【筋肉で】能無しなら脳筋になるしかねェーだろッッッ!!! ~スキルが使えないのでひたすら筋トレしてたらいつの間にか最強になってました~ 【全て解決】
マッチョ神拳奥義『ダブルラリアット』炸裂! はい、ザ◯ギのパク……いいえ、オマージュです!
マッチョ神拳奥義『ダブルラリアット』炸裂! はい、ザ◯ギのパク……いいえ、オマージュです!
ア゛ッ! この骨、深い……! ボボボボボボッボホォゥ……!!!
口を開ければ小さな骨やら砕けた骨が口に流れ込んでくる。目を開ければそれらが刺さる。骨の濁流、骨の大洪水、クソッ骨に溺れる! 冷静に考えて骨に溺れるってなんだ? わけわからん! わけわからんので死にそうなのもっとわけわからん! このまま死ぬと人類初の死に方なんじゃなかろうか? そんな人類初嫌過ぎる!
いや、待て、落ち着け俺。溺れる原因の一番はパニックだってなんかで見たか聞いた。おそらく漫画かアニメかラノベだ。俺は大体その辺しか見ないからな。
まずは落ち着くために深呼吸……はできねぇ! 溺れてる最中にそれはムリムリムリのカタツムリ!
どうする俺!? どうするアイフル!? この状況から入れる保険はありますか!?
ダメだ、パニックのあまり思考が支離滅裂の四分五裂。ひたすらにめちゃくちゃになってる。今必要なのはアイフルも保険でもない、冷静な思考そのものだ。
落ち着け、落ち着くんだ。素数を数えて落ち着くんだ……素数は1と自分の数でしか割れない孤独な数字。俺に勇気を与えて……くれないと思うので却下。俺はプッチ神父じゃないし、只今絶賛溺死一直線中にやってる余裕もない。多分二桁の途中で死んじゃう。
ああ、ダメダメだ。まともな考えが浮かばない。俺はここで死ぬのか。せっかくマッチョになっても、骨で溺死するのが俺の運命だったか。
走馬灯が瞼の裏を駆け巡る。黒くてでかい犬に追いかけられたときのこと、親父がラドンをギャオスと言ったときのこと、ハゲ医者に<魔力無能症>と宣告されたときのこと、マッチョになったら両親が俺を認識しなくなったときのこと、メン・イン・ブラックに似た二人組に麻酔銃で撃たれたときのこと、一献寺香良にセクハラまがいのウザ絡みされたときのこと、師炉極に握手と見せかけた不意打ちを食らわされたときのこと……あれ? それで終わり!?
俺の人生のハイライトなんだからもっと良いシーン使ってくれよ! たった十五年とちょっとの人生でも楽しいこともたくさんあったよ? 勇魚と話したりとか勇魚と喋ったりとか勇魚と会話したりとか。
ツッコんだおかげか続きが浮かんできた。
葬式会場の映像だ。あら? こんなことあったかな?
そう思ってると、棺桶がアップになる。
中に永眠ってるのは死んだ俺だった。穴という穴に綿の代わりに骨が詰まってる。
特に目と鼻と口と耳からは
そこへ両親が誰かを連れてやってきた。おそらく参列者だ。知らないおっさんだがわざわざ俺の葬式に来てくれたのだからありがたい。感謝感謝。
「あのお顔を見ても?」
知らんおっさんが言う。
「「どうぞどうぞ」」
両親が棺桶の窓を開ける。
窓から出てきたのは骨がボーンな俺の死に顔。
「ブフゥッ!」
失礼にも思いっきり笑いやがるおっさん。
「ブホッ!」
「ブハッ!」
そんなおっさんを怒るでも注意するでもなく一緒になって笑う我が両親。
笑いに包まれる葬式会場。そしてハゲ坊主が言う、
「笑いに満ちた素晴らしい葬儀でございます。個人様もさぞお喜びかと……」
なわけねーだろ!
アカン! こんな死に方だけは絶対に嫌だ!
チクショー! 死んでたまるか! 絶対に生きてやる!
生き残りたい! 生き残りたい! まだ生きてたくなる!
うおおおおおおお! 相手が骨に物を言わすのなら、こっちは筋肉に物を言わせてやる!!
