第13話 お姫様になりたい
すると再びピノのお腹が鳴る。
「うー
ピノお腹すいてないよー」
ピノは涙目で壱たちに訴えた。
「お腹すいてもいいんだよ?」
壱がそういうとピノの目から涙があふれる。
「ピノ、お腹すいてないもん!
だから、だから、痛いことしないで!」
ピノが、そう言って小刻みに震える。
「壱さん。
ピノちゃんの前の利用者のこと調べたほうがいいっすよ?」
小さな声で梨麻が、壱の耳元でそう言った。
「え?」
すると美知子も小さな声でいう。
「私、調べます。
このピノさんの動揺……
きっと相当ひどい扱いを受けていたはずです」
壱は、ボロボロと涙を流すピノを見て思った。
「ピノ、大丈夫だよ。
僕は絶対に君に痛いことはしないから……」
その思いは言葉となり優しさとなりそして温もりになった。
壱は優しくピノの頭を撫でた。
そして、さらに優しくピノの体を包み込んだ。
「ホント?ピノのこと捨てたりしない?」
「しないよ」
するとその様子を見ていた壱拾が、小さな声で言った。
「自分の方でも調べます。
前の利用者は、マーメイド規制法の対象になる可能性がありますので……」
壱は、小さく頷いた。
「お願いします」
「はい。
今日は、ありがとうございました」
壱拾は、そう言って頭を下げた。
「はい。
お役になれたのなら幸いです」
壱がそういうと小さく笑った。
ピノは、壱の胸の中で小さく泣いている。
壱は、ピノの頭をポンポンと撫でると優しく言った。
「そうだ、ピノ。
何か食べたいモノある?」
「ピノ、ハンバーガー食べたい」
「ハンバーガーっすか?」
梨麻が、少し驚いた口調でそう言った。
「うん。
ピノ食べてみたいの」
「ハンバーグとかオムライスとかステーキとかでもいいんだよ?」
壱がそう言うとピノは首を横に振る。
「ピノ、ハンバーガーがいい。
マクベスバーガーのハンバーガー」
「マクベスでいいの?」
「うん。
そこで、お子様バーガーを頼んでお姫さま変身セットを貰うの」
「そっか」
壱は、優しく微笑んだ。
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