第3話

「私はどんなふうにして成仏したらいいのかしら?」


「幽霊になって彷徨っているのには理由がある筈だ僕の記憶と貴方の記憶で、解決しよう」


今なんとかできる話ではないのだから、過去を振り返るしかないのだな。

わたしは、目を閉じた。

ーーーー人生の走馬灯を見るために。



ーーーー四年前。私と彼が二人で暮らしていた頃まで、時は遡る。

黄色い花の咲く草原にいる。愉快に走り回る鳥と子供たちがいる。

 今日も彼はいつものように、私の隣にいる。


「結婚決まったね。おめでとう」

「どうも」

私は浮かない気持ちだった。決して結婚相手が悪いのではない。伴侶になる予定の相手は別格だとおもっている。身に纏うオーラの重さが他者と一線を画すのだった。ある意味、完璧な子なのかもしれない。


 しゃがみこみ、黄色い花を一本摘んだ。


「あまりいい匂いがしない花だね」と言った。「いい匂いがしないのは、完璧な花などないから当たり前のことよ。私達生き物は、創りものじゃないから完璧にはなれないの」


 そういえば。婚約者は程よく欠けた部分をもっていて、並相応に憎まれていた。まるで、この黄色い花。

「ばあちゃんのとこに行こうよ」

 彼は私の手をとる。少し湿っていた。


 私達には共通の幼馴染がいる。ソナ、という女の子だ。


黄色い花を見たせいかもしれないが、デジャヴュのように鮮明な記憶が頭に浮かんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る