第5話 勉強
俺の成績は今まで微妙だった。
だが、春からこのじめじめとした季節が終わりを告げるこの時まで、俺は隠れて猛勉強してきた。
なんというか、江島より頭がよくなりたいというのもあったし、自分の中で誇れるものが欲しかったからだ。
その甲斐あって科目ごとに課される小テストの成績はかなり良かった。
夏休み前の中間テストと全国共通テスト。
その二つのテストを攻略すべく俺は頻繁に学校の図書室へと通っていた。
幸い、俺の通っている高校はどちらかと言えば進学校の部類であり、図書室の本は豊富にあったし、近くに本屋があったから自転車で参考書を買うこともできた。
家族も俺が熱心に勉強しているのを嬉しく思っているらしい。
「江島…………いや京子」
「ん~?」
「進路とかどうする?」
「私は専門学校に通うことを考えてる」
「専門学校?」
「まぁあんまり学費がかかるところへは行けないんだけどさ、看護か調理学校に行こうか悩んでいるんだ」
「ふーん」
「前に私がバスケで突き指した時に優しくしてくれたマネージャーと先輩とかのことを考えて、誰かを救うお手伝いができる仕事ができればいいのかなぁって漠然と考えていてさ」
「ほう」
「もちろん、医者になるほどあたしは頭がよくないからせめて看護ができればいいかなぁって」
「でも厳しいだろ、いろいろと」
「まぁね調理の進路も真剣に悩んでいるんだ。頭とか考えなくてただちょっと器用でセンスがあればいいから……私食べることが好きだし、それ以上に料理も好きだからさ。今のあたしの考えはそんなところ。そうだ、今度お前と一緒に料理してもいいかな?」
「それは……もちろん」
「やった」
そうか、こいつも先のことをしっかりと考えているんだな。
「琢磨は?進路どうするの?」
「進学かな……できるだけ有名な大学をでて不動産か銀行に就職するよ」
「お前はクソ真面目だからな、きっと似合うとおもうぜ」
「おう」
放課後俺たちはなんだかゆっくりと歩いていた。
そうか、その進路を選ぶってことは俺と江島は離れ離れになるのか。
なんか嫌だな。
でも俺はあいつのやりたいことに点で興味がないしな。
「あ、そうだ琢磨」
「ん?」
「明日あたしの勉強を見てくれよ」
「いいぜ」
じゃあまた明日と消える江島は夕日のなかに静かに消えていった。
※ ※ ※
そして放課後俺は図書室で江島と一緒に勉強をする。
言い忘れていたが、江島はもう夏服に着替えている。
夏服から透けてあいつの白いブラのひもが見えている。
うーん、とってもセンシティブ。
それはそうと、俺は参考書を机に開き、苦手科目の英語から勉強をスタートさせる。
「わからないことあったら聞くから」
そういって江島は数学の参考書を開いた。
数学は俺の得意科目だ。
なんというか、暗記科目に近いし、できた瞬間の爽快感がたまらないから結構好きだった。
珍しく江島は黙々と勉強している。
こいつは昔っから文武両道だったなそういえば。
「ここなんだけど」
「それはこの問題の応用でこの解法と解法を組み合わせて解くんだ」
「わかった、ありがと」
そういってまた黙々と勉強を始める江島。
俺が背伸びをして深呼吸をすると、図書室に入ってくる人がいた。
月島だった。
何か資料を探しているのだろうか。
あったみたいだがとれそうにないな。
俺は月島が取れない位置にある本を手に取る。
「ほらよ」
「あ、ありがと」
俺はどういたしましての軽いジェスチャーをやって自分の席に戻る。
「そろそろ帰るか」
「そうだね」
江島は終始ほとんど無言で勉強をしていた。
感心感心。
時折ちらつくボリューミーな江島の胸が視界に入るが、それはそれで目の保養だった。
部活動も頑張ってこれたし、なんか今年はやれそうな気がする。
…………放課後俺と江島にむけて誰か視線を送っていたのが気のせいだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。