第6話 領内の財政
目を覚ますと、ベッドの中はわたくし1人でした。
ブリードは早く起きたか、わたくしが寝ているうちにあの寝室に戻ったのでしょう。
ただ、目覚めた時にブリードの顔が横にありましたら……心臓に悪いです。
部屋には時計がありませんので、今の時間はわかりませんが外の明るさから
早くても7時になっているとは思います。
ベッドを出て昨日脱いだ服から懐中時計を取り出しますが、脱いだ服は
そのまま椅子かけてあります。
普段ならば、アストリアがちゃんと畳んだり、掛けてくれますが昨晩は
自分で着替えましたので、そのままです。
本来ならばしっかり扱わないと、皴になるのですが着替えは自分で出来ますが
昨晩はブリードにからかわれましたので、脱いだ服は椅子に掛けただけでした。
「7時30分ですか……」
懐中時計で時間を確かめますが大体、何時も通りの時間です。
わたくしは貴族学院を卒業後、家で政治の勉強や加護の制御の練習
そして、結婚相手になれるかどうかの手合わせをしていました。
ブリートさまとは手合わせをしませんが、わたくしの事もちゃんと話したほうがよいのでしょうか。
「エルマ様、よろしいですか?」
アストリアがドアをノックして、声をかけてきましたので大丈夫ですと答えました。
「おはようございます。昨日は眠れましたか?」
「移動の疲れもあったらしく、よく眠れました」
「それは良かったです。しかし、思った以上にこの別邸は痛んでいますね……」
アストリアが寝た使用人の部屋は、眠れる事は出来ましたがかなり床や壁が傷んでいたそうです。
「わたしも公爵家に拾って頂けるまでは酷い生活をしてましたが
公爵家の生活に慣れたせいか、久しぶりにいまいちなヘッドで眠りました」
アストリアは言葉を選んでいますが、きっとブリードの寝室よりも酷かったのでしょう。
使用人だから下に見ている訳ではなく、自分の寝室もボロボロでしたので
そこまで手が回らないのだと思います。
「でも、ここの使用人とも仲良くなりましたから良かったです」
アストリアは誰とでもすぐに打ち解けますので、ここの使用人とすぐ打ち解けたようです。
「それは良かったです」
「少しお話をしたのでが……思っているよりも、領内の財政は厳しいようです」
アストリアが使用人たちから聞いた事を話しますが
国境警備のための予算は出ているものの、盗賊団討伐に関しては帝国から
ある程度の予算は出ていますが、それでも全体の2割しかありません。
人員は国境警備部隊とは別の軍の部隊が派遣されています。
ただ、軍から派遣されると言っても、形式上は伯爵家が雇う形になります。
なので伯爵家から兵士のお給料が支払われる事になります。
兵士のお給料は軍から出てるので、伯爵家が支払う必要は無いように思えますが
あくまでも盗賊団退治は伯爵家の個人の仕事であります。
しかし、現在は私兵を持つ事禁止しているため、いうならば正規の軍人を
傭兵として伯爵家が雇うという形なのです。
でも、兵士は帝国軍に所属したままなので、帝国軍と伯爵家両方からお給料を受け取る形となります。
兵士が使う武器や弾、衣服などは軍から支給はされますが、
兵士の宿舎に関しては伯爵家が用意するので、新たに宿舎を作ったそうです。
さらに宿舎でかかる食料や水など各費用も伯爵家持ちとなっているため、かなりの出費だそうです。
元々領内の産業が農業と林業、観光しかないため、収入が不安定な所に
盗賊団と言う厄介事を抱えて、その対策費が領内の大きな負担になっており
足りない分は伯爵家の予算を削り、領民に出来るだけ影響が出ないようにしているそうです。
「なので、別邸を直す費用もないようです」
「そうでしたが……」
別邸も貴族にとっては
この別邸は伯爵家のプライベートな別邸なので、あまり来客はないらしいく
大事なお客様が来た場合はホテルを利用するそうです。
ただ、たった2週間しかなかったため、ホテルの手配はできても警備の人員を
用意できなかったため、やむを得ずこの別邸を使用したそうです。
「結婚しましたら、内情はばれますので初めから知れてよかったです」
「そうですが、それにしても盗賊団討伐の負担が大きすぎると思います」
「確かにそうですね。以前は軍で対応していましたが、伯爵領内に逃げ込んでからは
あくあでも伯爵家が個人的にしている事になってるようです」
「今は伯爵領内だけで暴れているいますが、また規模が大きくなって帝都に来たらどうするのでしょうかね」
「その時はその時なんでしょう。今は伯爵家に任せて帝国は最低限のお金しか出さないと言う事なんでしょう」
「そうだとして、元々経済力が弱い伯爵家にお金を出させてどうするのでしょう」
「単に法律の問題だと思います。わたくしも法の中身は詳しくわかりませんが、帝国の法で定められているので従うしかありません」
帝国の法で定めれれているので、その法に乗っとるだけで伯爵家を潰すと
言う訳ではありません、それでも負担が大きくその内破綻してしまいそうです。
「現在の貴族は私兵を持つ事が禁止されていますので、領内で戦闘が必要になった時は
帝国に登録している傭兵か、帝国軍から兵を派遣してもらうかのどちらかですが
