麗
彼女を一文字で例えるなら、それは『麗』
一目で綺麗な人だと思った。
仲良くなりたい、友達でいいから、と。
探していた、けど見つからなかった。
一度聞いただけの名前は記憶から消えていた。
寂しいなと、思ってしまった。
しばらくあと、出会いは急だった。
困っているところに『手伝います!』と一言。
たった15分、とても短かった。
その日の帰り「次は僕が手伝うから」と。
『ありがとう』その一言が嬉しかった。
すぐあと、年に一度の祭りの日。
準備のため遅く残っているところを見かけた。
周りにはあまり人はいなかった。
ただ、ただ話してただけ。
その時間がなんとも嬉しかった。
気づいてしまった、彼女が好きだと。
僕はこの気持ちを抑えられなかった。
長い長い時間が過ぎた。
誰にも言わずただひたすらに耐えた。
もう、限界だったのかもしれない。
本番が近づいてきた。
終わってみれば手伝ったことは少なかった。
でも、一緒に何かをできたことが嬉しくて。
「これで終わりじゃないんだ」って。
そう言いかけた口は、ついに開かなかった。
神はいたずらが好きなようだ。
『昼から予定が空いた』と言われた。
ここを逃したら、もう、機会はない。
「明日会いに行ってもいいですか?」
最初で最後の、大勝負。
前日は思うようには眠れないものだ。
微睡の中、かろうじて手を繋いで歩いた。
醜態を晒す僕の横を、そっと歩いてくれた。
言わなくてはならない、言わなくては。
焦る心の横を風はただ吹いていく。
2人きり。
待っている。
焦点は合わない。
決めた・・・
「あなたのことが、前から好きでした」
幸せな日々は続く。
節目は足を潜めてやってくる。
地球一回り分の思いを込めて。
そしてつくづく思ってしまう。
綺麗な人だ、と。
刹那の香り 吾名無き @Warenanaki
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