二◯二四年

二◯二四年 一月

吾子が剥く蜜柑ひと房おすそわけ


冬の宵かなしみ暮れてなお長く


寒夜越えしいのちどうかひとつでも


たま風や吹くな吹くな今ばかりは


餅作るまだ食えぬ曾孫のために


凍晴や古里はまぼろしのよう


石油ストーブしまい込み孫迎え


鐘氷れ巻き戻し或る日のまま


ぽち袋かさ増して黄実千両


紅葉葉楓のとげ愛でし感受性


切り立ての前髪のもと影氷り


氷張る母の袖の垂涎かな


かなしみをかぞへるやうに氷閉ぢ


寒暁やデイサービスへご出勤


路地裏の蝉氷とぶ踊り子や


鬱念も穿ち穿て砕氷船


小指折りみっつ唱えしうつ田姫


ヘルスメーター着膨れと言い訳す


飯事でエプロンす母の襟巻き


寒茜ふたりぽっちのクラス会


冬夕焼の路地友とカレー喰い


天狼の遠吠えしずか疳の虫

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