18th Dead 『生きても死んでも"止まらずに"破壊を振り撒き進み続ける』

 俺の名前は北川ナガレ。隣にいるのは相方ヨランテ。


「……終わり、ましたの?」

『おう、終わったぞぉ……やっとこさ終わったんだ』


 "屍人製"の歩脚アシを持つ謎の大蜘蛛とかいうよくわらん敵を、よくわからんままにぶっ倒した事実をひしひしと実感する"ゾンビ怪人と悪役令嬢の武闘派即席コンビ"……その片割れだ。


「長かった、ですわね……」

『ああ、長かったな。ほんと長かった……どうしてこんな長引いたんだってぐれーに、長かった』

「……ええ、全くですわ。もう暫く荒事は御免ですわね……」

『同感だ。……一先ず仲間と合流する。お嬢も来るだろ?』

「当然、同行させて頂きますわ。わたくし他に行くアテなんてありませんもの」

『自信満々に言うこっちゃねーだろうがよ……ま、俺も手ぇ貸すって決めた以上は可能な限り手助けすっからさ……取り敢えずは衣食住と働き口だな』

「ええ、そこですわね。……もしよろしければ、北川様の町に住まわせて頂いても?」

『いんやあ、そりゃやめとけ。サイトウ地区はドヤ街だ。要は貧民街スラム……善人は多いがそれでも治安は悪ぃし何かと不便も多い。俺は死人で化け物だから秒で馴染めたが、戦闘型とは言え並みの人間……それも女学生カタギ上がりの悪役令嬢ブルジョワが暮らせるような場所じゃねえんだ』

「ではどうすればいいんですの? この世界の人間でなく、戸籍も何もないわたくし風情に他の選択肢なんて……」

『あるんだな、これが。知り合いにいるんだよ、あんたみたく路頭に迷っちまった乙女やご婦人がたを拾って手厚く世話してくれる心優しいマダムってのがよ』

「……なんか怪しいですわね。その方、本当に信用できるんですの?」

『心配いらねえ。常人より色気と性欲がオーバーフロー気味にオーバードライブしてるし色々規格外にデケェけど基本的にいい女性ひとだから』

「いや益々怪しいですわね!? 色気と性欲がオーバーフロー気味にオーバードライブってまず意味不明ですわよ!?」

『ニュアンスで察せるだろ? まあ、なんかまあ色気スゲーし性欲ヤベェってことだよ』

「ああそういう……。色々規格外に大きいっていうのは? 具体的に何が大きいんですの……?」

『背と乳と翼と心かなあ』

「そんなどこかのスペースコロニー暮らしの赤い大佐みたいな……って、翼!? 翼ってそれもう人間じゃありませんわよね!?」

『ああ、ガッツリ人間じゃねえな。何なら元人間だった俺より人間じゃねーわ。まあ、その辺は後で纏めて詳しく話すから……』

「いや後回しにせず今すぐ話して下さいましよ! なんかもう色々と気になりすぎて疲れてるのに寝れそうな気がしないんですけれど!?」

『待ってなー。とりあえず仲間と知り合いにメールしてっから……指定の合流場所から結構離れてんなー。待ってるだろうし急がねーと。あとエコカリのログボ回収とデイリー消化、序でに役所と大学の方へ大蜘蛛あいつの残骸の調査要請も出しとくか。やっべーな結構やることあるぞ……』

「いや待てませんけれど!? そのくらい勿体ぶらずすぐに教えて下さいな! まずゲームの序でに調査要請っておかしいでしょ!? そもそも役所に大学って何!? 北川様そんなコネまでお持ちですの!? っていうか一つの台詞の中に複数のボケ混ぜるのやめて下さいませんこと!? ツッコミ所多すぎてどこからどう処理していいのかわかんなくなっちゃいますわよ!」

『まあまあ落ち着けって。折角高貴な肩書き持っててスタイル良くて美人なんだからさぁ、もっと肩書きと容姿に合った立ち振る舞いした方がカッコいいしモテると思うぜ? なんだこう、《白銀の城のラビュリンス》とか《斬リ番》とか《ワーム・クイーン》、でなきゃ《ガーディアン・デスサイス》みてーにさァ』

「誰のせいで落ち着けなくなってるとお思いですの!? あと牛姫ラビュリンスは兎も角残りの三枚はどれも高貴さとは縁遠いモンスターばかりですわよね!? 何なら地球外生命体ワーム心の闇ガーディアンなんて設定上女性型とされるだけで美少女モンスターの括りにすら入らないのではなくて!?」


 なんて具合に朝方の森を進むこと二十分余り……合流地点にたどり着いた俺たちは、自警団のドライバーである三森さんの運転する中型バンで一先ず泥得サイトウ地区へ向かった。


 そっからの動きは(事前連絡を済ませていたのもあり)スムーズで、ヨランテは件の"背と乳と翼と心がデカい知り合い"に引き取られ、宛がわれた仕事をこなしながら平和に暮らしてるそうだ。

 また、彼女は元々戦闘型なだけに自警団にも入っているらしく、屍人刈りで俺と共闘なんてことも結構あったりする。



『『『『『ヴウウウアアアアアア!』』』』』

「全く次から次へとキリがありませんわね……」

『ああ全くだ。楽してちゃ大した結果は出せねえってのは、どこも同じらしい』


 今日も今日とて、俺たちは屍人やその他市井・人畜に害をなす連中と戦い続け、その傍ら互いの目的に向けても諦めず進み続ける。

 俺は復讐、ヨランテは元居た世界への帰還……それらを果たすまで俺たちはそうそう立ち止まらねえし、仮に目的を果たしたとて恐らく、何かまた別の目的に向かって結局は走り続けることだろう。


 何故なら多分、俺たちは……結局そうするしかねえような"そんな程度の存在もん"だろうから。


『細切れにしたらァ、劣等どもが!』

「吹き飛びなさいよ、死に損ない!」


『『『『『グオオオオガアアアアアッ!』』』』』


「同情の余地なき貴方がたには、天国なんて贅沢過ぎる!」

『然しさりとててめえら如き、地獄に落とす価値もねえ!』

「なればこそ消えてしまいなさい!」

『ただ無限の虚無へと消えて行け!』



 ひたすら破壊しながら、進み続ける――



「私たちが――」

『俺たちが――」

『「お前たちにとっての "終末" だぁ!』ですわッ!」



 ――いつか来るだろう"終焉おわり瞬間とき"まで。


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