閑話 別視点、誘惑

不知火恋視点


 つまらない。今までは誰かを魔法で助けるのが気持ちよかったはずなのに、今はめんどくさくなってやらなくなった。

 彼氏も最近は少し態度が冷たい。あぁ、私は不幸だ。現状を楽しめないなんて、なんて私は不幸なんだろう。そう思っていたはずなのに


「じゃじゃーん!これが私の彼氏よ!」


「初めまして、飯田尚人と言います。よろしく。」


 今日は親友踏み台とダブルデートだったはずなのに、彼氏クズが入院したせいで私だけ彼氏がいないみたい。

 あぁ、あんなクズが彼氏だなんて私はなんてかわいそうなの。


「こちらこそ初めまして、不知火恋と言います。よろしくお願いします。」


 そもそも、なんで顔面偏差値がこの程度の奴にこんなイケメン彼氏が出きるんだろう。あぁ、不公平だ。

 

「どうよ、かっこいいでしょ!」


「ははは、彼女にそう言われて俺も嬉しいよ。」


 あぁ、イラつく。あんたは私の彼氏の話を聞いて羨ましがってればいいんだよ。腕なんか組みやがって、私への当て付けのつもりなのかよ、親友踏み台のくせに。


 許さない。


 許さない。許さない。


 お前は幸せそうな顔をしちゃいけないんだよ。羨め、渇望しろ、満たされるな!


「私もそんなイケメンな彼氏がいて羨ましいな」


 こいつは許さない。誰が世界を救ってやってると思ってるんだよ。


 そうだ、私は世界を救ってるんだ。ちょっとぐらい自分のために使っても良いよね。


<堕ちろ>


 その瞬間、私以外の意識が落ちた。


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