悪役貴族に転生したけど魔術が楽しすぎて正直それどころじゃない~固有魔術を創りまくっていたらいつの間にか次期魔王になりそうな件~
水本隼乃亮
第1話 これが噂の悪役貴族転生
異世界転生。
それは、今や誰もが知るラノベやアニメの人気なジャンルだろう。
最早説明する必要もないだろうが、何らかの理由で死んでしまった主人公が、魔法や魔術が存在する中世ヨーロッパ風の世界に転生してなんやかんやする、そういった話だ。
特に最近では、ゲームや小説の悪役に転生して死の運命を回避するためにあくせくする『悪役貴族モノ』が流行っている。
かくいう俺も異世界転生モノは大好きだし、『悪役貴族モノ』もたくさん読んでいる。
……なんで急にそんな話をしたかって?
そうだな……端的に言うなら。
――今の俺が
▼▼▼▼
「これ、フリードリヒ……だよな?」
俺は鏡に映る自分の姿を見て、呆然と呟く。
鏡に映る幼い男。それは明らかに平均的日本人である俺の顔とは違った。
銀色の髪に、赤い瞳。こめかみから生える悪魔のようなツノ。
整ってはいるものの、性格の悪そうな悪人面。
俺はその顔に見覚えがあった。
『アリナシアの使徒』というRPGに登場する、分かりやすい悪役貴族にして中ボス、『フリードリヒ・リグル・アスモダイ』だ。
作中では、自分が貴族であることにプライドを持っていて、平民出身の主人公を馬鹿にし、時には暴力をふっかけ、果てには主人公といい感じになったヒロインを寝取ろうとする誰がどう見ても嫌な奴である。
「もしかして俺、フリードリヒになったのか……!?」
異世界転生。
そんな言葉が頭に浮かんだ。
ラノベやアニメで楽しみまくったジャンルだが、まさか自分がそれに巻き込まれてしまうとは。
「ってことは俺……死んだのか」
異世界ものの主人公は、たいてい現実世界で死んでしまって転生するってのが常識だ。
それなら、現実世界でサラリーマンしてたごく一般人の俺は死んでしまったと言うことになる。
「中間管理職……大変だったもんなぁ……」
鏡に映るフリードリヒが遠い目をする。
課長って肩書は大したもんだが、やることと言えば部下の教育と上司の無茶振りに応えることだ。
いつ倒れてもおかしくないと笑ってたもんだが、まさか死んじまうとは。
「いや、今はこの状況について考えないと」
死んでしまったことにショックが無いと言えば嘘にはなるが、俺の転生先は
『アリナシアの使徒』の舞台となるのは、中立国ホーラ王国に位置する『カドニック魔術学院』だ。
主人公たちはそこで魔術を学びつつ、魔神復活を企む秘密結社と戦い、いつしか大陸全てを巻き込む大戦に身を投じる。
現実世界で言う人間――人族の他にも獣人族や魔族(ちなみにフリードリヒの種族も魔族)や
そして、魔神の復活を企む秘密結社の長が、このゲームのラスボスにして、なんとフリードリヒの父親、アスモダイ侯爵なのである。
つまり俺は悪役貴族であると同時に、ラスボスの息子に転生してしまったのだ。
「難易度高くね?」
俺はつい項垂れてしまう。
ゲーム中盤、『カドニック魔術学院』の卒業試験で、主人公はフリードリヒと戦うことになる。ここで負けてしまうとゲームオーバーなので、勿論シナリオの都合上フリードリヒは必ず負けてしまうのだが、平民に負けたことでアスモダイ侯爵はフリードリヒに失望し、洗脳して暴走させ主人公たちにけしかけるのだ。
その時のフリードリヒには最早自我がなく、自らの父親によって鉄砲玉にされる哀れな姿を見せるのだが、いかんせんそれまでの悪行が目に余り、プレイヤーにはあまり同情されていない。
「どうすれば……どうすればそんな目に遭わなくてすむ……?」
フリードリヒのあの哀れな結末の分岐点は、おそらく卒業試験で主人公に負けたことだろう。
貴族の血を重んじ、平民を完全に下に見ているアスモダイ侯爵からすれば自分の息子がそんな存在に負けたことが信じられなかった。
その結果フリードリヒに失望し、彼を鉄砲玉のように扱ったのだ。
つまり、俺がやることは。
「卒業試験で、主人公に勝つ……!」
それしかない。
作中でも一、二位を争うパラメーターを誇る主人公だが、泣き言を言っている場合ではない。
「このフリードリヒ……結構若いか?」
鏡に映るフリードリヒは俺の記憶よりも随分と若いように見える。
つまり今はまだ、ゲーム開始前。カドニック魔術学院に入学する数年前なのだろう。
「決めたぞ。今から努力しまくって、あの主人公に絶対勝つんだ!」
実の父親に洗脳され自我を失い、魔力を暴走させた反動で血を流しながら死んでいくなんて絶対に嫌だ。
魔術学院に入学する前に最大限に努力し、俺は主人公を越える力を身につけるんだ!
……あとせっかく異世界に転生したんだから最強キャラになりたい。
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