最強のチビ虎

九文里

第1話 最恐の羆VS最強の虎

 中国とロシアの国境付近の村で、飼い牛が33頭殺される事件が起こった。その村は山あいにあり、周囲は森に囲まれていた。犯人は、森からやって来たひぐまだった。

 体長は約3m、その立ち姿は大人の男の2倍は有る。

 その力は、大きな牛の首を一撃で折ってしまうほど。

 森で最恐の獣であった。

 そして、近隣の村々と役所は、討伐隊を組織してひぐま退治に乗り出した。

 かのひぐまは、森の中を我が物顔でし歩いていた。 

 他の動物達は、ひぐまを察知すると素早く身を隠した。

 ひぐまは、なかなか獲物を捕まえられず、イライラしていた。

 前を見ると、大きな岩が行く手を遮っていた。その岩の後ろから地面の落ち枝を踏み歩く音がした。ひぐまは、しめたと思い襲いかかろうと岩を回り込んだ。しかし、その瞬間動きを止めた。目の前には、大きな虎がいた。

 その虎は、3mを超える体長を持つ巨大なアムール虎だった。また、森の中ではどんな野獣も避けて通る、最強の生き物だった。

 ひぐまは、眼前の虎があまりに巨大なので怯んだ。そして、本能でヤバい相手だと理解した。しかし、逃げるには時機を逸していた。

 その虎は、いきなり目の前に出現した巨大な獣に対し、既に身を低くして声を唸らせ、臨戦態勢に入っていた。

 ひぐまは、やらなければ殺られると意を決して立ち上がり、両腕を大きく振り上げて、天に向かって吠えた。

 その声は、辺りに響き渡った。

 虎も、大きく息を吸い込むと、ひぐまを睨み一気に吠えた。

 その声は、大気を震わせ、森中もりぢゅうに響き、遥か上空の樹冠の鳥達を一斉に飛び立たせた。

 ひぐまは、その声に体が痺れて一瞬、動けなかった。

 その機に虎は、ひぐまに飛び掛かった。

 ひぐまは何とか身をよじって背を向けて逃げ出した。

 しかし、既に遅かった。虎はひぐまの上に覆い被さると、口を大きく開けその喉に噛みついた。そして、一瞬にしてその喉を噛み千切った。

 ひぐまは、絶命した。最恐対最強は、最強の虎の勝利に終わった。

 一方、ひぐま討伐隊が捜索を開始してから二週間が経っていた。とっくにひぐまは虎に殺されていたのだが、まだその事は知らなかった。

 討伐隊の一人が、少し離れた所に木々の間を歩く巨大な動物を見つけた。遂にひぐまを見つけたと、皆、色めき立った。

 しかし、それは、あの巨大な虎だった。虎は、人間の気配に気がついて、逃げようとした。

 討伐隊の一人は、逃げられるわけにわいかないと、あわてて発砲した。そして、そのたまが虎の後ろ足に命中した。

 虎の動きが鈍くなった。そこに討伐隊が一斉に発砲した。虎は、全身を撃たれた。そして、一発の銃弾が頭を撃ち抜いた。

 そのまま虎は、意識が遠退いて行った。

 討伐隊は、その横たわった体を見て、虎だったのかと悔やんだ。また、その大きさに驚愕した。

 その後、討伐隊は虎に倒されたひぐまの死体を見つけた。喉が食い千切られてるのを見て、何者がやったのだろうと不思議がったが、すぐにあの虎にしか出来ないと納得した。

 

 

 

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