Scene2 繋ぐ手

第10話 ジャージとゴスロリ

壱は、ジャージを着たピノと共に駅に向かった。

するとメガネのショートカットの女性が壱の方を見ていた。


「あ、美知子さん。

 おはようございます」


壱は、その女性に挨拶をした。

するとその女性は小さく言葉を放つ。


「……35分」


「え?」


壱は、その言葉に首を傾げる。


「35分早いですね。

 デートは、30分前に行動ですよ」


「あ……えっと」


壱は、戸惑う。


「そう戸惑わないでください。

 お兄ちゃんと呼びますよ?」


「えー。

 それは、困るなー」


壱が、苦笑いを浮かべながら小さく笑う。


「壱、この人だれ?」


ピノが、少し警戒しながらそう言った。


「あ、この人は――」


「海道 美知子です」


美知子が、そう言ってメガネの縁に手を当てる。


「美知子……さん?」


「そう美知子さんです。

 貴方がピノさんですね?」


美知子の問にピノは元気よく答える。


「うん!

 ピノがピノだよ!」


「元気がいいですね。

 ピノさんにはなまるをあげましょう!」


美知子は、そう言って笑うと指先でマルを描いた。


「わーい。

 はなまるだー」


ピノは、無邪気に笑う。


「でも、壱さんにはバツです!」


「え?どうして?」


壱が首を傾げると美知子は、ため息をつく。


「わかりませんか?

 こんな可愛い女の子にジャージで歩かせるなんて!

 ダメですよ!レッツドレスアップです!」


美知子は、そう言ってピノの手を引っ張った。


「どれすあっぷ?」


ピノが戸惑いながらそのまま美知子に引っ張られた。

壱は、そのふたりのあとを静かについて歩いた。

そして着いた場所は、ゴスロリショップ。


「ここは……?」


壱が入りにくそうな表情を浮かべる。


「ゴスロリショップです。

 この店は、アリスをモチーフとしたゴシック・ロリータショップなのでピノさんが着ると……

 あらまぁ不思議!本物のゴスロリになれます!」


「えっと……?」


「ゴシック・ロリータよ!

 永遠なれー!」


美知子が、そういうとピノも真似して言った。


「なれー」


そして、ふたりはそのままお店の中へと消えた。

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