第3話 アルペジオ①
「タタタ、タタタン・・・」
※※※※※※※※※※※※※※※
アルペジオ。
ギターや。
ピアノを弾いている方なら。
お馴染みの手法です。
ストローク奏法と違う。
和音を一音一音、分散する。
あっ・・・。
ゴメンナサイ。
私は全くの素人なので。
ギターは弾くけれど。
本当に独学で。
音楽理論等は知りません。
だけど。
今宵は。
何故か。
綴りたくなったのです。
一字、一字を。
丁寧に。
誰かの心に。
響けば、良いですね。
※※※※※※※※※※※※※※※
第1話 寂しいですか?
「ふぅ・・・」
疲れて帰った夜。
アパートのドアに差し込むキーが。
上下が違って。
二度目でやっと、開きました。
真っ暗な室内。
外廊下の灯りで、ボンヤリと浮かんでいます。
今日は疲れた。
部長のいつものクドイ指示は、相変わらずで。
明日に残すのは嫌だから、結局、頑張っちゃった。
頑張らなくても、良いんだよ。
この頃。
よく聞く、フレーズです。
フッ・・・。
笑うしかないよね。
そんなの、できる筈無いじゃない。
頑張らなきゃ。
怒られるんだよ。
寒い。
五月も終わりだというのに。
寒いよ。
≪フフッ・・相変わらずだね・・・≫
えっ・・・?
どこかから、声が聞こえた。
空耳かな?
ふと。
顔を上げると。
君が。
微笑んでいました。
※※※※※※※※※※※※※※※
第2話 薄闇の中
「・・・君?」
私の問いに君は微笑んだまま、闇に消えていった。
「な~んだ・・・」
私の呟きは小さいまま、何でも無かったかのようにフェイドアウト。
「ハァッー・・・」
タメ息と共にバッグを床に置いて。
私はドスンと。
ソファー兼用のベッドに腰を下ろした。
窓に映る自分の顔。
深夜の交差点に走るヘッドライト。
何もかも。
日常のまま。
当たり前のこと。
魔法も何もない、現実の世界。
そう。
そう、なのです。
私の大好きだった。
彼が目の前にいるなんて。
あり得ないことなのだから。
その時。
あのメロディーが頭の中で鳴った。
君が弾いた。
アルペジオ。
私が大好きだった曲なのでした。
※※※※※※※※※※※※※※※
第3話 エピローグは余計だったかな?
「・・・うっ?」
窓から差す朝の光に私は目を覚ました。
ベッドの上で。
服を着たまま眠ったらしい。
指にくすぐったい感触が残っている。
私は広げた手をかざして。
見つめていた。
タタタ、タタタン・・・。
今もハッキリと感じる。
君と一緒に叩いた鍵盤の固さ。
あっ・・・。
涙が。
頬を伝っている。
それが。
久しぶりに思い出せてくれた。
一番、幸せだった。
君との思い出の余韻だと。
アルペジオのメロディーと共に。
私を。
優しく包んでくれたのでした
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます