魂を癒す言葉は、時に悪魔を生む
「ある所にウルトラ可愛い子役の女の子がおりました。女の子は何でも出来て完璧で綻びのない人生を送っていました。それはもう、未来が視える程に優秀で、性格も極上に素晴らしい子でした」
何を言っているんだコイツは。
語り始めたマリリは僕の疑いの眼差しを一切気にする様子が無い。
「それこそ退屈を覚えるほど何もかも上手く出来て……でも少しだけトラブルが起きてしまって。そんなある日、寝付けない夜にふとスマートフォンでラジオを聞くことにしました。そのラジオは何とも品がなくて、でもつい、聞いてしまって」
マリリはビルの外に見える景色を遠い目で眺める。
不思議とその表情は今までになく純粋で透明で、……不覚ながら少しだけ目を奪われた。
「そのなかでも、一つ、夜なのに声を出して笑ってしまうメールがありました。良く分からないくらい凄く笑ってしまって。これまでわたしはなんて綺麗に生きて来たんだろう、こんな意地が悪くて馬鹿げたメールで笑うくらいの人間なのにって。そうすると、今まで感じていた重い期待とか周囲との関係とかが全部どうでもよくなって」
それは、良い事なのだろうか。
「なんとなく、こう思いました。わたしも人を楽しませたいなって。与えられて受け取るだけじゃなくて、わたし自身から生まれたものを、与える側になりたいって。それから女の子の人生は楽しくなりました。だからずっと、憧れていました。あのメールの投稿者みたいになりたいって」
「パーソナリティじゃなくて?」
意外な展開につい話の腰を折ってしまう。
「うん。我ながら不思議だよね。で、ずっと旧マスプロ、現ふぐりという人のSNSを監視していたので、#マリリ祭りの投稿をしたときは驚いたよ、運命感じちゃった。ね、だから。わたしは貴方の力になる。いやー世間ってほんと狭いよねー」
「あ、うん。ありがとう」
なんだか雰囲気的には、僕みたいな人間のたった一つのメールが誰かに影響を与える事が出来たなんて、と思わなくもないのだけど。
……監視?
「もうぜったい囲わないとって思って、過去のSNSの投稿文から都内に住んでいる学生だっていうのは分かってたし、お祭りとか花火の画像から何となくの住んでいる場所も知ってたからそろそろ会いに行っちゃおっかな☆って考えてたところだったんだから。もうすぐに連絡とったし、返信来た時はつい叫んじゃったんだからねっ」
この女はやばい。
思い込みも凄い。
ともかくSNSに近所の情報とか書き込むのは気を付けないと。というか今からでも遅くないからやっぱり逃げ
「さあ! アヤノン、将来の義妹を助けに行こう!」
そうして。
僕とマリリの企画が走り出した。
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