御影~シャドウレジェンド~
erst-vodka
第1話 ~プロローグ~
この地に来てから3日がたった。
今日も古びた社の中で目覚め、食事、獲物を取る為に外に出る。
日食が続いている。いや、続いているというよりも
常にこの世界の太陽はそうなのだろう。
黒い太陽。そこから漏れる炎は青白い。
全くもって薄暗い世界だ。
至る所に5メートルほどの杭が打ち込まれており、その杭には
人間がはりつけにされている。無論、死んでいる。
すでに人間自体は骨と化しているが装備していたモノで人間と分かる。
何故か恐怖は感じない。それを見るたびに、俺は憤りを感じるだけだ。
拾った誰の者かもわからない、いや、この杭に
はりつけにされた者の刀だろう。結構な月が経っているのか
拾った刀ではまともな殺生は出来ないだろう。それを腰にぶら下げ
手には弓を持つ。矢は十分にある。なにせはりつけにされた人間に
刺さっているからだ。
誰かが、いや敵がはりつけにした後に的にして遊んだのだろう。
俺は弓を引く。カラスの様な鳥を狙う。
こう見えても俺はここに来る前はちょっとは名の知れた武将だった。
剣よりも弓の方が、いや一番得意だったのは槍だった。
いや?そうとも言い切れないな。やはり刀だろうか・・・。
三日もたてば思考に余裕が出てきているのも可笑しかった。
あぁ、親父殿はあの戦場から無事に撤退できただろうか。
まぁ大丈夫だろうっ!そして俺は矢を放つ。
今日は2匹仕留めた。火を熾して鳥を焼く。
はりつけにされた人間の懐をあさり、やっと見つけた火打石。
これを見つけるのに1日もかかった。実際は杭の根元に落ちていたのだが。
食事の後はこの辺りを探索する。使える防具や武器を集めるためだ。
今日は西の方を見て回ろう。
こちらの方にも杭が多く立っている。
俺は使えそうな武器を拾いつつ探索を行う。一時して
・・・これは本陣があった場所の様な所があった。お目当ての場所だ。
旗は破られ、踏みつぶされ、無残な状態だった。
勿論、生きている者などいない。やはりあった。使われていない脇差だ。
供の者の所持していた脇差だろう。
社に帰り、良さげな、使えそうな武器と防具を見繕う。
結構集めたものだ。昨日拾った刀よりも本陣で拾った脇差がよい。
俺は腰に打刀と脇差を差し込む。
いい加減、この場を離れよう。水も飲みたいし。
鳥やウサギの様な獣の血を飲んで何とかしてきたが我慢の限界だ。
防具はコレでいいか。下手に甲冑など身に着けたらまずいかもしれない。
胸当てを身に着けその上から羽織を着る。南蛮人が着そうな服もあったが
やはりこっちの方がしっくりとくる。
本陣跡で拾った旗を風呂敷代わりに使い、小道具を包む。
俺は3日間世話になった社に手を合わせる。
この地の地形、本陣の後。そこから考え、目指すは太陽が沈む方向。
見当外れなら・・・死ぬだけだ。まぁそれもいいな。
地獄に来てまで俺は死ぬのか、笑えるな。
そして俺は歩き出す。
歩いていると色々な事を考えてしまう。
3日前、俺は戦場にいた。・・・はずだ。
敗戦が濃厚となり、親父殿を逃がすために数名が殿を務め、
その中に俺が居た。何度も親父殿から一緒に来いと言われたが
あの場で殿を務められるのは俺しかいなかった。
結構、足止めをしたつもりだ。俺は矢を受け、斬られ。
首を取られなかったのは幸いだった。気絶していた俺は目覚め。
雑木林の中へ這いつくばりながら入っていった。
そこには小さな、本当に小さな社があった。
合戦の下見の時には気づかなかった。俺はその中に入る。
まぁこんな所に居たらすぐに敵に気づかれるだろう。
捕らえられ斬られるか、捕虜になるかは半々だな。まぁいいさ。
親父殿さえ逃げ落ちることが出来ればどっちでもよい。
あぁ、これはどっちでもないな。これは・・・死ぬ。
そして再び、意識が遠のいた。
気が付くと、この地にいた。体の傷も綺麗に治っていたが
身に着けていた防具や武器はなかった。
俺は社をでて驚愕した。至る所に杭が立ち並びそれに人が
括りつけられ、死んでいた。
余りにも恐ろしい風景だったために俺は社に戻り震えていた。
自身に慌てるな、恐れるな、今を見ろ。現状を確認するんだ。
そう言い聞かせ、再び社の外に出た。
武器を拾いながら周辺を見渡す。炎で焼き払われたように草木はほぼない。
良く社は燃やされなかったな、とも思ったりした。
そして何気に空を見上げると、そこには日食になっている太陽があった。
炎が・・・青白い。夜ではなかったのか。通りで暗くても辺りが見えたのか。
ここは、どこだ。こんな場所は知らない。明らかに空気が違う。
未開の地、蝦夷なのか?それともどこかの島なのか。
俺は・・・ここは・・・どうなっているんだ!
