第17話
腹に剣が突き刺さり、血が溢れる。
『我が王、同胞の怨念の鎮静化に成功させました』
『良くやった』
『……流石は我が王の審美眼にございます。私は己の身にこびりつく同胞の
『頼む。いずれ起こす』
『ありがたき幸せにございます』
だが、それでも僕の内側で暴れ、僕をぐちゃぐちゃに引き裂いていた悪魔たちの怨念が沈静化されたことで僕は自分の本調子を取り戻していた。
「……」
最後に残ったリーダー格の男を僕は機能するようになった魔眼を向け、その動きに注意を払う。
「……ッ!」
ウェルリンク公爵家。
圧倒的な大国であるアトラント王国の中でも有力者であるウェルリンク公爵家の邸宅に侵入してこられる侵入者たちが弱いはずがなく、そのリーダー格も同様。
「……」
一切の無駄のない動きで僕の方へと短剣を力強く握りしめながら迫ってくる。
「悪いが既に時間切れだ」
しかし、僕の実力は目の前の男を遥かに凌駕する。
相手の意識が寄っていた自分の握っている刀から手を離した僕は呆気にとられる侵入者の短剣を持つ右手を足で蹴り飛ばして脅威の一つを排除する。
そして、彼の顎に向かって腕を伸ばし、そのまま掴んで地面に叩きつける。
「……ぐぁ!?」
「おやすみなさい」
僕は地面へと倒れて彼に向かって蹴りを一つ。
彼が自殺せぬよう素早い一撃で意識を消し飛ばし、彼の体に込められていたありとあらゆる魔法を相殺する。
「ふぅー」
戦闘が終わったことを確認した僕は抗魔の悪魔の影響で緩んでしまった封印を再び硬く閉じ、完全に自分にのしかかかった負荷を抑え込む。
「……だ、大丈夫!?」
戦いが終わったことを確認して僕の方へと近寄ってきたマキナ様が剣の刺さった僕の体を見て、あわあわと慌てながら声を上げる。
「えぇ、問題ありませんよ」
僕はマキナ様の言葉に対して問題ないと返し、自分の腹に刺さった剣を抜き、そのまま傷口を炎で焼く。
悪魔の自然治癒力はかなり高い。
こんな雑な応急措置であっても三日もすれば完全に元の状態に戻ってくれる。
「だ、だ、だ、大丈夫でぇ!?」
「問題ないですよ。自分はかなり強いですからね……この程度じゃへこたれることはないですよ」
「そ、それなら良かった……けどぉ」
「自分は問題ないですよ。マキナ様は大丈夫でしたか?」
「う、うん……ロキが、守ってくれたから」
「それなら良かったです……それでは、屋敷の方に戻りましょうか。夜風が寒いですから」
「あ、ありがとね……わ、私も……傷。うぅ」
「えぇ、マキナ様が守れてよかったです。それでは戻りましょうか」
僕はマキナ様と共に屋敷の方へと月明かりの下で戻るのだった。
「……」
今回の一件は僕は自分の弱点を露呈させた。
まずは自分の中にいるカミアを起点とした悪魔たちの怨念による強烈なデバフ。
そして、もう一つは己が悪魔であり、人間社会からはなかなか受け入れがたい存在であるということだ。
僕はこれらを早急に解決する必要があるだろう……特に一つ目は。
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