第7話 盗賊団の襲撃

別邸から中心都市であるブソンニへと向かいますが、馬車が走る道は山道になります。

ブソンニは高原地帯にある都市で、夏でも涼しいため避暑地として有名で

皇帝の避暑のための離宮や貴族や富豪、豪商の別荘もあります。

しかし、盗賊団が領内に拠点を置いてからは危険と言う事で、皇帝が避暑に訪れる事もなくなりました。

さらに有名な富豪が盗賊団に襲われる事件も発生、幸い怪我などはありませんでしたが

それでも金品が盗まれたため、皇帝だけではなく別荘を持つ方たちも訪れなくなり

観光が主要産業の1つであったため、かなりの打撃になっているそうです。


 また、交通も現在は馬車か徒歩、あるいは自動車となりますが

領内では自動車の台数は少なく、燃料の輸送も狭い山道を運ぶうえに

盗賊団に襲撃されてる事もあり、安定的に輸送できないため普及していないそうです。

なので、まだまだ馬車が主要な交通手段となっています。


「鉄道が早く開通すればよいのですが、工事のかなり遅れています」


馬車から工事中の鉄道が見えますが、橋やトンネルが多いため難工事なっているよそうです。

また、冬は雪と凍結で工事が出来ず、さらに盗賊団の襲撃もあって本来ならば

5年前に開業しているはずの鉄道も、まだ開業していません。


「ここから見える場所はかなり出来上がっているようですね」

「この辺りは出来上がっていて、レールを敷設も終わり信号や電気設備の工事をしています。

ただ、この先のトンネルは難工事で、工事を始めて15年経ちますがやっとトンネルがやっと1年前に貫通しました」


現在、わたくしたちが馬車で通ってる道はこれから峠になりますが

鉄道はその峠をトンネルで超えるそうですが、そのトンネルは帝都で最も長い

鉄道トンネルとなります。

このような長いトンネルを掘るのは初めなので工事が自体難航し、さらに水が湧きだしたり、脆い地層で崩落などがあり工事が遅れに遅れているそうです。

しかし、そのトンネルも1年前に貫通して開業に向けて工事を急いでいます。


「こままトンネルが完成すれば、早ければ来年、遅くとも2年後に鉄道が完成します」

「そうなのですね。そうなれば、交通の便が良くなりますね」

「ええ、帝都への行き来が楽になりますし、電気鉄道なので煙もできません」


わたくしが乗って来た列車も電気機関車がけん引する列車でしたが、帝国は電源開発を進めており

ダムによる水力発電所や石炭による火力発電所を建設しております。

領内にもいつかの水力発電所がありますが、ブリードの話では領内大きなダムの建設計画もあるそうです。


「領内は谷が多く、地盤がも固いのでダムを作るには向いている土地です」

「つまり、帝都の役に立るるという事ですね」

「これからの時代、蒸気から電気が主役になると私は見ています」

「電気は鉄道も動かせてますし、明かりも照らせますからね」

「ええ、煙も出ませんから、空気も汚れません」


蒸気機関で産業が発展しましたが、ばい煙の問題が大きく以前の帝都では

ばい煙が酷く、空気が汚れていて肺病や咳こむ人が多かったそうです。

しかし、電気の普及で以前よりもばい煙は減り、空気は綺麗になりました。

ただ、地方ではまだまだ蒸気機関が主流で、列車の中でも煙を出す煙突がたくさん見えました。


「地方はまだまだばい煙が酷いですから、電気を普及させたいですね」

「しかし、帝都全体に電気をめぐらすには、現在の発電所の数では足りません。

なので、早くダムを建設しないといけませんが、ダムを建設するのも鉄道の完成はかかせません」


鉄道が出来る事により、鉄道で電力開発必要な物資の大量輸送が可能になります。

また、工事のための作業員の輸送も鉄道が担う事とありますので、鉄道の完成は

領内の発展に欠かせないもとなります。


「しかし、鉄道が出来るという事は盗賊団も狙うということです。

なので、盗賊団の討伐も進めないといけません」

「それだけ盗賊団は厄介なのですね」

「1年前に団長との一騎討でお互い大怪我を負い、活動が一時止まりましたが

私が回復した頃から再び、活動が再開されました」

「そうなのですね」

「特にこれから通る峠で略奪をするので、油断が出来ません」

「だから護衛の馬車もありますのね」

「はい。しかし、相手を考えると……この数では心もとないのですが、回せる人員もありませんのでしかたがありません」


護衛は付けていますが、2台の馬車を褪せて8人しかおりません。

盗賊団はこの2倍から3倍の数で襲撃をするそうなので、確かに心もとないです。


「任せてください、このためにわたしがおりますので」

「アストリアはエルマの護衛ですが、どのように戦うのですか?」

