第10話 国王からの依頼?
「――ところでこの花は誰でも育てられる物なのかしら? それとも買うしか方法がないのかしら?」
「ああ。いやぁ、実は意外と栽培方法が難しくてですね。さっきも言った通り土との相性もありますから」
そればかりはさすがにどうしようもない。
「そうね。そうなると、購入するしかないのね」
「ええ。ですが、今の一時的な流行りとは言え、需要はあるので一稼ぎしたい商人はどうにかして入荷したいらしいですけど」
「そうなの」
「はい、やっぱり輸入品より国内産の方がいいという人は多いですから。特に貴族の方は……」
それは確かに一定数いるのも理解出来る。しかも、それが貴族というのも……。なるほど、コレが需要と供給の関係か……。
「もし土の相性の問題を解決出来るて自分たちの領で作れるのであれば、領民の雇用にもつながるし今の流れだと作れば作るほど売れる……と。なるほどね」
「そうですね。あ、そういえば……」
「?」
「旦那様も似たような事をおっしゃっていました。確か『ここ最近流行っている花などはないか』と」
「……そうなの」
庭師からそう言われ、私は「やっぱり」という気持ちになった。
しかも、それを聞いたのが植物に詳しいシュヴァイツ様だ。何も知らない噂好きな人が聞いたのとではワケが違う。
そして今日はいつもしない「新聞を置いて行く」という事をしている。
そんな単純な事を忘れてしまうほど集中して何かを考えていたとして、その内容が気になるところだけど……今の話を聞いて何となく合点がいった。
「アリシア様?」
「ああ、ごめんなさい。少し考え事をしていたわ」
「そうですか」
「お仕事中にごめんなさい」
申し訳なく言うと、庭師は「いえいえ。それでは……」と手袋をはめて早速仕事へと取り掛かった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……」
庭師と別れ、先ほどの内容を自分の中で整理していると――。
「どうされましたか?」
心配そうな顔でルカが話しかけてきた。しまった。ちょっと考え込み過ぎたみたい。
「ルカ。ライオネル様が庭師に私と似た様な質問をしたという事は……きっと彼も私と似た様な話を庭師から聞いたはずよね?」
「そう……ですね」
さすがに一言一句全て一緒とは言わないけれど、大体の内容は一緒なはずだ。
「という事は……こう考えられるないかしら?」
廊下を歩きながら話している途中。私は突然ピタッとその場に立ち止まった。
「?」
そんな私に対し、ルカは不思議そうにこちらを見る。
「ひょっとしたらライオネル様は、国王から直々にこの一件について調べる様に通達が来たのかも……知れないわね」
「!」
ルカは私の言葉に驚きが隠せない様子で、その場で大きく目を見開いていたけれど、私は心のどこかで謎の確信があった。
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