大阪ユートピア 魔法少女になった私は悪いヤツをぶっ飛ばす

@oosakabs

第1話 来たぞ理想郷(エピローグ)

 理想郷そこは誰もが求め全人類にとっての理想であり、誰もが届かない場所。そしてその理想郷を求め人は今日も生きる。


 なにも理想郷というのファンタジー的なことを指しているだけではない、夕方の時間帯に放映される国民的なアニメで描かれる家庭、海外での生活、キラキラのキャンパスライフなど色々挙げられる。


 理想郷は要するに人生の目標であり、生活環境であると僕は定義する。別の言葉で言い換えるとすれば「夢」かな。


 理想郷って簡単に想像はできるし、実物自体は結構身近にあるように感じやすい。でもそこは遥かに遠いまたはあるのにないと感じてしまう。


 それ自体はなんもおかしなことはない一度は誰もが経験したはずだ。憧れの学校、職業、地位、家庭それに辿り着いたとき違和感を何かしら感じ、新たなものを望んだりして不安な気持ちになる。


 それさ、それが理想郷を遠くするでも悪いことじゃないむしろ良いことだと僕は思うよ、だって人は遠くなったらそこに辿り着こうとする強さがある。理想郷は遠いなら近づこうと、着いたならそこを広げようとそうやって進化して成長していくのが人である決して現状のモノに満足しようとしない。そうやってより良き人生にしようとする。


 ただし現状のままでいいと思ってはいけない。それは行動への言い訳となり進化を望むはずの人への障害となる。現状で良しとするならばその先はない。


 話を替えよう僕にとっての理想郷、まだ話てなかったなあえて言えば「帝国」と表現しよう。日本で第二の都市ここ大阪で人がうごめき続けている、そんなところでバケモノや狂人が暴れ社会を乱していくきっと人々は恐怖、絶望、混濁、発狂、とにかく僕にとって愉快なものになる。そして僕が支配、侵略してこの街の王様になる。


 まぁいいやこの辺話はまた今度じっくりしゃべるとするよ。話を変えようさっきバケモノについて一瞬挙げたね。それが話のキモさそれを解き放つ事前準備が完了した。今から計画の第二段階のこ始まりさ、ソイツを暴れさせ社会を壊させこのまま大きな邪魔がいなければ僕の理想郷は完成さ。

 

 ただ厄介ごとがある。魔法少女?みたいなヤツが計画を邪魔していくんだ。気にするべき障害ではない精々石ころ程度の存在、いつでも蹴っ飛ばして軌道を修正できる。ただ目障りで一応注意を払わなければならない君たちにも邪魔具合が理解できるかな。


 オトコはそうやって邪悪な笑みを溢し、薄暗いとある雑居ビルのなかでこれからのことを想像しこれからの未来への大きな期待をして机のうえに足をのせて一人で大きく笑う。

「本当に楽しみだ」


梅田駅 


少女はこれから友人との約束がある。待ち合わせ場所は大型液晶のビッグマンがシンボルになっている馴染みのあの場所、集合時間のおよそ5分前には到着した。少女はこの春に高校進学する為に引っ越して間もない本来は集合の1時間前には着いて喫茶店や駅地下で何かしら見て回るつもりだったが、道に迷い思うようにことはいかずこの時間になった。


 どうせ迷うからと早めに出たが実際に歩き迷った、自分の先を視た行動への関心が半分、俗に梅田地下ダンジョンと呼ばれることへの納得と混乱が半分。


 地下街なので当然少し薄暗い、周りには自分と同じ様に待ち合わせをしている人や乗り換えをする人でごった返しになっている。北関東の方から大阪に来た少女にはこの光景は少し恐怖の対象でもあり、同時に常に憧れていたものの実物への感動の対象でもあった。


 少女は大阪ではある意味目立つ格好をしているといえる。鞄は遊びに出かけるには大きすぎるくらいで、麦わら帽子を被り、白いワンピースを着ている童顔の少女。


 約束の時間になり辺りをキョロキョロ見渡していると友人の千夏と目が合い凄いスピードで駆け寄り目の前にやってきて声をかけてきた。


「すまんな。遅れてしもったは、椿」


「全然待ってないよ。むしろ私が本来はちょっと早すぎたくらい。」


「何それ、本来は早すぎッて」


「ここで迷子になっちゃって、本当は色々ここでするつもりだったんだけど」


「そういうことならウチが案内するから」


 他愛のない話をしながら共に歩き出していった。部活をどうするか、中学校時代のこと、好きなアーティストについて。


 千夏は私にとってここ大阪で出来た初めての友人。入学式の日から席も近く積極的に話かけてくれて趣味や趣向が似ていることもありすぐに意気投合した。冗談をかなり多様し、思ったことはつい口に出してしまう。でもとにかく陽気ですぐに誰とも仲良くなれるカッコイイ人。


 髪は金色に染め上げ、パーマをかけてバッチリ化粧もしている、見た目の雰囲気は大学生という感じ、背丈が高いのとメイクをバッチリこなせてるからそう思うのか、私自身が周りが山とぼちぼちと家しかない所にいたからファッションとかにはかなり疎いからそう思い込んでいるのかもしれない。


 今日はまだ始まって1週間しか経ってないのに大阪を案内するといって遊びに出かけている。梅田周辺を午前中に午後は道頓堀を案内してくれるとのこと。どのようなものが広がっているのか今からでも興奮が収まらない。


 そのまま少し歩き最初の目的地についた梅田駅周辺の一つの象徴とも言える。赤い観覧車。なんといってもここの特徴はビルの上に乗っかているところであり、私は観覧車に乗るのが大好きでテレビで視て、いつしか行ってみたいということでここに行きたいと千夏に提案した場所。