多分・・・世界が違う。
行き着いた考えはそれしかなかった。
はりつけにされた武士の防具は甲冑に似ているが似ているだけだ。
落ちている弓も形状が違う。刀は・・・形状は同じか。
カラスの様な鳥が居る。それを見ていると腹が減っている事に気づいた。
俺は落ちている矢を拾い、放つが当たらない。
その鳥は逃げると思っていたが・・・向かってきた!
恐ろしい速さで俺の眼球を狙いに来たのだ。俺は咄嗟に転げる様に
よけ、そこに偶然落ちていた刀でその鳥を斬った。
が、真っ二つとはならずに致命傷を与えただけで、バサバサと地べたで
もがいていた。俺は首を切り落とした。
やばい、ほかの鳥が見ている。俺は急ぎ、社に戻る。
このまま食ってもいいが、さすがに焼きたい。懐を探るが・・・ないか。
俺は再度、外に出てはりつけにされていた武士の懐を探る。
・・・ないか。と思ってふと足元を見てみるとあった!火打石だ!多分。
適当な燃えそうなものを集め社へと戻った。
俺は取った鳥の羽根をむしり、腹を割り内臓を取り出す。
ササミの部分は丁寧にとり、他の部分はそのまま焼いた。
それが一日目だった。
二日目は弓の練習がてらに様々なモノに矢を放つ。
ある程度、弓の感覚が分かったので鳥にめがけてはなって見ると
今度は胴体を綺麗に射抜いた。
空を見上げると・・・日食のままだ。昨日もそうだった。
日食のまま、沈んでいった。この地の太陽はそう言うものなのか。
なるほど。俺は理解した。
そうか、俺は死んだのだろう。ここは黄泉の世界であり・・・
それも、地獄なのだろう。そろそろ閻魔様がやって来るのか?
そう思うと何故か、俺は笑いが込み上げてきた。
いいじゃないか!ここが地獄と言うのであれば
この世界の隅々まで見てやろうじゃないか。
この!
★★★
「ほう、炎が見えたと?社とな、あの場所にそのような建物があったか?
まぁよい、適当に2~3人見繕って連れていけ。
もしも取り逃がした小娘のユメなら生きて連れてまいれ」
あの場所で生きている者が居いた?戦が終わって半年。
何処かの物取りなのか?関所を潜り抜けたのか?それはないな。
それにユメならば既にあの場所にはいないだろう。
そのような愚行をするくらいなら、既に我らに捕まっているはず。
炎という事は人で間違いないだろう。突然現れた?何故、どうやって。
面白い余興だな。
「よし、我も向かうぞ、支度だ。このスイレンが確かめてこよう」
シャドウキン第一部隊 副隊長 スイレン
紫がかった髪をかき上げながら微笑むその女性。
その仕草は妖艶ともとれるが切れ長の目にある瞳は赤く、そして鋭い。
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今までの小説と違い、ほぼコメディ無しの展開となります。
結構、グロい描写等もありますので苦手な方はスルーしてください。
更新は1週間に1回ほどとなりますが、もしどこかで見つけたら
流し読みでもしておくんなまし。
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