黒よりも暗い闇の世界

たぬきち

第1話

むか~し、むかし。あるところに王子さんとオーガさんがいました。

王子さんは川へ選択に、オーガさんは山へシバかれに行きました。


王城から町へと続く道にある小川で、いつものように王子さんがひざと頭を抱え、言いました。

「どうしよう、財政赤字が続き、国債残高が膨れ上がってしまう。Myナンバーも進めなくちゃいけない。何をすればいいのか、これを選択していいのだろうか。後世で暴君、悪君といわれないだろうか。」

王子さんは、普段臣下の前で示す強気な態度とは裏腹に水浴びをした後の犬のようにブルブル震えていました。


オーガさんは、王城の裏手にある小高い山の中腹のくぼ地で言いました。

「もう、いいだろ。十分生きただろ。他に何を望むことがある。後世のために死んでくれよ。」

くぼ地を埋め尽くさんばかりのおばあさんが喚いていました。

「おばあを舐めるでない。ひ孫の顔を見るまでは死ねるわけない。」

「誰のおかげで今のタヌキ王国があると思っているんだ。わしを殺す気か。」

普段、川の番人として恐れられているオーガさんも老害にはタジタジでした。




ざわざわ

「たった今、今世紀最大の邪法が制定されました。この法律によって税制福祉SDGsなど様々なことに対応できる、と発表がありました。ただし、その恩恵を受けられるためには、政府によって国民と認められる必要があるようです。国民と認められるためには、Myナンバーを取得する必要があります。以前、保険証問題でMyナンバーを自主返納した方については政府が再度作成するよう呼びかけています。

また、様々な財源を確保するため、国民と認められてないものに対しては強行手段を取るというようなことも言われています。」

「今世紀の最大の作法が制定されました。この法案は、電話5年度末に制定され電話6年7月から施行される予定です。政府の広報担当者から発表があります、では、VTRをどうぞ。」

「たった今、Myナンバー推進法案を可決しました。この法では、将来の我々の子孫が穏やかな環境で過ごせるよう、様々な取り組みを含めたものです。この法では大きく3つの取り組みを行うこととしています。

1つ 教育改革により、現在深刻な状態にある少子高齢化に歯止めをかけます。

2つ Myナンバー制度の積極的な推進により少子化を抑制します。

3つ 働いたら負け改革を推進しタヌキ王国のGDPを大きく、大きく向上させます。

この3つの政策を有機的に結合させ、タヌキ王国の国力を増大させます❗」

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