二◯二三年 七月

短冊にクレヨンで引く願糸かな


万緑あおしと言ふ吾子の歯白し


銀河の泡沫なれや言語の舟


児が折りし鶴立てよ夏の御空に


ドロップ缶振りて聞く八月の


溽暑の午后児は冷凍みかん吸い


風船翔よ雲の峰の子まで


明るみへ明るみへ向日葵のよに


カラカラ児が歌い鳴らす氷水


二歳の子と掬いしゼリーむずかし


墓前にて日焼けしたりカサブランカ


ストローマグの麦茶煮立つ夏路や


手掴みで李喰む子の匙わびし


うみへいったよ潮焼けの笑み語る


少年時代は過ぎしカンカン帽


蝉時雨産まれて生きて死んでゆく


夕餉前ソフトビニルのバナナ切り


原爆忌末代灼ける悪意の火


八十年やとせなお止まぬか黒き天泣よ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る