第15話 初めての助産院
指定された時間に助産院に着く。
いろんな所があるとは思うけど、私が来たところは住宅街の中にある、普通の家だ。
てっきり病院みたいな外観だと予想していたけど、普通の家とは…。
初めてだとちょっと入りづらい。
一応看板があるし、ちゃんと予約は取れているので、大丈夫だろうとは思うが…。
お宅訪問みたいな感覚で入ってみたら、1番手前の部屋が木造の診察室で、木の香りがして落ち着く感じがする。ここは助産師さんの自宅だそうで、助産院は1人でやってるとのこと。
私は予約の隙間に入れてもらっているので、もちろん他にも人がいる。
「順番来たら呼ぶから待っててね。」
と言われ、しばらく待つ。ウチの赤ちゃんは大人しく待っていてくれているので、それはそれで暇でもある。抱っこしているので手が塞がっているから、待合に置いてある本も読めない。
待ってる間、貼ってあるポスターを眺める。
ポスターには「◯◯式」という文字。
なんとなく、見たことあるような…?
後で知ったけど、この◯◯式というのはかなり有名なものらしい。
15分ほどして順番が来たので、言われた通りに準備する。
持参したタオルを渡して上半身の服を脱いでベッドの上で仰向けになる。
赤ちゃんはベビーベッドで待機だ。
赤ちゃんは機嫌が良く、起きてるけど大人しい。
いよいよ施術が始まる。
あの開通式の時の物凄い痛みを思い出して、思いっきり身構える。
それを助産師さんに見透かされ、クスッと笑われてしまった。
「リラックスして力抜いてねー。」
助産師さんは両手の指の腹を使って、優しくCKBを擦ったり引っ張ったりする。
全くといっていいほど、痛くない。
詰まってる所が少しだけチクチクと痛い時もあったけど、あっという間に痛みが消えていく。
母乳が凄まじく噴水のように飛び散るので、顔にはタオルをかけてある。だから恥ずかしさはあまりない。
すごい…。
まさか、こんなにすごい手技だとは…。
見えないけど、触られてる感触で分かる。
こういうのを『神の手』って言うんだ。
大袈裟ではなく、本気でそう思った。
5分もかからず痛みはすっかり消えた。余裕が出てきたところで、助産師さんといろんな話をする。
産後の病院の開通式が物凄く痛かった話、出産の話、搾乳の話、この助産院の話。
この手技はやっぱり『◯◯式』を習いに行ったから出来ることで、習ってない人は病院でのやり方が標準らしい。
他にもやり方はいろいろあるみたいだけど、ここのはやっぱり有名だそう。
そしてこの助産院はユルユルでやってるけど、本来はめちゃくちゃ厳しいらしく、ママの食事とかもきちんと管理されたり、いろいろ指導されて、ダメだと怒られるらしかった。
怒られるのは、嫌だなぁ。
そして、私みたいに詰まった人ばかりが来るのではなく、OPメンテナンスをしてもらいに定期的に通う人も多いのだそう。
あとは卒乳をする時に利用する人も多いみたい。
皆、すごい。
メンテナンスって…。
それから私の直母の話になり、
「全然ダメで諦めたんだ」って言うと、今日はイレギュラーで時間が取れないけど、次回直母の練習しようということになった。
でもまあ…きっと無理だろうな。
何回やっても全然ダメだし。
そもそも助産師さんの力量というより、赤ちゃん次第だし。
一応予約は取ったけど期待はしてない。OPメンテナンスと思って来ようと思った。
15分くらい優しくマッサージしてもらったら、ほぼOPは空になったけど、びっくりするくらいポタポタの柔らかいOPになっていた。
こんな全く痛くなく詰まりが取れるんだったら、もっと早く…あの開通式の時に出会いたかった…。
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