第14話 薬用ポーション

 「いやぁ。ほんとに作ってくれるとは思わなかった」

 「喜んでもらえて良かったです」

 「それにしても、嬢ちゃんはほんとなんでも調薬できるんだな」

 「なんでもは出来ないですよ。調薬レシピがある薬だけです」

 オイスターモドキを獲りに行った数日後。出来上がったポーションにバートさんは感激し、あまりの嬉しさにお代以上のお金を払おうとした。もちろん丁重に受け取るのはお断りしたけど、それだけ喜んでくれたというのは薬師として嬉しい限りだね。

 「そういや、エドの坊主はどうしたんだ」

 「エドならアリサさんと一緒に薬草採りに行ってますよ」

 「そうか。あいつ、年上の方がタイプだったか」

 「さぁ、どうでしょうねー」

 アリサさんに付いていく本当の理由を知っている私は曖昧な返しをして頼まれていた薬の説明を再開します。

 「今回お出しするのは薬用品といって処方薬とは少し違うものになります」

 「なにが違うんだ」

 「処方薬より効果を薄めてありますがその分だけ扱いやすく、薬師の管理も不要なんです」

 「つまりウチの店に置けと?」

 「取り扱いを希望されるならご相談に応じますよ」

 「ハハッ。嬢ちゃんは上手いこと言うな。とりあえず話は使ってからだな。いくら嬢ちゃんの作ったやつでも効果がなけりゃ売り物にならねぇ」

 さすがは雑貨店の経営者。薬用品なら問題ないからとそれとなく販路の拡大を図ってみたけどすぐには乗ってくれません。まぁ、作れる量には限度があるから大々的に売ることも出来ないんだけどね。

 「とにかく助かった。またなにかあったら頼む」

 「はい。いつでもどうぞ」

 「それじゃぁな。エドの坊主とアリサの嬢ちゃんにもよろしく言っておいてくれ」

 「はい。それじゃお大事に」

 「ん?」

 「あ、つい癖で」

 病人やけが人相手が多いからつい言っちゃうんだよね。私は笑顔で照れ隠しをしつつバートさんを見送ります。やっぱり色黒で筋肉マッチョの後ろ姿は雑貨屋さんじゃないよね。


 ――その後、滋養強壮ポーションの噂は小さなエルダーの村を駆け巡り、バートさんのお店で薬用品として販売する運びとなりました。もちろん“普通”の滋養ポーションとしてだけど。

 ポーションの効果があったのかは分からないけど、しばらくしてモカちゃんに妹が出来たのはまた別のお話。喜ばしいことだけど、少なくとも私にはもうちょっと先の話かなって思いました。

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