第75話 たまには甘えることも
「――っ⁉」
私の思いがけない行動に驚くエドに「ダメ」と呟く私。どうやら本当に熱でどうかしているみたい。こんなことでもなければエドに甘えることなど無いだろうし、一人になるのが怖いなど思いもしない。
「一人はヤダ。一緒にいて」
「……ああもうっ! あとから怒るのナシだからな!」
「ありがと」
「うるせぇ。さっさと寝ろ」
エドが照れてる。布団の中から見るエドの顔は赤く、照れ隠しをするようにそっぽを向いています。
「ねぇ、エド?」
「なんだよ。寝るんじゃないのか」
「昔ね、王都にいた時もこんなことがあったの。私が風邪ひいちゃって、師匠がずっと看病してくれた」
たしか10歳の時だったと思います。すごい高熱を出してこのまま死ぬんじゃないかってくらい苦しくて。でも師匠がつきっきりで看病してくれて、私の為に蜂蜜入りの薬を作ってくれました。私が子供向けの薬に蜂蜜を入れるのはその時の経験があるから。あの時師匠が作ってくれた薬は甘くて薬草特有の苦みは全く感じず、苦いのが苦手な私でも楽に飲めました。
「――あの時飲んだ薬と比べたら、私が作るやつなんてまだまだだよ。だからもっと修行して師匠に追いついて、いつか追い越すのが目標なの」
「そっか。ならさっさと寝て早く治せ。おまえが元気ないのは俺も嫌だからな」
素っ気ないけど暖かくて優しい言葉に私は安心して眠りにつくことが出来ます。なんだかエドが傍にいるだけで安心するのはそれだけ信頼している証なのかな。
「ほら、早く寝ろ。今日はずっといてやるから安心しろ」
「うん。ありがと」
エドの言葉にどこか安心する私は目を瞑ります。昨日は熱と頭痛でしっかり寝れなかったし、いまも頭は痛いけどなぜか今日はいい夢が見れそうなそんな気がしました。
丸一日眠った私は翌日にはすっかり回復しました。
「良薬は口に苦しとはよく言うけど、さすが私だね」
自分で調薬した薬とはいえ、効きの良さに自画自賛する私ですが熱が引いたのは薬の効果だけとは思ってません。
「ありがとね」
ベッドにもたれ掛かるようにして寝ているエドはまだ起きそうにありません。結局、付きっ切りで看病してくれたんだね。いつもなら開店準備する時間だけど、今日は元々店休日だからもう少しだけ寝かせてあげようかな。
「とりあえず、なにか食べよ」
昨日は食欲もなく、水以外はほとんど摂取していなかったのでお腹が鳴りっぱなし。エドはそのまま寝かせておくことにしてキッチンに向かう私は二人分の朝食の準備を始めるのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます