【筋肉で】能無しなら脳筋になるしかねェーだろッッッ!!! ~スキルが使えないのでひたすら筋トレしてたらいつの間にか最強になってました~ 【全て解決】
えっ、<ユニークスキル>持ちのマッチョってだけで何の実績もないのに危険なダンジョンに強制的に送り込まれるんですか!? 1
えっ、<ユニークスキル>持ちのマッチョってだけで何の実績もないのに危険なダンジョンに強制的に送り込まれるんですか!? 1
正直に言うと、一献寺香良から新スキルが本物であると聞かされたとき、俺は脳内で有名になった自分を想像した。
街を行くと誰もが俺の顔を指す。
ざわめきを増す街角。
サインを求める人の群れ。
「時間がないんで、ごめんね」
有名人の俺は気安くサインもできない。
うっかり一人にサインしちゃうと、街全体にサインしなきゃいけなくなる。
いくら俺が世界的有名なナイスマッチョガイでも、そんなことしてるとさすがに日が暮れちまう。
それに俺には彼女が待っているんだ。
彼女は世界的に有名なモデル。
世界的に有名な者同士のカップル。
やっぱり世界的に有名な俺は世界的に有名な女性とじゃないと釣り合わないし、世界的に有名な者同士だから気も合うんだ。
そう、彼女とのデートはいつも秘密裏に行われる。
でも、お互いに世界的に有名だからすぐバレちゃうんだ。
ハーバービューでも、大黒埠頭でも、シーガーディアンでも、どんなに変装をしていてもすぐにバレてしまう。
そのたびに僕らは互いに手を取り逃げなきゃならない。
だが、そうやって愛は困難があってより深まるものなのさ。
愛の逃避行……LOVE AFFAIR……。
ってとこまで楽しく想像してたのに、
許せねぇ、マジ許せねぇ。ガチでキレちゃったよ。
「
やれやれ、といった風に肩をすくめる一献寺香良。
「
師炉勇魚が吐き捨てるように言った。彼女にしては珍しく厳しい言い方だった。もしかして欧米嫌い? 戦時を経験したじいさんばあさんならわかるが、俺たちの世代でそういうのも珍しい。彼女自身、たしか欧州の血が流れてるはずだけど……ま、そんなことは俺が深く考えるようなことじゃないか。
「そ・こ・で! 君にやってもらいたいことがある」
「どうせ変なことやらせるんでしょ? 惚れてないので結構です」
「違う違う、違う、そうじゃない! ちゃんと真面目な話だ。君はひょっとして私のことを色情狂の変態か何かだと思っているのかね?」
そりゃもう心の底から思っていますとも。
でも、それは口に出さないでおく。マッチョの情けだ。
「……その顔、どうやら本当にそう思っているようだね?」
口には出さなかったけど顔には出てたらしい。以後気をつけよ。表情筋のトレーニングでもしよっかな。
「ふん、まぁいい。とにかく、君が
一献寺香良はスライドの画面を切り替えた。そこに地図と写真が映し出される。
「ここについ最近新たに発生したダンジョンがある」
それがどこの地図かはわからなかったが、写真には我が鶚が崎高校にある廃ダンジョンのそれより少し大きなモノリスが映っている。
「ちなみにこのダンジョン、今のところ『急成長期』だ」
ダンジョンは三つのステージに分類される。
一つ目は第一ステージである『発生期』。
発生期は世界にモノリスが形成されるが、まだダンジョンに入ることができない状態。発生期のダンジョンに対して人類ができることは唯一つ、さらにステージが進むのを見守ることのみだ。
次に第二ステージ、『急成長期』だ。
急成長期はダンジョンに入ることが可能となるが、
最後に第三ステージは『漸進期』。
漸進期になるとダンジョンの著しい変化が収まり、世界に対する侵蝕も緩やかになる。普通はこの第三ステージを確認してからダンジョンに侵入、攻略に移るのだが……。
「まさか急成長期のダンジョンに入れ、とか言うんじゃないでしょうね?」
「まさかまさか! そんなことは国家権力を傘に無理難題をふっかけ、横暴の限りを尽くしまくってきた私でもさすがにさせないよ」
ははは、と笑う一献寺香良。
そんなことばかりしてきたのか……うん、はっきり想像できる。うちの両親も人質にとってたしな。ホント最悪だなこの人。
「ただこのダンジョンはもう二、三日もすれば漸進期への移行が予測されている。第三ステージに移行次第、君にはダンジョンを攻略してもらうことになるのだけど――」
「私は反対です!」
一献寺香良の話を、勇魚が強く遮った。
「
勇魚は真っ直ぐに一献寺香良を見据えて言った。わずか十五歳でありながら大人相手に一歩も引かない威圧感満々の堂々たる姿に俺はシビれる憧れるゥ。
しかも俺の身を案じて言ってくれてるもんな。もうめちゃくちゃ嬉しいよね。ホント、ジーンとクる。もし俺がまだ陰キャ引きずってなかったら、俺はとっくに惚れてたな。こんな良い子、好きにならないほうがおかしいもん。
が、そんな凛々しい勇魚に一献寺香良は一歩も引かない。むしろふふっと小さく笑って、
「勇魚くん、実のところこれは私の発案じゃないんだよ。これを提案し強く推しているのは我が国最強の冒険者夫婦なんだ」
「えっ……」
凛々しかった勇魚の目が驚きに大きく見開かれた。
我が国最強の冒険者夫婦って、それ……。
「勇魚くん、我々『ダンジョン攻略研究調査室』も
一献寺香良の皮肉な微笑の前に、勇魚は唇を噛んで俯いてしまった。
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