第11話 もちろんワンパン
俺たちはミノタウロスの部屋に入った。
俺にとっては2度目の侵入で先輩にとっては最初の侵入。
ミノタウロスにとってはどうなんだろうね?
「ブモッ……(また来たこいつ)」
どうやら前の固体と記憶は共有してるようだ。
俺の顔を覚えてくれているらしい。
ブルブル。
アックスを握る手が震えていた。
"ビビってんじゃんミノタウロス"
"やばい雰囲気感じ取ってるんやろなぁ"
"実際シュヤちゃんはやばいからなぁ"
"しかも今回あのるりちーもいるしなぁ"
"るりちー今高校生の中で最強なんだっけ?"
そんなコメントがついていく中先輩は言った。
「仕掛けるタイミングは任せるよ。後輩に合わせるのは先輩の仕事だから、さ」
"るりちー先輩だもんねー。手加減してあげなよ"
"シュヤって配信者も相手がるりちーで良かったよな。他のやつだと振り回されるし、動き合わさなかったら怒るし"
"俺たちのるりちーは寛大だからなぁ"
読み上げによる声がここまで届いていた。
「ってわけ。先輩としてさ死んでも合わせるから好きに動いてくれていいよ」
「なるほど。それじゃ合わせるのは任せますよ」
タッ。
ブン!
「ブ……(悲鳴も出せない)」
【ミノタウロスを撃破しました】
【次の階層への扉が開きます】
扉が開いた。
俺は先輩の近くに戻って言う。
「あれ、先輩?サポートがなかったような気がするのは俺だけでしょうか?」
「えっ……?」
俺と開いた扉を交互に見る先輩。
先輩のリスナーも今の光景に反応を示し出した。
"なにいまの、何が起きた?"
"スローにしてやっと見えたわ。コラボ相手がダッシュしてミノタウロス倒してる"
"うわっ、ほんとだ"
"このコラボ相手やばすぎね?ミノタウロスって普通パーティ単位で戦う相手だろう?"
そこに俺のとこのリスナーがコメントしたらしい。
"シュヤちゃんパーティ組んだことないらしいからな"
"ずっとソロできてるから仲間なんて必要ねぇんだよ!"
"実際るりちーですら反応できてないの見るにやっぱシュヤちゃんやばいよな"
あんまり他の人のコメント欄で俺の事話されるのも良くないだろうし、先輩に言う。
「じゃ、そろそろ行きましょうか。俺もこの先は初めてのエリアなんですよ」
そう言って階段を歩き始めると聞いてくる先輩。
「この先は?ってどういうこと?」
「あれ?言ってなかったでしたっけ?」
首をひねってそう言いながら俺は続けた。
「俺ちょっと前にここのミノタウロス倒してますよ。だからここまでは来たことあります」
そう言うと先輩が目を見開いた。
「な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!!!!!!」
"2週目かよw"
"あ、ちょっと待て!今2週目ってことはあれか!"
"↑そういえばちょっと前に攻略されてたよな、ここ。その時も配信あったみたいだけど"
"ってことは、あの時配信してたって言われてる最強冒険者なのか?!この子は!"
"直ぐにアーカイブも消えたんだっけ?ほぼリアタイで見れなかったやつしか知らない伝説の配信、見たかったなー俺も"
そのときチラホラ先輩に触れるコメントが増えてきた。
"【悲報】るりちー。ガチの日本最強冒険者さんに偉そうに先輩面してしまう"
"偉そうなこと言っといて自分より後輩の方が圧倒的に強くて優秀だった時の気持ちってどんな感じなんだろ"
"やめたれwるりちー泣いちゃうw"
俺はそんな読み上げを聞きながら口を開く。
「先輩、俺は全部忘れるんで、気にしないでくださいね」
「う、うん。忘れて。私が君に偉そうに先輩面してたのもぜんぶ忘れて。あぁぁぁ!!!黒歴史できちゃったよぉ!」
そして、俺たちは新階層へと入っいく。
ここからは俺も本当に初見のエリアとなるわけだが。
俺はそれまでにあった中断ポイントを通り過ぎたのだが、先輩が聞いてきた。
「え、あの中断ポイント過ぎたよ」
「それが?」
「それが、って。私の卒業試験ここまでだよ?」
そう言って配信を終わった先輩。
「結果がどうあってもミノタウロスをパーティで倒せれば卒業試験は満点合格。もちろん私が何もしなくても合格。それがサポーターっていうロールの採点基準。そしてミノタウロスは倒してしまった。もうこれ以上進む意味ないよ私」
俺は口をゆがめて聞いた。
「まさかこれで帰るつもりですか?」
この人煽られたりするの苦手じゃないかなって思うのでそっち方面で攻めよう。
「この先に進む自信がない、とでも?」
顔が引きつった。
予想通りだった。
「い、いいよ?そこまで言うなら進んであげる」
その言葉を聞いて俺は再び歩くのを再開した。
先輩も配信を再開した。
読み上げソフトで向こうのコメントが聞こえてきた。
"どしたん?"
"なんで再開?卒業試験終わったんじゃないの?凄まじい速度で"
"てか、これ世界最強入れ替わるだろ。佐藤先生じゃあんなんできないもん"
"俺も最強ランキングに変動あったと思う。佐藤先生より明らかに強いよこのコラボ相手"
そこで先輩が口を開いた。
「私もめちゃくちゃ強いと思うよこの子。やばいよ普通に。私なんにもしてないもん」
"身動きひとつ取ってなかったのは笑ったwww"
"るりちー!次は頑張って!"
そんなコメントにこう返しているるりちーだった。
「うん。頑張る。応援しててね」
で俺は思った。
(次はどうやって先輩に何もさせずに倒そうかなー)
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