第94話 四天王と部隊編成

 久々にダンジョンの自室で目を覚ました。


 結構留守にしていたが、ゴブリン達が掃除をしてくれていたのだろう。

 綺麗になっているし、ベッドメイクも完璧だ。

 天気のいい日には干してくれていたのだろう。布団もふかふかだった。


 しかもダンジョンを拡張しているようだ。

 基本的にゴブリン達の住む部屋が増えたくらいだが、今は地下へ掘り進めているともバウルは言っていたな。父親になったから張り切っているのかもしれない。


 おっと、今日はこれから軍議が開かれる。

 早く行かないと。




 ダンジョンの一室に全員が集まった。

 ここもゴブリン達の拡張が施されているようで、以前より広い。

 円卓も大きくなって椅子も増えたようだ。


 でも、多くね?

 いない人もいるけどここにいる皆は全員四天王だ。

 たぶんオリファスも入ってくる。これ以上増やしたくないんだけどな。


 そもそもどれだけいるのかよく分かってない。

 たぶんだが、ヴォルト、フランさん、バウル、聖剣、アルファ、ジェラルドさん、メイガスさん、妹さん、メリル、パンドラ、カゲツ、バサラさん、ミナツキ、アラン、テンジクだと思う。十五人……だよな? もう四十人まで集めるか。


「皆さん、これから魔国の四天王を倒すための軍議を始めます」


 アウロラさんがそう言って円卓に紙を広げた。

 何かの地図かと思ったらクロス魔王軍の組織図だ。


 当然というかなんというか、俺がトップにいて、その直下が軍師アウロラさん。

 そしてその下に四天王達が並んでいる。

 ただ、同じ四天王でもリーダーがいて、その下に四天王がいる場合もあるようだ。

 俺は知らないんだけど、いつの間にこんな状況に?


「ですが、新しい四天王が増えましたので、まず組織がどうなっているのかを確認してもらいます」

「アウロラさん、部隊の配属っていつ決まったんですか?」

「昨日の宴会で決めました」

「……お酒を飲んでましたよね?」

「こういうのは勢いです。揉めたくないので酔わせて決めました」


 これも軍師の技なのだろうか。

 確かにこんなことで揉めたくないから別にいいけど。


「では、簡単に各部隊の状況を説明します。まず、フラン率いる闇百合近衛騎士隊。もともと、ルヴィ、サフィア、シトリーがいましたが、昨日、正式にアドニアが加入しました。騎士じゃなきゃヤダと駄々をこねていたのでねじ込みました」

「後方支援みたいなものだけど、戦えないわけじゃないから期待してくれていいよ」


 おお、フランさんがかっこいい。装備は受付嬢だけど。


 そしてアドニア……教会所属だった聖騎士アドニアか。

 ちょっと残念な女騎士だがフランさんがいるなら相当強くなる。

 ホーリースラッシュがあるし、闇百合親衛隊はかなり強くなっただろう。


「ところでクロスはアドニアに何かしたのかい?」

「え?」

「ここに来てからいつかクロスを倒すって言ってるんだけどさ」

「ああ、教会を襲撃した時にちょっと。もしかしたら、かなり」


 可哀想になるくらいボコボコにしちゃったからな。

 敵意はなかったけど、昨日の宴会でもじっと見つめられていたし。

 あとで東国のお土産でもあげよう。


「次は魔王軍突撃部隊ですが、こちらはヴォルトさんが隊長です。配下にアランさん、カゲツさん、テンジクさんが加わります」

「アランだ。クロス魔王軍では新参者だがよろしく頼む」

「俺はカゲツだ。戦いならいつでも受けるぞ!」

「テンジクでござる。どんな敵でも斬って見せるでござるよ」


 ヴォルトは頷くと不敵な笑みを浮かべる。


「俺たちの部隊は単純明快だ。強い奴のところへ突撃して敵を倒す。それだけだ」


 ヴォルトの言葉にアラン達が頷く。

 君たちに作戦とか無理そうだからな。派手に暴れてくれれば十分だ。

 ただ、テンジクだけはたまに借りよう。戦場なら諸行無常は使い勝手がいい。


「次、マスコット部隊はアルファさんが隊長ですね。ここにはベータさん、ガンマさん、アラクネさん、そして護衛としてカガミさんがいます。全部で五人ですね」

「私はマスコット部隊の隊長アルファ。皆のサポートは私達にお任せ」


 オメガブーストも使えるし、アラクネとカガミさんで攻めも守りも強力になった。

 カガミさんは四天王じゃないから軍議には参加しておらず、アラクネたちとギルドの建物で待機中だ。仲もいいし、上手くやっていけるだろう。


「次に魔物部隊。ゴブリンのバウルさんが率いるゴブリン部隊ですね」

「バウルです。主に陽動が得意な部隊ですので何かあれば言ってくだい」


 なんだか渋い。俺より威厳があるような気がする。これも父親になったからかな?

