人間の外枠が見えなくなる眼鏡
苦贅幸成
◯
人間の外枠が見えなくなる眼鏡。
その眼鏡をかけると、人間の中身が見える。
煤で汚れた灰色の布きれ、暖かな光、空気中の塵を引き寄せるピンクの引力、白く柔らかな羽毛の塊。
何も見えない人間もいる。
そこに存在しているはずなのに、外枠だけで、中身がないから。
さながら透明人間だ。
鏡は見たくない。
もしそこに、醜いものがあったら、あるいは、何もなかったとしたら。
立ち直れない傷を負いそうだ。
それならそれでいい。
私という人間を、中身からぶっ壊して、他人の役に立つ中身に作り直す。
そうすれば、誰か、私の中身を愛してくれるだろうか。
誰が私なんかの中身を見ようと思うのか。
わからない。
けれど、もし、私の中身を見て欲しいと思う相手に出会ったときは、おはようとか、こんにちはとか、そういう挨拶といっしょに、私はこう言いたいと思うはずだ。
「眼鏡をかけて」
人間の外枠が見えなくなる眼鏡 苦贅幸成 @kuzeikousei4
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