久しぶりに遊びに行こう
「日用品と着替えは積んだ?」
「ん、だいじょぶ」
「食糧はオッケーかな?」
「いっぱい、あるー!」
「お土産は足りてそう?」
「これだけあれば充分よ」
「戸締り、よし」
「わうっ!」
「ハーネスの固定、よし」
「きゅるるっ!」
「じゃあ、出発しますか」
そんなこんなで、晩夏のある日。
僕らは、
ミントにまつわる騒動が起きた時、ジ・リズには随分と助けてもらった。そのお礼を込めてというのもあるが、なにより、
「みねおるく! じねす! いっぱいあそぶ!!」
子ドラゴンたちとまた会いたいミントと、
「きゅるるるるっ! きゅう!」
久しぶりに
「ぽち、すごいね! ぐいぐいってすすむ!」
「きゅるっ!」
満載にしたワゴンを苦もなく、むしろ張り切って
この子にとって、
「そういえば、
手綱を握るカレンが、思い出したように僕へ問う。
「留守中に肉を持ってこられたら、申し訳ない」
「それ、僕も思ったけど……なんかさっき、ショコラが遠吠えしてたんだよね。あれってひょっとして、あいつらへの合図なのかな」
「わうっ!」
「噂をすれば。見送りにきてくれたのか……?」
ぐるるる、と喉を鳴らす母猫。
子猫を連れておらず、ひとりだ。
「わん!」
ぐるるる。
ショコラがなにごとかを伝え、
話をしてるのだろうか……。
「僕らはしばらく留守にするよ。危なくなったら軒先は使っていいからな」
僕からも声をかけて手を振ると、
「伝わったのかな……ネコ科っていまいち、コミュニケーションが取れてるかの自信がないんだよね」
「ん、だいじょぶそうだった。……たぶん」
もちろん言葉が通じているはずもないが、一家揃って出かけている光景を見たのだ。帰宅の気配がするまで、家に誰もいないことは理解できるだろう。
「まあ、よかった。今回の外出はちょっと長くなりそうだしね」
旅程が片道三日なのに加え、一週間ほど滞在する予定だ。
「行って帰ったら、夏が終わってるかもしれないわねえ」
ワゴンの中で足を伸ばし、本を読みながら、母さんがのんびりと言う。
「森の中で、秋の味覚って採れるかな。果物とか」
「カレンなら詳しいんじゃないかしら。あなた、よく森の木を調べてるわよね?」
「ん。
「それは楽しみだ」
どれも、日本じゃ気軽にスーパーで買えないやつばかり。
ザクロはジュースがあったし、アケビはたまに並んでたけど、ヤマブドウなんかは僕も食べたことがないや。
「あ、果物で思い出した」
などと言っていると、ふとカレンがきょろきょろと周囲を見渡す。
「ん、間違いない、この辺……。スイ、代わって。ちょっと行ってくる」
そうして僕に手綱を預け、ひょいっとワゴンから飛び降りた。
「いや行ってくるって、どこに」
入れ替わりで御者台に腰掛けた僕は、彼女が去っていった方を見遣る。
やがて、数分の後。
しゅたっ、と——木を伝ってきたのだろう、上空からカレンが
「あ、かれん。おかえり!」
「ただいま、ミント。はいこれ」
ワゴンに乗るなり、そのひとつをひょいっと放る。絶妙なコントロールでミントの胸元に落ちたそれは、
「わあ、すもも!」
よく熟れた赤い果実だった。
「それ、採りに行ってたの?」
「ん、前から目をつけてた。思い出せてよかった」
言いながら僕に、それから母さんにも渡してくる。
「あら、ありがとう。よく残ってたわね」
「もう半分以上は虫とか鳥にやられてた」
「だったら運が良かったのね。帰る頃には全滅してたでしょうし」
母さんは本を脇に置き、服でごしごしとスモモを
「美味しい。味が濃いわ」
外ではミントもしゃくしゃくと、たぶん今年最後になるだろう夏の果実を味わっていた。口の周りも両手も果汁で汚しながら、夢中になって頬張る。
「うー! おいし! ぽちは、たべる?」
「きゅるっ……」
わずかに頭上を見上げてから、ついと目を逸らすポチ。
「たべない? しょこらは?」
「くーん」
ショコラも小首を傾げるのみ。
「ショコラもポチも、自分の分をミントにくれるって」
「いいの? むふー! ありがと、ぽち、しょこら」
まあ実際のところ、ふたりにとっては『食べ物じゃない』が正解なんだろう。
地球だと、スモモは犬に決して与えてはいけないもののひとつだ。ショコラは犬ではなく
「というかふたりとも、自分でちゃんと見分けがつけられるから偉いなあ」
「ん。でも私たちだけはずるいから、なにかあげよう」
「そうだね。……ショコラ!」
僕は荷物の中からドッグフードの箱を探し、何粒か取り出し、放る。
「わうっ!! はぐっ」
瞬時に反応したショコラは華麗にジャンプ。放物線を描くおやつを見事にぱくりとキャッチした。
「わあ。しょこら、じょーず!」
「ポチは……今は車を輓くのが楽しいみたいだね」
「きゅるるぅ」
「休憩の時にサラダかな」
「きゅるるっ!」
前人未到の『
「急がず行こう。久しぶりの旅行だしね」
木々に遮られて夏の陽射しは柔らかく、木陰に冷やされて風は爽やかだ。
僕は手綱を緩めつつ、カレンからもらったスモモを齧る。
よく熟れた実は甘く、皮目の酸っぱさと入り混じって、僕の頬を
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