デッドリヴェンジ!-最愛の婚約者共々殺された筈が俺だけゾンビ化したのでとりあえず下手人に復讐します-
蠱毒成長中
その男、ゾンビ乍らにゾンビを"刈る"
1st Dead『奴こそは"屍を刈るもの"』
時は初夏。草木も眠る丑三つ時……
『ヴォオガアアアアア!』
『ヴルアアアアアア!』
『グオオオオオオオッ!』
僅かばかりの街灯しか
『ゴウゴガアッ! グゲガアアッ!』
『ブバァッ! ブボベバァッ!』
『ギイギギギガガガガギイイイイッ!』
『グギャギャギャギャガゲエエッ!』
どうにも不気味でどうしようもなく不愉快な、
目的もなく、信念もなく、本能かどうかさえ曖昧な意識のまま、群れを成してぞろぞろと歩き続ける……
『ちっ、めんどくせぇ
そして、それらを物陰からじっと睨み憎らし気に毒づく、一人の男……
『入り組んだ土地に圧倒的な
序でに道中拾っちまっためんどくせえ"お荷物"と……』
血の染み付いたミリタリージャケットやカーゴパンツ、傷だらけの皮手袋、履き古された安全靴……そして、不気味にほくそ笑む狸の能面。
宛ら都市伝説の怪異か、ホラー映画の殺人鬼が如き異質さ……暗い夜道で出くわしたなら、気絶せずにはいられない。
『ヒトっ
……まあしょうがねぇや。愚痴ってたって事態は進展しねえンだから』
ゾンビと同等か、或いはそれ以上に異質かつ異様……
受け入れ難い悲劇に見舞われ乍らも"再起の機会"と"逆襲の力"を授かり、自ら"怪物"と化した男であり……
『"怯む"と、思うのかよ……
これしきの
この物語は未来を奪われ"怪物"と化した男の、義憤に満ちた死闘と、憎悪に塗れた復讐の記録である……!
〇〇〇〇〇
俺の名前は、北川ナガレ。
『ヴァアアアアアア!』
『ヴエエエエエエアアアア!』
『ヴァアアアア!』
『おーおーおーおぅ、
騒いで暴れる以外能のねえ
どうせ俺に刈られて無様に散る
いいぜ、かかって来い……俺が直々に、戦ってやるからよォ~』
ひょんなことから"ゾンビを刈るゾンビ"になっちまった、元・どこにでもいる普通のサラリーマンだ。
いきなりだが、俺は今途轍もなく厄介な状況に立たされちまってる。
その要因は大きく二つ。
一つは、ここまで読んでくれた親切で心優しい
そもそも色々ワケあってゾンビ刈りを生業にしてる俺は、今日も今日とてゾンビどもをぶっ潰しまくるべく目撃現場へ急行したワケだが……
(……フツーさあ、思わねえじゃん?
昼間っから屋外でデラックスのドライバー巻いてダークライダーごっこしてる
大体はどうせ見間違いか、構って欲しさから来た
そんで実際調査に赴いて「見間違いだったぞ」って訂正して、笑い話で済ますのがテンプレだろうによ……
なんでマジで出てンだよ、ゾンビがよぉ。
しかもあんな、秋ごろの渋谷にタイラントだかタナトスだかバラ撒いて頭数揃えたような数がよォ~ッ!)
まァ~なんだ、見通しが甘かったわなァ。
所詮は
(しかもそれだけなら"まだ"やりようはあったっつーのに、運悪くこんな見るからにドエラい"拾いもん"しちまってさァ~ほんとツイてねーよ俺ァ)
ま、それも結局はてめーの
(まあそんな疫病神みてーな言い方しちまったら"こいつめ"に失礼だろうけどもよ……)
第二の要因ってのは――多分、文脈から凡そお察しだろうが――ゾンビどもとの交戦中、図らずも救助する羽目になっちまった謎の女だ。
どっちにしろ過疎化しまくりで廃墟・廃屋だらけな山中の限界集落になんてまるで似つかわしくねえそいつが、なんでか無数のゾンビどもに追い回されながら姿を現した。
「いやぁ~ん! 一体これはどういうことですの~!? 何故わたくしがこんな目にぃ~!?」
いっそ表彰したくなるほど"如何にも"な逃げっぷり……正直『このまま放置しとくのもいいか』なんて平成初期によくいた(?)
如何に性欲や恐怖心まで死にかけた"ゾンビの化け物"とはいえ、性根まで完全に腐りきっちゃいねぇってモンで、
『おらよッ、吹っ飛べェ!』
『ヴアアアアア!』
『ヴエエエエエ!』
『ちっ、しぶてぇな……勿体ねーがもう一発だ、食らってくたばれェい!』
『グゴオオオオオ!』
『ブボバアアアアア!』
「いやあああああっっ!? こっ、今度は何ですの~!?」
『ほれ姉ちゃんこっちだ来なっ! 一旦逃げっぞ!』
「えっ、ちょっと!? アナタ一体何をしてっ!? ちょっとおおおお!?」
とりあえず持ってた装備で迫りくるゾンビどもを軽くいなしつつ、女を担いで安全そうな物陰へ逃げ込み今に至るワケだ。幸いにも見た目の質量に反してアホほど軽かったんで担ぎ上げるのにそう苦労はしなかった。
まあ今の俺なら全盛期の吉田沙保里や安藤
さて、救助したならそっから先は
この女が何者で、何故ゾンビどもに追われてたのか、その辺洗いざらい聞き出してやろう……と、思ったワケではあるが……
『……さて、ここなら一先ず安全だな』
「――」
『でよぉ姉ちゃん、助けてやった礼ってコトで……質問に答えて貰おうか?』
「――」
『なんだよ無視か? ツレねーな。
袖振り合うも他生の縁つーか、出会った以上縁ができたワケだしよ、
ちったあ仲良くしてくれてもいいんじゃねェかい?』
「――」
『……あれ? なんかおかしいぞコレ……
オーイ姉ちゃーん? 生きてっかー?』
「――」
『へんじ が ない。
ただの キゼツしている よくわからんオンナ のようだ』
運び方が悪かったか、気付けば女は気絶していた。
まあ無理もねえことだ。むしろ(いつからあの状態だったかは知らんが)あの生き地獄を
逃げっぷりよりそっちを表彰してやりてえわ。
(……でまあ『そんならこいつの意識が戻るまで守るしかねーな』と一念発起、ゾンビども相手に反撃の機会を伺いつつ今に至る、ってワケだ)
さて、それでこの後どうするかについてだが……まあ、ここまで読み進めてくれた心優しくてストイックな
答え合わせをすると……そう、"
この状況を脱し、未だ気絶したままの令嬢っぽい女を守り抜くべく、俺はゾンビどもを
『待ってな姉ちゃん、すぐにこいつら片付けてやっからよ~』
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