 観覧車に乗り景色として見えるのは少女が昔から憧れていた大阪のビル群、眼下に広がるのは大阪の中心街で人々が小さくみえる、ついさっきまでは体の全体がわからなかった人が全体で捉えられる、点として。ようやく大阪に来たということを少しだけ実感した。


 観覧車に乗りながら窓に張り付き回りをジロジロ見渡していた私が気になったのか、千夏は大笑いしながら私をみる。


「はしゃぎすぎだって、親戚の小学生をみてるみたい」


 千夏の一言が私は我にふりかえ、頬を赤らめ問う。


「そんなに騒いでいた?」


「せやで」


「カエルが壁に張り付いてるみたいな感じ、けったいな子だとおもた」


「何それひど」


 お互いに笑いながら、大阪の景色を見たりしているうちにおよそ10分ほど経過して観覧車から降り、御堂筋線のホームの方へと歩き出していく。


 今度は千夏がいたから迷うことはなかった。梅田駅の周辺もいくつか案内してくれて一つ一つ見る新しいモノに驚くことが多い、噂に聞いていたが本当だったエスカレーターは右に寄り、足早に移動をする人々、そんな光景を目にしますます実感が湧く大阪という街に来たことが。


道頓堀


 着いて改めて思うのは大阪にちゃんと来たという不思議な実感。大阪駅、梅田駅も大阪といえる街でもここは一つ次元が違う、テレビの影響だろうかそれとも別の要因があるのか。周りを見渡せば観光客や外国人らしき人物が多くいる、人による影響ではない人ならば梅田にいた時の方がよっぽど大阪人がいたと思う。大阪に対するイメージが人ではなくものだったのか、どうでもいい感情かもしれない、とにかく不思議な気持ちになった。


 とりあえず着いた私たちは関西風の本場のたこ焼きを食べた。ソースの甘味、外のカリッと感やまんまるになっている生地,中のたこが関東のものより舌で感じることができる。でも私は関東風のものが好きだ。生地全体のフワフワ感が私の口には会う気がした。


 昼食をたこ焼きの立ち食いで済ませ。再び歩き道頓堀のメインスポットを観光した、巨大オブジェクトや大きな立て看板、通天閣も見た、最後に名物の一つである縦型の観覧車に乗ることにした。

 

 こっちの観覧車はこの独特で歪な形をしている、黄色で縁取られ激安価格でお馴染みのチェーて店に併設されている。乗ってみて思ったのは景色を楽しむものよりアトラクションとしての要素が強いこと。思っていたのと違う。


「なんや今度はずいぶんおとなしいな」


私が道頓堀についてからの様子に違和感を感じたのか気にかけてきた千夏、私の顔はその時幼稚園の子供がする不機嫌でだらしないヤツそのものだったのだろう。


「ううん 何でもない」


「ならさっきみたいにとびきりの笑顔でいかん」


 何もかも見透かせられていると感じた。でもそのうえで千夏は私を楽しませようと声を掛けてくれる。余計な一言は言わずただ歯をイって見せ笑顔で私に気をつかう。


「そうだね笑顔でいないとだよね こんな態度でごめん」


 彼女の一言と態度で私は態度を改めて自分のここに着いてからの態度や考え方を恥じた。だが同時に違和感は確信に変わってきているのも察した。大阪へのイメージ


 彼女は本当にテレビからの情報しかまともにもっていないのであろう。恐らくイメージは梅田、道頓堀、タイガース、USJ、関西弁こんなものだ。つまり知らない、あるのはメディアによる遠からず近くはない虚構。それが自分の価値観とのズレを生じさせる、彼女が選んだルートが悪いのもあるかもしれない、でも現に今は偽物をかみしめていると感じる。


 その後もう一度道頓堀周辺を歩き出した。少し歩き、電気街である日本橋、地下街が一つの商店街かの様になっている心斎橋へと。そこでは奇抜な人、社会人として生きる大阪人、黄色の帽子を被りアピールする。


 それらの街は自分はあまり知らなかったが、そこでは大阪を感じることができた気がする。明確な違いは理解できなかったが、そこにある。そしてそれを今後何なのかと見つけるのが今後の楽しみだと。


「どうや、この街は?」


 ふいに尋ねてくる。


「なんて言ったらいいんだろう 大阪ってちょっと行ったら全然違う雰囲気になるんだけど、でもここは大阪だって分かるのが不思議」


 変なことをまた言ってる自覚はある、だが口から自然とその言葉を口にする。


「それは大阪は人々が大きく繋がっているからな」

「みんなだいたいタイガースが好きで気前よくてオモロイ人でいっぱいでここがウチラの街って認識してるから」


 そう語る千夏の姿は大きく見えた。でも彼女からすれば当たり前の考えで何も思わず口にする。しみじみとした口調でも言葉の一つ一つに力がある。


「そうだ今度の日曜日はタイガース応援しに行こう」

関西人はしゃべるのがすきだとはよく言ったものだ


 時刻はもう夕方、そろそろ帰るか迷う時間。さっきまでの気持ちからは一転してまだまだ遊びたい気持ちが強くなる私。でも千夏の方は逆に帰ろうとソワソワする。


 この時の私は無知だった。そしてヤツが現れて私の千夏のあの子の大阪の運命が大きく変わる、いや運命だから最初からこうだったのかも。


 迫りくることを何も知らず遊んでいた私。再度梅田に戻り事件が起き私の物語が幕をあける。春風の冷たさと力強さはコレを予感していた。


 


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