僕はそれらを丁寧に身につけ、周囲の視線を感じながら街を歩く。

 どこへ行ったって居場所などないのだから、従うしかない。

 僕は、震える手を握りしめ、そっと一歩踏み出した。

 

 魔族無能力者の天野 カナデは、”imperfective school”の校門をくぐった。

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