第7話 人称は?
当時畔戸は一人称の小説しか書けませんでした。(と言うより、三人称自体このカクヨムで書いたのが初めてなので、今も勉強中だったりするのですが)
今更ですが、一人称は、その人物が見たもの感じたものしか書いてはいけません。メリットはガッツリと主人公の感情を表現できるところ。
デメリットは視点が固定されているので、物語全体を見渡せないことでしょうか。
三人称は、視点の切り替えを行うことで、一方その頃〇〇は、みたいな構成を組む事ができるし、枚数稼ぐこともできると思います。
漫画的な視点で物語を作れるから三人称の方が良い?
一人称は使い勝手悪い?
畔戸は受け視点の一人称で始めたわけですが、全く不便は感じませんでした。
むしろ三人称の利点を使いこなすことができなかったので、一人称の方が臨場感あって面白いのに何で皆三人称使うんだろう? と思っていました。
当時、畔戸自身の技術的な問題はあったものの、制約された視点は最初から利用するつもりでした。陽夏が創平の過去を知る時に、創平の知らない所で動き回ることは想定の範囲内だったからです。(計算通りだったのこの件だけ)
不信感を抱いた陽夏は、創平には知り得ない所で、大垣に連絡をとっています。大垣は例え西村と創平の事を知っていてもペラペラ話す男ではないのですが、見てきた事を当たり障りのない範囲で伝えることで、陽夏の疑問に答えます。
でも、創平はまさか陽夏がそんなことをしているなんて思ってないので、いきなり暴挙に出た陽夏の行動に戸惑います。でも、よくよ考えてみるとなるほどあの時か、って事に思い当たるわけです。
もちろん、事前に名刺渡したりとか、そういう準備は必要ですが。
はてさて、これからいよいよ佳境に突入です。まずは喧嘩した二人を再会させなくてはいけません。
でも、気にはなりつつも、会場に素直に出向く創平ではありませんから何か起爆剤が必要になりました。
こんなとこでお節介な人間がやって来て(例えば大垣とか芝とか)
「お前、本当は気になってるんだろ? だったら行けよ! ……行って、陽夏に声かけてやれよ! あいつはお前のこと待ってるんだぜ」
なんて説得を始めたら途端に興醒めです。
いくらなんでもそれは青春バカではなく、青春勘違い野郎です。
Cフラのテーマは青春バカですが、皆んながみんな青春バカになる必要はないのです。
そこも踏まえつつ、創平が陽夏のとこに行く理由といったら……。
真帆しかいない。
でも、なんで真帆がやって来る? しかも、人んちの職場に……。
金だ! 金借りに行く。しかも、創平なんて完全にカモられてるから、真帆なら絶対真っ先に創平に借りに行く。
というわけで、真帆を投入したんですが、真帆は陽夏に関心がない。この人、自分の目的を果たしたらさくっと家に帰りそうだ。
……あれ? 困ったぞ。
このままでは、創平は真帆にお金を毟り取られました。チャンチャン。で終わってまう。作者すらも手を焼くキャラってこれ、どうなん?? でも、真帆はそっぽを向いたままです。
真帆が動いて、創平を突き動かす理由って言ったら……。
はい。ここで二回目のアップデートが走ります。
尊敬して止まない上司が難聴。
仕事にプライドを持っている創平の事ですから、何を置いても助けに行くに違いありません。彼には近藤のお願いを蹴った後ろめたさもあるから尚更です。
そして、さしもの真帆も、幼少期からお世話になっている近藤の病気については胸を傷めているはずです。
そして、ここで一人称の強味が出てきました。
創平が陽夏に噛みつかれたとき、近藤はピアノ部屋で何してた?
創平が台所でご飯を作っている間、ピアノ部屋にいた三人はどんな言葉を交わしていたのでしょう?
きっと後任調律師の話ですよね。陽夏は近藤から「もう、私は調律できないよ」って言われてたんじゃないでしょうか。
よし。アメリカンドッグをつまみ食いしている真帆よ! 食ってる場合ではない。近藤の不調をそれとなく匂わせておくのだ!!
そんなこんなで、伝説の調律師は突如、難聴に蝕まれたのでありました。
ちなみに、近藤の病名は低音障害型感音難聴という病気らしいです。主な原因はストレスです。
よほど手に負えない顧客を抱えて悩んでいたんでしょうね。ご愁傷様です。
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