百合の気配 秋
坂餅
教室
私がこの場から逃げ出したら誰か追いかけてくれるだろうか。そんなことを考えて気を紛らわす。
今は文化祭の出し物を決めている時間だ。メイド喫茶にお化け屋敷、それに的屋とか、まあそうなるだろうっていう出し物の案が黒板に書きだされている。
どれでもいいや、そんなことより私は寝たい。どうせ私がなんと言おうとやることが変わるわけでもない。そういうのはクラスの中心になっている人気者の子が言うことだ。
とりあえず教室から出ていこう。それで保健室行って適当に理由つけて寝かせてもらおう。
「ごめん、ちょっと気分が悪いから保健室行ってきてもいい?」
「あ、うん。大丈夫? えっと付き添いは――」
「ああ、大丈夫だよ。一人で大丈夫」
眠たくて足元がおぼつかないから、体調が良くないように見えてるみたい。良かった、怪しまれなくて済んだ。
「え、でも……先生」
前に立っている文化祭委員の子が、横で見ている先生にどうするべきかと困った顔を向ける。
「保健室までついて行ってあげて」
ああ、しまった。足元がおぼつかないのが裏目に出たかも。まあいいや、ついてこられる前に保健室に避難しよう。
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