俺は全身に力をみなぎらせ、フルパワーで全身をよじった。
バキバキッボキボキッバリバリッベリベリッゴキゴキッグシャグシャッ!!!!
無数の骨がたった一回身をよじるだけで砕け、折れ、粉々の塵と化し、俺のマッスルボディを包んでいた骨は消し飛んだ。波が引くように俺の前にサッと空間が開けた。
あれ? これって……。
骨の波はさながら打ち寄せる波のごとく、再び襲いかかってきた。
だが、俺はもう慌てない。焦らない。パニクらない。
襲い来る骨の波にチョップをかます。
バキバキボキボキベキベキ!!!!
ただ手を払っただけで、モーセが海を割ったように骨の波が真っ二つに割れた。
やっぱりそうだ、これって、
ゲームでたとえるならチュートリアル的な? それくらい歯ごたえがない。要領がわかってしまえばただの作業でしかない。あとはどれだけ効率よく的確かつ簡潔に、骨共を処理するかという話でしかない。
あっ、ひょっとしたら師炉極が俺を崖から突き落とした目的は正しく
俺に自信をつけさせるためとか言ってたし、きっとそうだ。これがS級冒険者師炉極による超一流のレッスンだったのか。
しかし、どうせレッスンしてくれるならもっと丁寧にしてくれたらいいのに。いくらなんでも説明不足な気がするし、崖から突き落としていきなり戦えはスパルタ入ってるよね? 今どきそんな昭和スポ根なノリ流行らないよ。
今のトレンドはチートスキルでイージーに無双してモテモテのウハウハなんだからさぁ、その辺もっと考えてくれていいと思う。
でもまぁ、やり方はちょっとどうかとは思うけど、感謝してないわけじゃない。
俺が今ようやく自らの力に自信がもてるようになったのは、やり方はどうあれ師炉極のおかげである。
照れるし恥ずかしいから直接は言わないけど心のなかで言わせてもらう、ありがとう、勇魚のお父さん。アンタのおかげで俺は心から真のマッチョになれたよ。
性懲りもなくまた、骨の波が襲来する。
何度来ても同じことだが、こっちは何度も相手するつもりはない。
二回で学習しなかったお前らが悪い。この三度目が
俺は両腕を大きく横に広げ、グッと上体を捻り、そこから生まれる反動を活かし、凄まじい速度でコマのように回転した。
『ダブルラリアット』だ。ロシアのレッドサイクロンからインスピレーションを受けた……うん、正直に言えばパクりですね、はい。
某有名格闘ゲームからパクった技を骨の波にお見舞いしてやった。
半径百五十センチはこの手の届く距離。今から振り回しまくるので離れることなく覚悟しろよこの白骨死骸ども!
襲いかからんとする愚かな骨の波を、俺の丸太より太く逞しい両腕がいとも簡単に打ち砕く。
もはや今の俺は人間ミキサー。たかが骨ごとき相手にならない。
俺は骨どもを完全粉砕、バラバラのボロボロのグチャグチャにして辺り一面に粉微塵にして撒き散らしてやった。
骨は肥料になるから、周囲一帯が畑に適した土壌になっただろう。ま、それはどーでもいーんだけど。
ものの数十秒で骨どもを殲滅した。周囲には跡形もなくなった骨の残骸。
それらが消え失せると、今度は無数のアイテムボックスが現れる。
その中に佇む俺。傍から見ると多分かっこいい。
激闘の痕跡の中一人、威風堂々と立つ精悍なマッチョメンの姿。
いや、絶対かっこいいでしょこれ。
フッ……余裕だぜ……勇魚、俺のこの勇姿、とくと目に焼き付けてくれよな。
なんて思ってると、
「ウェッ……!?」
唐突な目眩と吐き気。頭がクラクラする。思わずぺたりと地面に座り込む。
あ、これ間違いない、酔っちゃったわ。
子供の頃回転椅子でぐるぐる回るのが楽しくて調子に乗って回りすぎると気持ち悪くなっちゃった、なんて経験はきっと誰でもあると思う。俺も何度かある。
で今、その昔懐かしいあの頃の酔いを思う存分味わうハメになった。うぇぇ……。いかに屈強な筋肉ガチムチマッチョといえども三半規管は並ですよ。そんなトレーニングは一切してないからね……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます