神ゲーは配信と共に~ゲーマー夫婦はVRMMOを配信中!~

智之助

第1話 ゲーマー夫婦、神ゲーを知る


「―従魔と現実でも一緒に居れる、だと……!?」

「―生産したアイテムを現実の部屋に飾れる、ですって……!?」


 それは、いつも通り夫婦で仲良くしていた配信を終えて直ぐだった。


―『ファンタジー・リアル、超大型アップデート!あの神ゲーが、更に進化する。』


 先程の配信で、進めていたゲームをクリアしたので、新しく何か良いゲームは無いかなっと夫婦でゲーム紹介サイトを見ていた時に見つけた。


 『ファンタジー・リアル』

 半年前の一月に発売されたVRMMOゲーム。

 よくある様なファンタジー世界をプレイヤーが自由に生きるゲーム。

 ありきたりで、何万と似たようなモノが世に出ているなかで、このゲームは瞬く間に世界中で人気になった。


―『現実の様なNPC。現実の様な世界観でありながら、幻想の世界。』


 ゲームの中で、生きている住人達。一分一秒で変化していく世界。

 

 今までにも、現実の人間の様に感情を持ったNPCは有った。心を理解したAIもいた。―けど、世界に生きているNPCはいなかった。

 

―¨生きていたんだ¨。


 このゲームを遊んだ人は、必ずそう言った。

 実際に『ファンリア』の住人と結婚して、そのプレイヤーと住人が現実で生活していると言ったニュースを何度か目にしたことがあった。


 ま、上手くやればゲームキャラと結婚できるって成ったらそりゃゲーマーやオタクはハマるしやり込むわな。


 ゲーム内容も神。システムも最上。一度始めるとハマる確率100%。……世界で一番熱狂しているゲームにも選ばれますわ。


 そんなゲームだからこそ、入手難易度はヘルハードを超えてエクストラアルティメット。発売当初は、俺達も手に入れようと頑張ったが……まあ、お察しの通りだ。

 その後、三か月たって手に入れること自体は出来た。けど、もうその時には他ゲーにハマってた。 

 

 やる気がある時に始めようとして出鼻をくじかれ、始めるタイミングを見失った訳だ。


―が、先程の記事に書かれた超大型アップデートの内容を見て、やる気が一気に湧いてきた。


 俺、神崎光月かんざきこうが、二十三歳。好きなゲームジャンルはホラー以外全般。好んで選ぶジョブは召喚士と従魔士。ゲームで出て来るモンスター全般が大好きのモンスターゲーマー。


 妻、神崎夜乃かんざきやの、二十三歳。好きなゲームジャンルはホラー以外全般。好んで選ぶジョブは生産系全般。ゲームで作る事が出来るアイテム全般が大好きなアイテムゲーマー。


 大体のゲームが、ゲーム内でしか従魔やアイテムと触れ合う事が出来なかったが、アップデート後の『ファンリア』ならそれが可能に成る。


 それに惹かれない訳がなく、俺達はアップデート日後の八月十日に『ファンリア』を始める事と成った。


▽ ▽ ▽ ▽ ▽



「―水分補給は大丈夫?」

「ええ、大丈夫よ。貴方こそ、ちゃんとしてきた?」

「勿論。体調管理はばっちりさ!」


 大人一人を包めるくらい大きなゲーミングVRマシンの中にあるソファーに座り、ゲームを始める前に行う妻との確認をする。


「お、アップデート完了だって。」

「じゃあ、始めましょうか。何時も通り、アバター設定が終わったら合流して配信を開始しましょう。」

「了解。」


 大きく息を吸い、新たな世界へと旅立つ始まりの言葉を告げる。


「「―ゲームイン・『ファンタジー・リアル』!」」 

 




『―ようこそ、神崎光月様。』


 辺り一面目に優しい真っ白な空間。そこに俺は立っていた。


『ここは『ファンタジー・リアル』のログイン前ロビーです。神崎様は初めてのプレーですので、アバター作成がされておりません。アバター作成を完了させると、改めてゲームへのログインが可能に成ります。』

「じゃ、早速アバター作成を始めたい。」

『分かりました。では、アバター作成へ移ります。』


 機械音声の案内に従い、サクサクとアバター作成を終えて行く。

 

 毛先が白い少し長めの黒髪。男にしては少し可愛い寄りの顔。背丈と体付きは普通。右が青、左が琥珀色の瞳。

 リアルバレが起きない様にぼかした、現実の容姿に近い姿をしたアバター。

 

 最後に、ツクとプレイヤーネームを入れて完成。


『次に、アバターの持つスキルを設定してください。ここで習得できるスキルは、五つまでです。』


 アバターの容姿を完成させると、スキル選択画面が現れる。

 

「≪従魔術≫≪召喚術≫≪強化魔術≫≪基礎魔術≫≪回復術≫で決定っと」


 ズラァっとかなりの数のスキルがあり、一つ一つ見ていったら一時間は必要になってくる。しかし、予め調べれる範囲でこのゲームで初期から取れるスキルを調べて、取りたいスキルを決めていたので、直ぐに設定は終わった。

 

 他にも必要なスキルは幾つかあったが、習得条件が簡単で直ぐに取る事ができると分かったので、できるだけ熟練度を上げておきたいこの五つにした。


『最後に、自身がこの世界でやりたい事を想い浮かべて下さい。』

「……何の意味があるか分からないが、まあやってみるか。」


 言葉の意図が読めなかったが、とりあえず指示に従いやりたい事を想い浮かべる。


 妻と一緒に楽しむ。従魔や契約獣を一杯手に入れて、触れ合いたい。妻や仲を深めた従魔や契約獣と共に冒険をして、強敵を倒したい。 

 とにかく、このゲームを楽しみたい。


『―完了しました。これにてアバター作成は終了しました。直ぐにでもログインが可能です。『ファンタジー・リアル』にログインしますか?』

「ああ、ログインしたい。」

『了解しました。これより、『ファンタジー・リアル』にログインします。』



『――良い旅を、ツク様。』



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