第13話 ボスオーガもワンパン

扉を開けた。


「グォォォォォォォォ」

「バ……」


先輩がなにか言いかけたので先に俺は思いっきり地面を踏みつけてオーガを殴りに行った。


ガッ。


ビュン!


顔を殴りつけると顔を中心にオーガは縦に回転しながら壁に衝突した。


【キングレッドオーガを討伐しました】

【キングレッドオーガが消滅しました。アイテムがドロップしました】


落ちたドロップ品を回収する。


【キングレッドオーガの宝玉】


水晶のような玉のようなものだった。


それを手に乗せてコロコロしながら遊んでるとすぐに先輩が近寄ってきた。


「だから早いんだって!私またなんもしてないんだけど?!」


"こいつるりちーに何かさせる気なかっただろwww"

"るりちーまた一本取られて草"

"それにしても強いなーこのコラボ相手"


そんなコメントが読み上げられてた。


俺の方のコメント欄も盛り上がってた。

っていうか


"るりちーの配信から来ました。強いですね主"

"↑俺の方が強いけどな"

"↑お前はこれ以上のゴリラなのか(困惑)"


なんていうコメントが流れていた。

俺はそんなコメント欄を見ながら先輩の顔を見た。


「先輩、そろそろ中断ポイント行きましょうか」

「う、うん」


俺はボスフロアの奥に続くドアを開けた。


そこには螺旋階段があって、その横には【中断ポイント】の部屋があった。


その中に入っていこうとしたが先輩が言ってきた。


「ねねね。もっかい。もっかい登らない?私なんにもしてないんだけど?!」


"www"

"無駄だってるりちー。コラボ相手るりちーになんかさせるつもりないからw"


どうやら一部のリスナーは俺の考えに気付いてるらしい。


"でもこのコラボ相手のおかげてふだん見れないるりちーの1面見れたよなー。感謝だわ"

"いつもクールに解説系やってるのにねー。今日はほんとになにかしたくて必死になってる感じがかわいい"


俺はそんな先輩の言葉に答えた。


「もう終わりですよ」


そう言って別れの挨拶をして俺は配信を切った。


今度こそもうこれ以上登る気は無いという意思表示だ。


「俺もお腹減ってきたし、先輩もそうでしょ?」


聞くと先輩も配信を終わってた。


先に中断ポイントに入っていく先輩。

俺も追いかけた。


(しかし、綺麗な銀髪だよなー)


普段さすがにこんなド派手な髪色の人に会うことないから見とれちゃった。


「その髪色はなんか拘りあったりするんですか?」


聞いてみた。


「私が初めて敗退したのが【シルバーウルフ】っていう銀色の毛並みのモンスターだった。それで銀髪にしてる。この髪色見るとあの時の悔しさとか思い出せるから。それでがんばれる」