 とくにゴブリンだからと言って毛嫌いする奴がいないのはありがたい。

 ちょっと心配だったけど、これなら安心だ。


 そしてバウルたちは結構強い。バランスがいいというか、突撃もできるし、弓矢や魔法で遠距離攻撃もできる。ヴォルトのところと違って連携が強い部隊だな。なんでもできるというのは戦場だと強いよな。


「つぎは精霊部隊。サンディアさんが聖剣と精霊を使って戦う部隊です」

「ヴォルト兄さんの妹でサンディアです! 何をする部隊なのかは決まってないけど、機動力はあると思います!」

「私は聖剣! 妹ちゃんの護衛はお任せよ!」

「わんわん!」


 一気に騒がしい。

 部隊とは言っても実質サンディア一人だけだから使い道が難しいんだよな。

 聖剣も持ってるし訓練もしていたようだから強いことは強いんだけど。

 それに聖剣と一緒だからムードメーカー的なところはあるかもしれない。

 ……ちょっと騒がしいけど、目立つという意味では陽動もありかな。


「次は魔導部隊ですね。メイガスさんが隊長でスカーレットさんが配下にいます。ここに元教皇のオリファスが入る予定なのですが保留状態です」

「メイガスよー。軍隊相手ならお姉さんにお任せね!」


 ウチの主力で間違いない。

 正直、メイガスさん一人でなんとでもなりそうだが、四天王相手だと厳しいかもしれない。やっぱり四天王は俺がやるしかないな。課金スキルなら相手がどんな罠を張っててもなんとかできるはずだ。


「次は部隊というよりも財務管理です。メリルさんがクロス魔王軍のお金を管理して、パンドラさんはその護衛ですね」

「メリルです。お金のことならなんでも相談してください」

「私はパンドラ。メイドを極めし者。護衛から暗殺までなんでもできます」


 これも後方支援みたいなものかな。

 色々とお金を稼いでアーティファクトを仕入れているみたいだし、戦力の底上げをしてくれている大事な役目だ。パンドラは兵器だけど、それを活用するのはちょっと不安だ。メリルの護衛をするのが一番だろう。


「それと遠隔での参加ですが、魔国の北部にいる北方司令官ジェラルドさんです」

「戦力が増えたようで何より。こちらは魔国での集団戦が主だが、内政的なことができる人材を募集中だ。我こそはという者がおったらすぐにでも来てくれ」


 テンジクがうずうずしている感じだ。

 でも、ああいう集団戦でテンジクの攻撃は活かせない。

 悪いけど、しばらく会いに行くのはなしだな。


 それに内政か。

 シミュレーションゲームなら内政が高い人を送りたいけど、誰かいるかね?


「そしてもう一人、東国で鬼を率いて戦ってくれる東国司令官のバサラさんです」

「バサラだ。戦うならいついかなる時でも駆けつけよう」

「それと兵站部隊を率いているバサラさんのご息女、ミナツキさんです」

「若輩者ですが、よろしくお願いいたします」


 一応これでクロス魔王軍の組織としては全部かな。

 アマリリスさんとかグレッグに関しては今のところ保留状態だ。

 教会メンバーで決まったのはアドニアくらいだろう。


 一度全員と話さないとな。

 それはそれとして、軍議はこれからが本番だ。


 戦力はそれなりにある。

 確実に勝てるとは言わないが、四天王相手じゃなければまず負けない。

 後は魔国をどこから攻めるかという話だ。


「アウロラさん、部隊に関しては大体分かりました。戦力的には十分だと思うのですが、どこを攻めるか聞かせてもらってもいいですか?」


 昨日、話をしようと思ったら、軍議で説明するとのことだった。

 ヴァーミリオンはないはずので、南のシェラか東のアギのどちらかだと思う。

 どちらだろう?


「では、まず結果から言います」


 全員がアウロラさんの方を見る。


「魔国の南部、森林地帯を治めているシェラを倒します」


 理由はこれから説明があるんだろう……メリルが身を乗り出しているな。

 メリルの両親はシェラが作った魔物寄せの香が原因で亡くなった。

 やったのは叔父のキールだが、香を売ったシェラも許せないのだろう。


 アウロラさんのことだ。

 メリルに対する同情ではなく、ちゃんとした理由があるはず。

 まずはそれを聞こうか。

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