第8話「ケルベロスに続いて現れたのは……。」

―――北西の森への道中


 徒歩で、北西の森へ向かいながら、エレナとの会話は続く。


「そういえば、セバスさぁん、称号持ちなんですかぁ!?すっごぉ~いっ!!」


「あぁ、そうみたい。」


「ワタシぃ、初めてお会いしましたぁ、称号持ちの方とぉ♪天職は何されているんですかぁ??」


 ……昔、一度だけ参加したことのある合コンの光景がフラッシュバックし、エレナの声が、あざとめに脳内変換される。


「一応、ヒーラーをしておりまして。」


『一応、医者をしておりまして。』みたいなノリで答えてみる。


「えぇ~っ、そうなんですねぇ!実は、わたしもぉ、ヒーラーなんですぅぅ!」


「じゃあ、ヒールはお得意で?」


『じゃあ、料理はお得意で?』みたいなノリで聞いてみる。


「……はい。だってワタシ、ヒーラーですから。」


 そりゃ、そうでしょみたいな顔をされ、合コンは終了する。

 ただ、実際のところ、ヒールという名の怪奇光線しか使えない自分にとっては、羨ましくもあるのだ。そんな中、エレナは、至極真っ当な質問を自分にぶつけてくる。


「でも、セバスさん、ヒーラーってことは、どうやってケルベロスを退治するんですか?」


 ……当然の疑問である。それについては、自分も思うところはあった。ロパンドにいる間は、大鎌様の使用を避けて、出来る限り無手で対応しようと考えている。これ以上の厄介事はごめんだからだ。


「オレ、ヒーラーだけど、格闘技もやっててさ。結構、強いんだ。グリーズを悶絶させちゃうくらい。」


 断じて嘘は云っていない。なんせ自分は、わんぱく空手の黒帯、免許皆伝である。


「えっ、あのグリーズを素手でですか!?……すごいです。」


「それも昔(神官)の話だぜぇー。今(大神官)やれば、悶絶どころの騒ぎじゃ済まないはずさ!」


 ちょっと図に乗ってみた。


「それに、心配しないで。オレには、“とっておき”があるから。」


 ……ミゼルぴょんを倒して覚えた一段階上の怪奇光線ヒールのことである。まだ、エレナも自分の実力に対しては、半信半疑だろう。今はこれ以上、心配を掛けたくはない。

 少し話をそらして、別の話題を振る。


「そういえばさ、神殿みたいなところに行けば、天職って変えられるの??」


 エレナは再び驚いた表情を浮かべる。


「天職は変えられませんよ。生まれた時に天から賜るものですし……。」


 このことは流石に、この世界の常識みたいだ。


「ごめんね、本当に何も知らなくて……。」


 エレナは微笑み、優しく説明をしてくれる。


「いえ。天職は変えられないので、例えば、セイバーの天職を持っている人でも、実際には商人をされていることもありますよ。」


 とても分かり易い例えだ。ただ、この世界には、ダ〇マ神殿が存在しないことを知り、ちょっと残念な気持ちになる。……そんなこんな話をしているうちに、北西の森が見えてきた。




―――北西の森入口


ガルルルルぅ!!


 森の中へ入ると、いきなりケルベロスのお出ましだ。


(もう、勘弁してくれよぉ。。)


 朝から歩きっぱなしなのに、休憩する隙さえ与えてはくれない。


(てか、この世界の魔獣さん達、喧嘩っ早過ぎない??)


 ただ、そんなことを愚痴っている暇などはない。マズいことに、三頭を持つ猛犬さんはエレナ目掛けて猪突猛進中だ。


「キャッ!!」


ドタドタドタドタドタドタッ……


「わんぱく空手奥義、超ウルトラスーパーミラクルハイパー三段蹴りっ!!」


ドカッ、ドコッ、バキィッ!!


