第2話 俺のタイプは年上。

 俺はその女性を見た時、時が止まった。


 なんかこう湧き上がるものがあったのだ。


 いや別に股間が盛り上がったわけじゃないぞと俺はつっこんでおく。


 三つ編みのちょっと茶色の髪。

 

 ふわふわとした雰囲気。


 眉毛はしゅっとしていて、左目の目元にほくろがある。


 私服に簡単なエプロンをつけているだけだが、俺は直感する。


 「江島よりデカい!」


 「どこみてんだよ、コラ!」


 俺は京子に拳骨で殴られる。


 だが京子と違い、お尻のほうも……。


 いかんいかん、女性をそういう目で見てはいけない。


 …………ふぅ俺は冷静さを取り戻し、焼きそばパンとクリームパンを買う。


 「250円です」


 とても綺麗な声だった。


 愛想笑いなのも分かっているが、なんかこう……なんかこういいな!


 「むぅ」

 

 と江島は憮然としながらもパンを買う。


 俺達はパン屋をでて、しばらく俺のほうはボーッとする。


 江島は溜息を吐く。


 「お前ってなんかこう……バカだよな」


 「なんだよ急に」


 俺は突然罵倒されたことに怒りを覚え、江島の方を見る。


 江島はアンパンをもぐモグしながら両手を頭の後ろで組んでその後伸びをする。


 「行儀悪いぞ」


 「鼻の下伸ばしている奴に言われたきゃねぇよ」


 「…………本当か?」


 「何マジな顔で首傾げてんだよ、蹴るぞ」


 「なにゆえ!?」

 

 「まぁそんなことはいいよ、お前も男だし、恋が多いのは仕方がない」


 「お……おう?」


 突然悟ったようなことをいうこいつに俺は反応に困っていた。


 「だが!」


 江島は俺の顔の前に指をビシッと突き立てるとこういった。


 「好きになったからといって相手も好きになったとは限らない。精々痛い奴にならないことを注意することだ」


 「わかっているよ……はぁ」


 俺は溜息を吐く。


 「おっいつもの調子に戻ったな」


 「どうせいつも俺はこんな奴だよ」


 「どうしたどうした、そんなに落ち込んで?」


 「うぜぇ」

 

 俺はそそくさと早歩きするがこいつもついてくる。


 「疲れたのか、おっぱい揉むか?」


 「揉まねぇよ!ってかそんなセリフいつの間に覚えたんだよ!」


 「によによ動画」


 「マジかよ」


 「まぁお前がおっぱい信者じゃないことは理解しているよ」


 「おっぱい信者ってお前」


 「なんだよ、男なんてみーんな女にはおっぱいを求めるんだろ?」


 「偏見じゃねぇか?」


 「だって俺を見ている奴らはいつも」


 「何をぶつぶついってやがる」


 「うるせぇどうせ俺はおっぱいがでかいだけの男女だよ!」


 「誰もそこまで言ってないだろ」


 「ふんだ」


 そうして俺は江島と黙って歩く。


 …………こいつ黙ってりゃ美人なのになぁ。


 「邪魔するぜ」


 「勝手にしろ」


 そうしてこいつは俺の家でホイコーローを腹いっぱい食べた後、なぜか宿題を一緒にやる羽目になった。


 「お前、自分の家でやれよ」


 「やだよ……お前といたいもん」


 「なんて?」


 「う……うるさい!」


 「へいへい」


 俺は喜怒哀楽の激しいこいつにいろいろと振り回されている。


 これで失恋の傷も少しは癒えてほしいものだ。


 まる。


 


 

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