第3話 アルペジオ①

「タタタ、タタタン・・・」


※※※※※※※※※※※※※※※


アルペジオ。


ギターや。

ピアノを弾いている方なら。


お馴染みの手法です。


ストローク奏法と違う。

和音を一音一音、分散する。


あっ・・・。


ゴメンナサイ。

私は全くの素人なので。


ギターは弾くけれど。

本当に独学で。


音楽理論等は知りません。


だけど。

今宵は。


何故か。

綴りたくなったのです。


一字、一字を。

丁寧に。


誰かの心に。

響けば、良いですね。


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第1話 寂しいですか?


「ふぅ・・・」

疲れて帰った夜。


アパートのドアに差し込むキーが。


上下が違って。

二度目でやっと、開きました。


真っ暗な室内。

外廊下の灯りで、ボンヤリと浮かんでいます。


今日は疲れた。


部長のいつものクドイ指示は、相変わらずで。

明日に残すのは嫌だから、結局、頑張っちゃった。


頑張らなくても、良いんだよ。


この頃。

よく聞く、フレーズです。


フッ・・・。


笑うしかないよね。

そんなの、できる筈無いじゃない。


頑張らなきゃ。

怒られるんだよ。


寒い。

五月も終わりだというのに。


寒いよ。


≪フフッ・・相変わらずだね・・・≫


えっ・・・?

どこかから、声が聞こえた。


空耳かな?


ふと。

顔を上げると。


君が。

微笑んでいました。


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第2話 薄闇の中


「・・・君?」

私の問いに君は微笑んだまま、闇に消えていった。


「な~んだ・・・」

私の呟きは小さいまま、何でも無かったかのようにフェイドアウト。


「ハァッー・・・」

タメ息と共にバッグを床に置いて。


私はドスンと。

ソファー兼用のベッドに腰を下ろした。


窓に映る自分の顔。

深夜の交差点に走るヘッドライト。


何もかも。

日常のまま。


当たり前のこと。

魔法も何もない、現実の世界。


そう。

そう、なのです。


私の大好きだった。

彼が目の前にいるなんて。


あり得ないことなのだから。


その時。

あのメロディーが頭の中で鳴った。


君が弾いた。

アルペジオ。


私が大好きだった曲なのでした。


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第3話 エピローグは余計だったかな?


「・・・うっ?」

窓から差す朝の光に私は目を覚ました。


ベッドの上で。

服を着たまま眠ったらしい。


指にくすぐったい感触が残っている。


私は広げた手をかざして。

見つめていた。


タタタ、タタタン・・・。


今もハッキリと感じる。

君と一緒に叩いた鍵盤の固さ。


あっ・・・。


涙が。

頬を伝っている。


それが。

久しぶりに思い出せてくれた。


一番、幸せだった。

君との思い出の余韻だと。


アルペジオのメロディーと共に。


私を。

優しく包んでくれたのでした

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