 手加減なんて一切なしだ。それぞれの首を刎ね飛ばすつもりで足を振り切ると、ケルベロスは力なくその場に崩れ落ちた。


「大丈夫?ケガはない??」


「……はい、大丈夫です。」


 ただ、突然の出来事に、エレナは動揺を隠せない様子だ。


「とりあえず、コイツをシメたらミッション完了?」


「はい、そうです。助けてくれて、ありがとうございます。」


 ケルベロスはもう虫の息だ。左右の二頭は完全に意識がなく、やや当たりが浅かった真ん中の一頭だけが虚ろな目で、辛うじて、呼吸をしている。


 エレナは両耳を切り取るため、震える手でカバンの中からナイフを取り出す。


「貸して、オレがやるよ。」


「でも、いいんですか?雑務まで、お任せしてしまって。」


「もちろん。さっさと済ませて、こんな物騒な場所からはおさらばしよう。」


「はいっ。」


 まず、一頭目の両耳を切り落とす。


ザクッ、ザクッ……


 次は真ん中の二頭目だ……。


ザクッ……


 しかし、はやる気持ちからか、トドメを刺さずして耳を切り取ってしまい……、


ガルぅ~~~~っ!!!!


 ケルベロスの悲痛な叫びが、森中に響き渡る。

 そこへ……、


ノシ、ノシ、ノシ、ノシ、ノシ、ノシ……


 森の奥から何かやってくる、巨大な何かが……。そして、それはゆっくりと目の前に姿を現わす。


「キャッ、オーガっ!?」


 エレナは腰を抜かし、地面に尻もちをつく。体長5mはあろうかという巨大な人型の魔獣だ。自分の方へ、オーガが近づいてくるのが分かったので、一旦、ケルベロスから離れる。すると、オーガは、そのままケルベロスのもとへ向かい、大粒の涙と共に、物云わぬケルベロスを優しく抱き上げる。


(なるほど、ケルベロスはオーガの飼い犬だったのか……。)


 今、オーガが抱える胸の痛み、その気持ちは自分にも痛いほど分かる。もし、クー助(愛犬)が、ドッグランで、他の犬から教育的指導を受けている場面に遭遇したら、きっと、自分も同じ心境になっていることであろう。


 続けて、オーガは怒りの雄たけびを上げる。……まるで、目の前でクリ〇ンを殺され、ブチ切れるカ〇ロットのように。



ゴゲガゴゴッガゴーーー!!!!!グギーガーーーーツ!!!!!

(オレはおこったぞーーー!!!!!フ〇ーザーーーーツ!!!!!)



 畜生っ、幻聴まで聞こえてきやがる。。そして、当然、ガチオコプンプンの形相で、こちらへ向かってくる。


ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダンッ……!!


 この状況、戦いの構図としては、向こうがカカロ〇トで、こちらがフリ〇ザだ。でも、自分も主人公の座だけは、絶対に譲れない!!大神官になって新しく覚えた“とっておき”を使おう!


「か~、め~、は~、め~、波イヒ~ル!!」



ヴゥオーーーーーーっ!!



「…………!?」


 撃ったこちらがビックリするくらい、あの怪奇光線はパワーアップしていた。“かめはめ波イヒール”、またの名を“ハイヒール”。威力は既に、スペシ〇ム光線に匹敵するのではないか。今はとりあえず、“超怪奇光線”と名付けておこう。


 かめはめ波イヒールの直撃を受けたオーガは、もはや、その原型をとどめていない。ひょっとすると、オーガがスーパーサ〇ヤ人に覚醒していたのなら、かめはめ波イヒールにも耐えられていたのかもしれない……。ただ、オーガの見た目はどちらかと云うと、ナ〇パ寄りだ。恐らく、髪がなかったため変身できなかったのだろう。

 もし、“オーガ”の見た目が、あの範〇勇次郎だったらと思うとゾッとする……。スーパーサ〇ヤ人の範〇勇次郎、もはや、その響きだけで身の毛がよだつ……。天地がひっくり返ったところで、まるで勝てる気がしない。


 少し冷静になったところで、本日の自分を客観的に振り返ってみる。飼い犬を蹴り殺され、悲しみに暮れる飼い主。その飼い主を、『主人公の座は譲れない。』という全く身勝手な理由で惨殺する姿。その残虐非道な行いはまるで、


 ……宇宙の帝王、フ〇ーザ様だ。





※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


『映画 グラップラーボールZ 天上天下、勝つのはオレだ!!』


スーパーサイヤ人になった範馬勇次郎とブロリーの対決、

是非、劇場で観てみたいです!

どちらも負ける姿が想像できませんね笑


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