メタルフロント

第1話 始まり

宇宙ステーション【クロス】には十七名の科学者が滞在しており研究をしている。

プロジェクトアサイラム、地球の汚染が始まり人類は宇宙にコロニーを建造して新たな居住地にしようと計画した。




警報音が【クロス】内に鳴り響いていた。

眠りについていた研究員達は目を覚まし緊急事のマニュアルに従って管制室に向かっていた。


「何かがステーションに取り憑いているぞ!!」


地上に通信を繋げて状況説明をしようとしていたが。

屋根が破壊されて研究員達は生身で宇宙に放り出された。




宇宙局内は騒然となっていた。

宇宙ステーションの何者かによって起こされた破壊。

そして何よりも局員を驚かせていたのは真っ赤な生物が鋭利な爪を使い屋根を破っていたことだった。

これにより地球外生命体がいることが確定してしまい、政府は対策に追われていた。


そんな中。


インドに隕石が墜落。

隕石の中から現れた無数の地球外生命体によって、インド軍の抵抗虚しく。インドは占領されてしまう。

国々は協力して戦闘機や戦車を導入して地球外生命体の全滅を開始した。

しかし圧倒的な力により人類は劣勢になりインドを破棄することに決定、巨大な壁を数時間で全土に建設して出られないようにしたのだった。


政府達は地球外生命体を【セレス】と名づけ

セレスに対抗するべく科学者を集めて政府機関、【七人委員会】を設立【セレス】に対抗する人型兵器を開発した。

人型兵器【バトルフェルム】。

厚い装甲に覆われた機体は人類の叡知の結晶とも言えた。




「ここは?」


男は【バトルフェルム】のコックピットにいた。

       

確かあの時...


思い出そうとすると頭痛がして頭を抑える。


「ぐっ!」


(確かあの時、セレスに...)


