伊月と小枝
@daladarako
第1話
キュッキュと体育館に靴の音が鳴り響く。
相手を惑わせるようにドリブルをし、隙を狙って高く飛び、ゴールにシュートした。
「伊月様〜!!」「伊月!伊月!」「かっこいい〜!」
グッとガッツポーズをする私に観客が私を見て騒いでいた。
2点差で勝ったな……と思いチラッと相手のチームを見ると、悔し泣きしている子もいた。
相手側のバスケ部の生徒は、「次は絶対に勝ちます!」と目に涙をためながら私に宣言してきた。
私は汗を腕でぬぐっていると、私のすぐ後ろに、私をバスケ部のゲストとして、呼んでくれた…
名前は分からない、後輩ちゃんが走ってこっちにやってきた。
ゼーハーと息を切らしている後輩ちゃんに大丈夫かと声をかけようとしたら「伊月先輩ー!」と耳が壊れる位の大声で言われた。
後輩ちゃん「い、伊月さんがいなかったら、何も学べませんでした!本当に今日はありがとうございました!!」
私は照れてしまい、何も言わずにこくりと頷いた。
するとピーッと笛の鳴る音がして、バスケ部のコーチが生徒を呼んだ。
後ろで騒いでいた生徒達はずらずらと靴音を鳴らし体育館から出ていった。
私と後輩ちゃんはコーチの元へ早足で向かった。
コーチ「えー、みんな集まったかな?」
みんなで列に自然と並び、私と後輩ちゃんは後ろの方に並んで立っていた。
コーチは列に並ぶ私達を見ると、すぐに「集まりましたね」と言った。
伊月「(流石だな……、生徒の数分かってるの…まぁ当たり前か。)」
なんて考えていると、急にコーチは私を見つめて話し出した。
コーチ「伊月さん、えー、今日はありがとうございました。
みんなと楽しくバスケをしている様子を見れて、コーチとしてとても嬉しいです。」
ニコニコとしているが顔は優しめなのに体は筋肉マッチョなおじいちゃんコーチに言われ、少し身震いした。
私は「あ、はい…」と答えた。
バスケ部の皆が「ありがとうございました!」と言い拍手をしていて、私は自分の力を誇りに思ったと同時に恥ずかしさが勝ってしまい、顔が熱くなるのを感じた。
「私も、とても楽しかったです……、ありがとうございました…」
と少し低めの声で言うと、おじいちゃんコーチは聞き取れていなかったようだったが、合わせるように拍手をしていた。
生徒皆「ありがとうございましたー!!」
コーチ「ありがとうございました!」
また明日!とバスケ部のみんなが更衣室へいくようだったので、私も行こうとしたら、コーチに後ろから呼び止められた。
コーチ「あ、伊月さーん!」
私は振り向いて「どうしました?」と内容を聞くと、どうやら私をバスケ部に勧誘しに来たみたいだ。
コーチ「……ということで…」
………実を言うと私はゲストとして来るのが好きなだけであって、運動も自由にしていたいし…
「すみません、私は私なりに好きな運動をしていたいので、……ごめんなさい。」
申し訳ないな……、と思いながら頭を下げて断った。
コーチ「そっかそっか!色んなことをできるのは素晴らしいことだよ!わざわざ呼び止めちゃってごめんね!」
おじいちゃんコーチは、少しはにかみながら、「気をつけて帰ってね!」と言ってくれた。
「……ありがとございます。」
私は急いで更衣室へと向かい、着替えていると、後ろから私をゲストとして呼んでくれた後輩ちゃん(名前はしらない)が後ろから話しかけてきた。
後輩ちゃん「い、伊月先輩……」
私はびっくりして肩を震わせると、後輩ちゃんは急にもじもじしながら、可愛い封筒を渡してきた。
……あるあるなんだよね、多分ラブレター。
後輩ちゃんは顔を赤くしていたので、…私の直感は多分だけど、当たってる。
後輩ちゃん「か、考えておいてください!!」
着替え途中の私に小声でそう一言いうと、そそくさと逃げるように出ていってしまった。
すぐに赤いジャージに着替えて、誰もいなそうな図書室に入った。
……いつも通りのラブレターだったかを確認するためにのぞく。
いつもラブレターはきついのが多いけど、それでも相手の気持ちを考えると、私1人で見た方がいいだろう。
……まぁ少し嬉しいしワクワクするから…っていう自分の気持ちもあるからね。
『伊月様へ♡いつもアナタ様を見ているたび、胸が高まります…♡きょぉ伊月様をバスケにさそってほんとうにこれが恋なんだって気づきました♡ILoveYou…伊月様♡』
……一瞬で分かった、キツい系のラブレターだ。
そっとラブレターを封筒に再度入れて、図書室を出ようとしたら、今いる机の後ろ側、図書室の奥の方からものすごい大きな音が聞こえた。
――――――
「よし!できた!!」
夕陽が照らす、放課後の図書室。
図書室には私しかいない。
私は今度、同じクラスで、カッコよくて…大好きな雄大くんの誕生日プレゼントに入ってある手紙を書き終えた。
夢みる乙女、木々之小枝〜!なんて、ノートに雄大くんと私の相合傘のイラストを描いてにまにましていた。
そしてあと、分厚い占いの本の950ページ目を書いている!……あ、勉強はしましたから!
あと200ページあるけど、まぁ間に合うよね。
無言で占いの結果をノートに書き写す。
……いつも、クラスとかでは書けないから。
私は所謂ぼっち少女、大人しすぎだしお地蔵様みたいで話しかけにくいって……言われちゃっている。
それにクラスには大好きな雄大くんがいるんだもん!書くこととか無理無理無理!!!
そんな私が雄大くんに惚れたきっかけは…、去年の春。
いつもみたいにご飯を1人で食べていた時、ひとりぼっちの私を見て、「一緒に食べない?」って誘ってくれたことなんです!
そこでイケメンオーラだったし、1年生でもうこんな人気者なのに私の傍に来てくれて…
あの笑顔…あのオーラ……
うぁあ!!思い出しただけでキュンキュンする!!!
なーんて思い出に浸っていると、学校のチャイムが鳴った。
「うぁぁ!!」
帰らないといけない!と思い、借りた占いの本を元の場所に返そうと、ノートもそのまま席を立って、脚立も持たずに足を伸ばして届くように返そうとした。
重たい占いの本を3冊の1つ、戻せた!と思ったその瞬間、誰かがガラッとドアを開ける音と図書室に入って来る気配がした。
と、同時にばたばたっと重たい本棚が私の方に倒れてきた。
「ぎゃー!!!!」
伊月と小枝 @daladarako
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