第26話
便利屋冒険者なるものの存在を知った僕は、プラスチックで作った我が家のプラスチック臭いを消す為に、その便利屋冒険者がいる冒険者ギルドに向かった。
一体どんな人なんだろう……と考えながら歩き続ける事10数分で、僕は冒険者ギルドに到着した。
道のりは宿屋で貰ったこの街の地図のお陰で知る事ができて助かったな。
かなり大きな建物だな……初めて来たけど、荒くれ者の冒険者に絡まれたりしないといいな。
そう祈りながら、ギルドの入口のドアをゆっくりと開く。
ギルドの中は広く、2〜3人冒険者達が椅子に座りながら話をしていたり、1人の冒険者が受付のような所で、何かの紙を制服を着た女性に見せてハンコを押してもらってたりしている……。
「中はこんな感じか……。」
さて、目的の便利屋冒険者さんを探すとするか。
でも、その人がどんな人かはあの奥さんから聞くのを忘れていた……名前も、男性なのか女性なのかも分からない……一体どこにいるのやら。
「小僧!見ねぇツラだな!冒険者志望か?」
その時、ドスの効いた声で僕に話しかけてくる人が……お、大きい……!
身長2mはあるんじゃないか?そう思えるぐらい大柄な男性だ!どうか、良い人でありますように〜……!
「あ、あの……探してる人がいて……。」
「どんなヤツだ?」
「べ、便利屋冒険者っていう人なんですけど……。」
「あぁハイメスか!それなら、あそこにいるガキみたいな身長の女が……イデッ!」
ハイメス……?その人が便利屋冒険者なのか?と思っていると、その人は傍にあった紙が沢山張られてるボードから紙を1つ取り、それを筒型に丸めて針のような物を吹き出した。
その吹き出した物が当たった男性は突然倒れてしまう……え……な、何をしたんだあの人は……!?
「ガキじゃない。もう18歳だ。いい加減子供扱いはやめろドトーレン。」
「テメェ……麻痺針なんか飛ばしやがって……ガキって言われたぐらいでこんな事しやがって!!麻痺が解けたら覚悟しろよ!!」
「じゃあもっと麻痺させる。」
「ギャー!!」
ハイメスさんはまた筒状にした紙から針を吹き出して、ドトーレンさんに攻撃する……麻痺針って言った?そんなものポンポン使っていい物なの……?
「テメーッ!医師免許も持ってないくせに麻酔じみたもん使いやがって!!」
「医師免許なら昨日取った。この麻痺針でお前に嫌がらせする為にな。」
「職権乱用じゃねーか!!タイホしろタイホ!!憲兵さーん!!ここにど悪党がいますよ〜!!」
「ふっ、ほざいてろ。」
ハイメスさんとドトーレンさんは、これが平常運転なのかは分からないけど、そんなやり取りをしている……。
でも、僕はハイメスさんに用があるので、恐る恐る彼女に声をかける。
「あ、あの……。」
「何だ?見せ物じゃないぞ?」
「そうだ、コイツお前に用があるんだとよ!」
「私に用?」
ハイメスさんはようやく僕の存在に気づいてくれた。ようやく本題に入れそうだ……。
銀色の髪に褐色の肌、衣服には各所に銀色の丸い装飾が施されている。
褐色の女性か……そう言えばプラモ同好会の磯田七飛(チーフェイ)君は褐色キャラが好きって言ってたな。
「貴方が便利屋冒険者だと聞いて、お願いしたい事があってここに来ました。」
「要件は何だ?言ってみろ。」
「それは……。」
僕はハイメスさんに要件を言い、その依頼を引き受けてくれた彼女は僕の家に来てくれた。
「クサッ……この異質な臭いは何だ……?嗅ぎ慣れてる獣臭の方がマシだな。」
「これはこの家特有の臭いと言うかなんと言うか……この家の臭いを落として欲しいんです。」
「……分かった。30分で終わる。依頼料は前払いだ。銀貨600枚、今渡せ。」
「は、はい……。」
僕の言葉を聞いたハイメスさんは、少し考えた後、臭いを落とす事は可能だと言う事と、依頼料は前払いである事を僕に言った。
なので、僕は財布から銀貨を100枚取り出し、それをハイメスさんに渡す。
「確かに受け取った。ではお見せしよう。私のスキルを……。」
な、何をするつもりだ……?と思いながら、僕はハイメスさんかスキルを使おうとする瞬間を見守っていた。
「デオドラント。」
そう唱え、両手を前に突き出するハイメスさん。
そうした瞬間、彼女の掌から数え切れない程の数のシャボン玉のようなものが溢れ出し、それが僕の家に纏わり付いていく。
そして僕の家がシャボン玉塗れになると、ハイメスさんは両手を下げて一息ついた。
「このシャボンが全て弾ければ、その時にはこの家の臭いは全て落ちているだろう。」
「本当ですか?ありがとうございます!」
僕はハイメスさんに感謝し、シャボン玉が割れる30分後を待ち続けた。
そしてハイメスさんがデオドラントを発動してから30分後、ついに僕の家に纏わり付いていたシャボン玉は一斉にパチパチと割れだし、10数秒後には全てのシャボン玉が割れて無くなっていた。
「……臭くない!臭いが消えてます!」
臭いが消えてるかどうか確かめる為に、家の臭いを嗅いだ僕は、臭いが消えている事の喜びから、思わずハイメスさんにそう言う。
「当然だ。私のスキルは伊達じゃないからな。」
「今日は本当にありがとうございました!」
「また困った事があったら、その時は私を頼れ。ギルドで待ってるぞ。」
ハイメスさんはそう言ってその場を去ろうとするけど……。
「待ってください!」
「なんだ?」
「僕は……この世界の人が冒険者として活躍してる所を1回しか見た事が無いのですが……貴方が冒険者として活躍してる所を見てみたいです!」
「なるほど……良いだろう。お前に危険が及ばないように安全なクエストで良ければ、私の活躍をとかと見てくれ。」
冒険者の活躍、それは僕にとってどうしても見てみたい物なのであった。
リサエルさんに危険な所には行くなと忠告はされたけど、やはり冒険者はどんな事をしているのかは気になる。
だから僕はハイメスさんにお願いしたんだ。冒険者の活躍を見せて欲しい、と。
そして学びたい。この世界の冒険者という物がどんな物なのかを。
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