「わたしは銃の名手で、特に狙撃が得意です。鷹の目ホークアイがありますから」

「アストリアは鷹の加護ありますので」

「そうなのですね」

「狙撃だけでなく、獲物……つまり、襲って来る相手も見つけられますし、感じる事が……」


アストリアの言葉途中で止まりましたが、もしかしてこれは。


「アストリア、もしかして」

「はい、この気配は襲って来る方たちがいます」

「この場所でしたら、間違いなく盗賊団です」

「つまり、わたくしたちを襲うという事ですか?」

「そうとしか考えられません」


ブリードがそう言うと、突然馬車が止まりましたが。


「一体どうした!」

「先導している場所が止まりましたが……襲撃かもしれません」

「銃を撃ってきます、伏せてください!」


アストリアが叫ぶと同時に、銃弾が飛んできました。

木製の馬車では銃弾を防ぐ事が出来ませんが、幸いわたくしたちには弾は当たりませんでした。


「御者さんは馬車の陰か近くの岩に隠れてください!」

「わ、わかりました」


御者は慌てて、隠れられる場所に身を隠しました。


「アストリア、すごいですね」

「これがわたしの加護の力です。多分、相手は3,4人と思いますが、あくまでも銃を撃って来た人数でしからこの3,4倍の人数はいますね」

「最大20人ですか……分が悪いですね」

「地形的にも相手が有利です」

「そうですね。こちらの銃では多分、相手には届きません」

「わたしのライフルも高い所にいる相手だと厳しいですね」

「ライフルをお持ちなのですか?」

「はい、この袋がライフルです」


アストリアは荷物の中から長い袋を出しますが、これがアストリアの武器であるライフルです。


「このライフルは加護の力を使える道具でもあり、普通のライフルでもありますから

普通の弾も撃てます。そして、加護の力を弾のかわりにできます」

「すごいですね」

「ただ、加護の力は物凄く体力を使いますので、使えても2回までですかね。

あと、通常の弾も鉄道に乗るため10発までしか持っていません」

「護衛にはライフルを持たせているので種類がわかれば、弾を用意できますよ」

「えーと、確か……ライフルの名前は……」

「わからないのならば、見せてください。陸軍に居ましたから、特別製でない限りわかります」

「わかりました」


アストリアはブリードにライフルを手渡しますと


「kal99kですね。これならば、弾が使えます」


とすぐにライフルの型がわかりましたが、わたくしはもちろんわかりません。


「それは良かったです。ただ、命中するかはわかりませんよ」

「当たらなくても相手が怯めば十分です」

「わかりました」

「ただ、弾は後ろか前の馬車に積んでありますので……」


ブリードがそう言うと、馬車のドアを叩く音がしましたが


「ブリード様!ご無事の様ですね!」


ドアを叩いたのは銃を持った護衛の1人でした。


「ああ、全員無事だ。いい所に来てくれた、ライフルの弾を持てるだけ渡して欲しい」

「わかりました。手持ちは10発しかないので、取りえず渡しておきます。残りは後方の馬車から持ってきます!」

「頼んだ!」


護衛は10発の弾をブリードに手渡しますと、それをアストリアに渡しまし。


「とりあえず、10発です」

「20発あれば威嚇するには十分ですね、任せて下さい」

「アストリア、気を付けてくださいね」

「はい、撃たれないようにはしますが、撃たれた時はしかたがないです」

「もし撃たれても、ある程度ならば私の加護で治療できます」

「そういえばブリードの加護は何ですの?治療が出来るのはかなり珍しい加護なのでは」

「私の加護の1つは生命の加護です」

「せ、生命加護ですって!?」


わたしは変な声が出ましたが、生命の加護は伝説の加護ではありませんか!

500年前に帝国を建国した初代皇帝が授かった加護で、寿命までは何があっても死なない加護です。

この加護のすごいと所はたとえ首を落とされても死なないという伝説もありますが

自分の命を分け与えて、相手の怪我や病気を治す事も、さらに言えば死人を復活っさせるとも言われています。

さらに、命を分け与えても寿命までは絶対に死なないため、寿命も縮まりません。


「エルマ様、こんな時に変な声を出さないでくださいよ!」

「すみません、アストリア。とにかく、アストリアは盗賊団の相手をしてきてください」

「わかりました」


アストリアは馬車を出ていきましたが、わたくしたちが話している間も弾は飛び交っています。

しかし、ブリードの加護の1つが生命の加護なんて思いもしませんでした。

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