傭兵は兵の派遣よりも高く、登録している人数が少ないですからね。
なので、人数が必要になる場合は軍から兵を派遣してもらう方がは安いのですが
人数が多くなると結局は高くなります」
「なかなか難しいですね。聞いたところでは、盗賊団討伐の費用が領内の収入の3割ぐらいかかっているらしいですよ」
「そうでしたか。元々裕福な所でない事はわかっていましたが……思った以上かもしれません」
わたくしは実家と比べて生活の質は落ちるとは思っていましたが、それでも伯爵家なので
貴族としてのそれなりの暮らしが出来ると思っていましたが……思った以上に悪いです。
「出費を減らすには、盗賊団を壊滅させるしかないですかね」
「それが一番ですね。ただ、討伐が始まって10年経っても壊滅できませんし、最近は
また勢力が戻ってきているので、さらに手を焼いて費用が掛かっているようです」
一度は壊滅寸前まで行った盗賊団も、再び勢力が戻ってきているそうです。
そうなると、さらに出費が増えますが規模が大きくなり、被害が大きく成れば
帝国軍が直接討伐するのですが……
そこまでになると、被害も増えますから総合的にみると現在よりもマイナスが大きくなりそうです。
「帝国軍が直接討伐をするようになりますと、被害が大きくなりますので
現在の討伐費用以上に失うものが多そうです」
「でも、かなり苦戦しているようですからね」
「ただ、ブリードが負った大怪我は盗賊団の団長と直接戦った時に負ったそうですが
ブリードが大怪我を負ったと言う事は、団長もそれなりの怪我をしたのではないのでしょうか」
「そうですが、関係あります?それに、1年以上前なので今は治っていると思いますよ」
「それもそうですね。ただ、気になっただけです」
「そうですか。お話が長くなりましたが、お着替えとおぐしを整えましょう」
「お願いします」
わたくしはアストリアに着替えと手伝いってもらい、身なりを整えますが
ブリードに伯爵家の財政について朝食の時に聞く事にしました。
「領内の財政ですか?」
「はい。別邸がこのように痛んでおりますし、食事も質素すぎますので」
わたくしはダイニングでブリードと朝食を摂っていますが、朝食はパン2切れに卵焼き、ミルク、そして具がジャガイモと人参に僅かな鶏肉の塩で味付けしただけのスープだけでした。
「帝都の貴族と比べたら質素ですが、領民はこれが普通ですので」
「だとしても、領主まで領民に合わせなくても……」
「エルマは贅沢をしてきたので、そう思うかもしれませんが私はこれが普通なのです」
「そうだとしても、大怪我を追いましたし、領主であり討伐隊の指揮官でもあり
ますのでこの量の食事ではお身体がもたないのでは」
「軍に居た頃よりの食事量よりは少ないですが、これだけあれば十分です」
ブリードはこうおっしゃりますが、昨晩の事を思い出すと体つきは立派でした。
肩幅が広く、がっしり腕でしたので1年前に大怪我を負って生死の境をさまよった方だとは思いません。
思いませんが、明るい所で顔色を見ますと体格の割によくありません。
「その体格でこの食事量は少ないと思います。現に顔色があまりよくありません」
「これは執務と盗賊団討伐の指揮を執って疲れているのです」
「ならば余計にいけません。指揮官であり、領主であるブリードが倒れたらどういたしますの」
「1年前に大怪我を負った時は腹心が代行しましたので大丈夫です」
「だとしても、また領主が倒れたら困ります。しかも、まだ世継ぎがいないのですよ!」
わたくしがこう言いますとブリードは
「では、早く世継ぎを作らないといけませんね。式を挙げあたらすぐにでも作りますか」
とおっしゃりましたので、わたくしが顔が真っ赤になりました。
「な、何にをおっしゃていますの!」
「何って世継ぎを作る話ですではありあませんか」
「そ、そうですが、朝から何を……」
「世継ぎの話はエルマから言いだした話ですよ」
「そ、そうですが……世継ぎの話はこれで終わりです!
とにかく、ブリードは身体を休め、もっとちゃんと食べないと領民に迷惑が掛かります!」
「わかりました。ただ、この別邸には最低限のも食材しかありませんので、これが精いっぱいです」
「それなら仕方がありませんが、これからはしっかり食事を摂ってください」
「わかりました」
世継ぎの話は確かにわたしから言いだしましたが、冗談とはいえあのような事を
朝から……いえ、朝でなくても言われたら恥ずかしいです。
でも、世継ぎを作るという事は……そう言う事をする訳ですから……。
ブリードとの子作りを想像して、顔が赤くなってしまいました。
「エルマ、顔が赤いですよ?」
「なんでもありません!早く食事を終えて、出発いたしましょう」
「そうですね。食事が済んだら、出発しましょう。明るいうちにブソンニに到着しなたいので」
「ええ、わかりました」
わたくしは残り食事を食べる終わりますと、荷物を馬車に積み、ブリードとアストリアと
馬車に乗りますとブソンニへ向かい出発したのでありましたが、このまま何事もなく無事にブソンニに着けばよいのですが……。
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