第8話 白石城へ
空想時代小説
9月23日。政宗らは白石城へ戻った。直江も佐竹も本領へ戻っている。どちらも家康へわび状をだしたということであった。政宗も今回の争乱のあらましを書状にしたため、小十郎を家康に遣わしていた。
夕刻、早馬に乗って小十郎が戻ってきた。早速、成実とともに結果を聞くことにした。
「小十郎、ご苦労であった。して首尾は?」
「はっ、可もあり不可もありでござる」
「可もあり不可もありとは、どういうことじゃ?」
「では、どちらを先に?」
政宗は興味深々の顔をしている成実の顔を見やりながら、
「やはり可から申せ」
成実も納得の顔をしていた。
「それでは、まず陸奥の国の切り取りの件、おおむね認めるということでござった」
「それは上々」
成実が嬉しさをこめて言った。
「おおむねとはどういうことじゃ?」
政宗は小十郎に尋ねた。
「それは切り取りの前に本拠となる城を建てよ。場所は千代(仙台)にせよ。とのことでござった」
「今の岩出山から移れと」
「そうでござる」
二人の渋い顔を見て、成実ははっと気づいたのか、
「ということは、切り取りの前に城造りでカネを使わせる気か。あの狸親父とバカ息子の考えそうなことじゃ」
「成実、それは言い過ぎだ。どこで、だれが聞いているかわからんぞ。それで不可の方は?」
「はっ、それが上杉は会津を召し上げられ、米沢に移封でござる」
「なに! 米沢にと・・・我らの父祖の地ではないか!」
成実は、ますます声を荒げて小十郎に詰め寄った。
「それだけでは済みませぬ。佐竹も常陸の国から羽後(秋田)へ移封でござる」
「なんだと! それでは出羽の切り取りはできんぞ!」
成実は、まさに怒髪天のいきおいだった。
「そうでござる。出羽を切り取りたければ、身内を斬れと」
「秀忠の約定は、有名無実だったか」
政宗も苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。
「それだけではござりませぬ」
「小十郎まだあるのか!」
成実は、怒り心頭だ。
「諸藩に江戸城の外堀造りが命じられ、当藩にも割り当てがきておりまする」
「なんと、城造りだけでなく、江戸城の外堀造りだと・・!」
さすがの成実も口をあんぐりさせていた。
「移封はせぬが、カネと労力をだせということか。いかにも狸親父の考えそうなことじゃな」
と政宗らは、ため息をつきながら思案したが、ここで逆らえば取り潰しにもなりかねない。現状では、従わざるを得ないのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます