君の居ぬ間に

第1話

「みんなから人気」と

「みんなから愛されている」は

似ているようで全く別物だと思う。

「大好き」と「愛してる」なんかも同じだ。

俺には「愛」という言葉がなにか特別で、崇高なものにみえて仕方ない。

これは、「人気者」と言われ続けた俺が

なんだってこう自殺なんかしたのかっていうそういう話だ。

あんたも暇つぶし程度に聞いていってくれよ




「命とは平等なものでどんな人でも死んでいい人なんか居ないんです。」

夏の暑さもだいぶ和らぎそよ風が気持ちよくなってきた9月の下旬、まるでそこらの自殺予防のサイトくらい薄い話をする教師の話を聞きながら、僕は眠気に身を任せて机に突っ伏していた。

「ちょっと𓏸𓏸くん!聞いてるの?」

「ふぇ?」

俺が寝ぼけた声を出したもんだからクラス中にどっと笑いが起こった。クラスの笑い者にされた俺は少しムッとして

この、話の中身もおそらく頭も空っぽな教師に少し意地悪をしてやろうと思った。

「はーいちゃんと聞いてましたよ俺、命は大事って話でしょ?そんな真面目な俺から質問あるんすけどいいすっか?」

そんな俺の反応にクラスの奴らはまたいつものように俺がなにかしでかすかもしれないとニヤニヤし始める

「もちろんどうぞ」

「そんじゃありがたく。命は平等って話でしたけどそれならどうして命の値段が違うんですか?確かどっかの世界的なアイドルの1年分の寿命の査定結果1000万超えてたんでしょ?でもこの前寿命を1日だけ残して売っぱらったホームレス1万も行かなくて結局首吊って死んだってニュースでやってましたよ」

「それは…」

どうやら本当ににコピペした文章を読み上げていただけのようだ。教師は何も言えなくなっていた。こんな大人にはなりたくないとふと思った。

時は2076年、医学や科学は爆発的に進化し

人類は寿命さえも売買の道具にし始めた。

寿命の値段が人によって違う時点で命の価値は絶対に平等なんかじゃないと証明されてしまっている。

昔の人から見たらもはや魔法にしか見えないだろう。そこら中に寿命売買の店が立ち並び

不当な値段で寿命を買う悪徳な店も少なくない。なにせ基準が曖昧なのだ。今になってもその人の未来の可能性なんて予想できない。だから過去の功績や今の社会などへの貢献度のみが判断基準となる。

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君の居ぬ間に @sayonars

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