染めてるのには理由があるらしい。


ちなみに俺も戦ったことの無いモンスターだった。


「勝てたんですか?」


首を横に振る。


「あれから倒しに行ってないよ。トラウマになっちゃって。なんとか緊急離脱して帰ってきたって感じだったからさ」

「ふーん」


俺はその話を聞いて思った。


「先輩俺とそのモンスター倒しに行きませんか?」

「なんで?」

「強いんでしょ?そのシルバーウルフってやつ」

「強いよ。君でも勝てるかどうかは」

「俺こう見えてバトルジャンキーなんですよ」

「そうなんだ、意外ー」


頷いて続ける。


だんだん思い出してきていた。

俺がなんでダンジョンに潜り始めたのか。


「俺がダンジョンに潜ってた理由ってまだ倒したことの無いモンスターを見つけるためなんですよ。そして全てのモンスターを倒した時俺は最強になれる」


そのためにダンジョンに潜り出したのを思い出していた。

始まりは最強になりたい、そんな単純な思いだった。


「だからシルバーウルフも倒しにいく。先輩も負けたままなのいやでしょ?」

「うん。ムカムカするから行く。でも出現ダンジョンが変わるみたいで今どこにいるかは分かんない」


こうして俺たちの次の目的は決まった。


シルバーウルフの討伐。


でも、とりあえず居場所から探さないとだめか。



寮に帰ってくるとゴミ捨て場のところに例の先生がいたので、回らない寿司を奢ってもらってた。


「好きに食べてよ。奢りだからさ」


遠慮なく高い寿司を食わせてもらう。


「いやー見込んだ通りだったよ。一日でミノタウロス倒して戻ってくるなんてね」


俺は訂正する。


「その先のレッドオーガまで倒しましたよ」


そう言うと驚いてた。


「はっ?!まじで?!」


めちゃくちゃビビってた。

どうやら俺がミノタウロスだけを倒して戻ってくるものだと思ってたらしい。


そのときだった。


ピコン。

スマホに通知。


ロック画面を見てみると先輩からだった。


「誰から?」

「神原先輩」

「なんて?」

「卒業試験合格だってきましたよ」

「へぇ、すごいね。君。僕と神原さんが組んだ時の予想で二日がかりの作戦だったのに」


そう言ってる佐藤先生に聞いた。


「そういえばシルバーウルフって知ってます?」

「知ってるよ」

「どこにいるか知ってます?」

「うん。知ってる、ここにいるよ」

「ここって?」


そう聞くと佐藤先生はこう言った。


「あとでね」


食事を終えて俺は外に出た。


「こっちきて、白銀くん」


佐藤先生に誘われて俺は夜の白光学園にやってきた。


ジャラッ。


校門の鍵を取り出して開けてた。


そうして夜の学園の中に入っていった。


「実はさ。この学園ダンジョンがあるんだよね」

「学園の中に?」

「うん。僕しか知らないけどね」


そう言いながら佐藤先生は校舎の影にあった焼却炉の前にやってきた。


「今はもう使われてない焼却炉。ものは燃やせないよ」


焼却炉の周りは立ち入り禁止のコーンとかが立ってた。

その中に入ってく佐藤先生。


焼却炉の蓋を開けた。


ゴゴコゴ、重そうな蓋を退かすとその先には階段があった。


「これ、ダンジョン」

「へぇ、これが」


すごい。

焼却炉の中にダンジョンがあった。


「この中にシルバーウルフいるよ。しばらく前に来てみたらここを根城にしてた。君に神原さんのこと任せた時もこれを見に来ててさ」


「なんで放置してるんですか?」

「あ、あはは。恥ずかしながら勝てなくてさ。シルバーウルフに」


そう言って俺を見てきた佐藤先生。


「このダンジョンのことさ。他の人には秘密にしてて僕しか知らないんだよね。内密で倒してくれないかな?白銀くん。頼むよ」


それは俺の目の前で世界最強が俺に頼み事をしている瞬間だった。


「ちょうど今日土曜日でさ。明日休みじゃん?今からさっくりやってきてくれない?」

「でも、門限がありますよね?深夜なんて問答無用でアウトですよね?」


白光学園は門限なんかは割と厳しいっていう話は聞いたことあるけど。


特に最近は生徒がひとり行方不明になってるから更に厳しくなってるそうだ。


佐藤先生はこう言った。


「大人同伴の場合は適用されない。僕がいるじゃないか」


そう言うとこう続けてきた。


「シルバーウルフをやってくれたらこれから先門限以降の活動なんかも、頼まれたらついてくよ。夜のダンジョンとか行ってみたくない?」


俺は頷いた。


「そうですね。行ってみたい、夜のダンジョンは固有種が出たりしますからね」


俺はそいつらもぶん殴ってみたい!


その時だった。

坂上から連絡が入った。


坂上:やっと帰ってこれたよーダンジョンから。へろへろ。ねぇ、次は一緒に行かない?ダンジョン


そう声をかけられて俺は佐藤先生に聞いてみた。


「あとふたり連れてきたいんですけどいいですか?」

「ん?あ、いいよ。それくらいなら」


よし、坂上と神原先輩も連れてこよう。



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