初の日本製の【バトルフェルム】薩摩に乗って戦場に駆り出された男は【セレス】の鋭利な爪に。

薩摩の胸部を貫かれて。その衝撃で気を失っていた事を思い出し操縦席から立ち上がり。破られた胸部から外に出る。

真横には同じ機体が大破していた。


「おい!大丈夫か!?」


コックピットに向かい少し穴が空いている胸部をこじ開けると。

血だらけの女性パイロットが椅子に座っていた。


「しっかりしろ!」


胸に耳を当てる鼓動は聞こえない。

薄い材質できたパイロットスーツに血が滲んでいた。


「生存者を発見したぞ!!」


軍人達が走って向かってくる。


「貴方は多田野さん!お怪我はありませんか!?」


「あ、あぁ。しかしこのパイロットを...」


軍人はコックピット内部を見ると。


「酷い姿だ...遺体処理班が来ます貴方はあちらの装甲車に乗ってください」


装甲車に乗ると。

運転手が言う。


「機体があの状態なのに生きていたなんて奇跡ですね」


「あぁしかし...もう一人は...」


「亡くなられたのですね...」



三ヶ月後。

日本製の【バトルフェルム】を立案している女、長澤亜里香の下へ来ていた。



基地に着くと軍服に着替えて。

エレベーターに乗り地下へと向かう。

廊下を進み目的の部屋に着く。

扉を叩く。


「入りなさい」


扉が開かれ中に入る。


「あら、多田野じゃない...どうかしたの?」


「無理な話だとは思うが新しいバトルフェルムを開発してくれ」


「無理ね」


「どうしてだ!装甲を頑丈にして強力な武器を!!」


「開発資金のことを考えた?しかも装甲を厚くしたところですぐに貫かれて大破よ」


「しかし!」


「わたしの処女作に文句をつけるつもり?量産に特化した作り。素早い機動性。文句のつけどころがないじゃない」


「もう少し頑丈にできないのか?」


「頑丈にしたら機動性が遅くなるし無理ね貴方の仲間が死んで悲しい気持ちはわかるわ...でもね仲間の死を乗り越えないと...後。新しい子が来るわよ」


書類を渡されて目を通す。

新しく多田野の部隊に配属されたパイロットだ。


「浪川香澄...北条絵里...西園寺優香...全員女か?」


「えぇそうよ...みんな訓練生から正規兵になって間もないから可愛がってあげて.....でもわたしも可愛がってほしいな」


「君から誘うなんて何年振りかな...」


「五年振りじゃない?わたし暇がなかったけど貴方のことをいつも考えていたのよ」


「俺もだよ」


キスをしようと迫るが直後に扉が開かれる。


「浪川!着任しました!」


すぐに離れて仕事をしている風に振る舞う。


「ご挨拶ご苦労様、戻っていいわよ」


「はい!」


扉が閉められる。


「じゃあ俺は部下達に挨拶してくる」


雰囲気を壊されて萎えた多田野は部屋を後にした。




「まずは訓練お疲れさま...えーと、訓練の方が楽だろうね.....みんな多分...死ぬ覚悟でここに来たと思うだから...頑張ろう」


少ない拍手が起こる。


「と言っても、まずは互いを分かろう名前はみんな知ってな...じゃあ特技や好きな食べ物なんかを...浪川!」


「わたしの特技は射的で好きな食べ物は...ゼリー」


「じゃあ北条、君は?」


「特技はなし好きな食べ物はない」


「あ、あぁ、次は西園寺きみは?」


「特技はオセロで好きな食べ物はリンゴ」


「よしじゃあ」


その時、警報が室内に鳴り響く。


「「「「!!」」」」


「作戦室に急ぐぞ」





「多田野隊、全員集合しました!」


他の隊も集まっており皆、姿勢良く立っていた。


「先程、青ヶ島にあるセレスの基地から中隊規模のセレスが外に出たことが観測されました今は海に入り東京跡を通過した後、ここ。福島基地に到達すると予想されています。海中に埋めた地雷が足止めしてくれるはずですが、直ちに出撃し本土上陸前に倒してください」


全員が敬礼をする。

更衣室に兵士達が駆け込む。





女性用更衣室で浪川達女性陣は青色のパイロットスーツをロッカーから取り出す。下着を脱ぎ、全身をぴっちりと包み込むパイロットスーツに着替え始めた。


「っ!」


浪川には悩みがあるそれは。胸の部分を覆う時に膨らんだ胸が邪魔だからだ。

それは浪川だけではなく北条達も同じのようだ。

パイロットスーツの右手首のスイッチを押して馴染ませる。

こんなにぴちぴちなのに防寒や防火、防弾などの効果があるか怪しいものだ。と浪川は思う。


「きつい...」


「わかるわそれ」


「そんなことより早く行きましょう」


多田野と合流して薩摩コックピットに乗り込む。

デバイスを起動させる。

エンジン部分が温まっていく。

モニターには外の景色が表示される。


「みんな、わかっていると思うが実戦だからな油断はするなよ」


『わかってます』


『わかってるわ』


『はい』


と返事が返って来る。




海岸の近くに何十機もの薩摩が着陸する。

海上の方では爆発して水しぶきが上がっている。


『来ます』


オペレーターの声がコックピットに響く。


海中から姿を現したセレスにバトルフェルム用のアサルトライフルで攻撃する。

セレスは破裂して血を撒き散らす。

次々と上がってくるセレス達は回避行動をするが四方八方からの射撃にはなす術なく倒される。

後方から砲弾が飛んできて着水して直後に赤色の水しぶきが上がる。

多田野は弾がなくなり刀を模した近接戦の武器を持ち迫り来るセレス達を斬り裂いた。


『レーダーに反応なし殲滅完了、帰還してください』


戦場にいるパイロットは生きている喜びを噛み締め歓声を上げる。






「それで計画は進んでるの?」


亜里香は日本の各支部の代表者とリモート会議をしていた。


『順調です後2日後には実践配備をして青ヶ島を奪還作戦ができます』


「折角志願してくれたんだもの。あの子...早瀬のパイロットに」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る