一度俺を振った彼女が俺と幼馴染の関係に嫉妬して面倒なので俺は年上彼女と恋をする。

ビートルズキン

第1話 告白したがダメだった。

 「俺と付き合ってください」

 

 俺は彼女を木陰に呼び出し、全力でお辞儀をし、手を伸ばす。


 俺の手を取ってほしいと。


 付き合いたいと。

 

 本気で好きになったはずだった。


 一方的な思いなのも分かっている。

 

 だが、彼女の答えは残酷なほどシンプルな答えだった。


 「無理。あなたを異性として意識していないから」


 「…………そうか、わかった。ごめん」


 「うん、要件はそれだけ?私生徒会の仕事があるから」


 じゃあねという彼女の声を遠くに感じる。


 桜吹雪が舞う。


 そして、俺の恋はあっけなく終わった。


 高校二年生になった春。


 始業式を終えて、俺は告白をした。


 だが、その恋は簡単な結末をたどった。


 俺は何のために生きているんだろうか。


 部活だって別にたいして活躍もしていないし、勉強も特別できるわけでもない。


 アニメだって人並みに見る程度だし、本だって別に読書家っていうほど読まない。


 何もかもが中途半端。


 強いてあげるなら人よりも少しだけ高い身長と低い声くらいが俺の特徴だった。


 何のために生きているのだろうか。


 失恋というほどたいそうなものを自分では意識していなかったが今はただどこか遠くにいって音もなく消えてしまいたかった。


 幸い、彼女は俺に告白されたことを言いふらしたり、面白おかしくからかったり、ましてや罵倒してくることもなく、淡々と日々を過ごしている。


 いっそのことあんたの事なんか眼中にないということを怒鳴ってくれれば幾分気が晴れたかもしれない。


 ————いや、それはそれで落ち込む。


 教科書の入ったカバンが特に今日は重く感じる。


 授業だってノートに黒板の内容を模写することに集中していただけで実際のところはほとんど俺の頭の中には入っていない。


 俺には別に誇れることなんて別になにもなかった。


 特別仲のいい友達もいないし。


 彼女だってつくれない。


 趣味に料理とアニメを少し見る程度だ。


 趣味の料理は俺がほとんど実家で両親が共働きのせいでほとんど家にいないせいかせめて美味しいものくらいは食べておきたいという考えから安くてうまい料理を始めたのがきっかけだ。 


 それが両親に感謝され、お小遣いをもらえるようになったので、そのことについては良かったなと思える。


 まぁ犬でも飼えば少しは気が晴れるのかなと俺は散歩中の犬を見やる。


 話し相手が全くいないというわけでもない。

 

 それこそ犬のようにかまってほしい腐れ縁の存在が一人いる。


 俺がボーッと帰っているところを俺は肩を勢い良く叩かれる。


 俺の正面に現れた彼女は、とても元気な子犬のような女だった。


 サラサラの黒い髪をショートヘアにして、表情が豊かで時折犬歯がみえている口元をにかっと笑う。その姿はまるで少年のようだった。


 実際のところ彼女は俺よりも、というか普通の女子よりも低い身長だが、胸はそれなりにあるというか平均以上にある。


 人によってはぐっとくるような愛くるしい見た目をしている彼女の名前は―――。


 「江島か……」


 「京子って呼べよ、いいかげん!」


 俺の肩をバンバン叩く京子はいつも元気だ。


 制服も胸元のパツパツをのぞけばどこか中学生のような立ち振る舞いだ。


 あいつはバスケ部でバスケをやっている。


 一度だけ体育でバスケをやっているあいつを見たが、あいつの胸は男子の視線を独り占めしていた。


 そのことは彼女も気にしているらしく、たまに俺に「巨乳な女は苦労するぜ」って愚痴をこぼす。


 「なぁんかしけた顔してるなぁ……大丈夫か」


 「放っておいてくれ」


 なぜ俺なんかにかまうのかわからないが、幼馴染ということもあって幼い頃は一緒によく遊んでいた。


 こいつが女だとわかるまでは。


 「今日の弁当もうまかったぜ!」


 俺はたまに彼女に弁当を作ってやっている。


 家も近いから一緒に登校をしているし。

 

 こいつの声はキンキンと高いというよりかはボーイッシュなアルトボイスだった。


 他の男子からも隠れて人気のあるこいつはそんな自覚はなく、俺にべったりだった。


 まぁ別に嫌いというわけではないんだが…………こう。


 「もうちょっと落ち着いた雰囲気の方がなぁ……」


 「なんか失礼なことをかんがえなかったか?」


 「いや別に」


 「今日もお前の内で晩御飯食べていくぜ、いいだろう?」


 「どんだけ食うんだよ」


 「ホイコーロー食べようぜ、ホイコーロー!」


 これが俺の日常だ。


 まぁ悪くない。


 「おッこんなところにパン屋があるぜ?」


 「最近できたみたいだな」


 「入ってみようぜ、俺小腹すいてさ」


 「いつもすいているだろ」


 「なんだと、こら。誰が大食い女だ」


 「そこまで言ってないだろ」


 俺は小さなパン屋に入る。


 パン屋は狭く、所せましとパンが並べられている。


 特別変なパンはなく、人気な焼きそばパンとかクリームパンとか、安くてうまそうなパンがあった。


 「いらっしゃいませ~」


 間延びした声を聞いて出てきた女性をみて俺は言葉を失った。


 俺のドストライクがそこにいたのだった。


 

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