クラス転移した俺のスキルが【マスター〇ーション】だった件

スイーツ阿修羅

第一膜 日給19億円!? 驚異の日雇いバイト編

一発目「俺のスキルが【マスター〇ーション】だった件」

★注意★

本作品は、下ネタとファンタジーを楽しむ15才以上の男子に向けた小説です。

 規約を越えない程度の”性描写”や”残酷な描写”、”暴力描写”が含まれます。

 以上をご理解の上、本作品をお楽しみ下さい!

★★




「やっぱり一位は浅尾和奈あさおかずなかー。アイツは可愛い過ぎるよなー。」


「彼氏とか居ないのかな?」 


「いやいや、お前ら分かってねぇなー。新崎直穂にいざきなおほが一番だろ、確かに身体の膨らみは少ないが、逆にそれがエロいんじゃねぇか! 幼児体型で真面目な顔しながら、案外むっつりスケベだと思うぜ!」


「お前の新崎にいざき好きは分かったよ。いいから早く告ればいいだろ。」


「そーだそーだ。」


「いや、それはお前らもだろ、告れよ。」





 雨の教室の中、体育授業の後、着替えの時間に教室内は男子だけの時間が訪れる。

 そんななか、男子たちは

 【クラスのエロい女ランキング】なるものを始めた。

 


「三位に真中まなかさんか、わかるぜ!

 あのクール顔で、責めるのも責められるのも良いよな。」


「分かるー!!」



(いいなぁ…)


 俺は、教室の隅で一人、体操着を着替えながら、男子たちの恋バナに耳を傾けた。

 

(あぁ、神よ…僕に友達の作り方を教えて下さい…)


 高校に入学して二か月、俺は未だに、友達というものを作れずにいた。

 人に話しかけるのが怖くなったのだ、中学のころは怖くなかったのに。

 どうして??


 まあいいさ、俺の友達は、ネットの世界にいるのだから。

 やっと昼休みが始まる、やっと彼女に会える…


 キーンコーンカーン


 昼休み開始のゴングと共に、俺はスマホを取り出して、昼休みの喧騒を遮るように、イヤホンで両耳を塞いだ。


(ふーっ、お待たせーー。

 昨日リアタイできなくて、ごめんねーー!

 録画アーカイブが、やっと見られたよー!)


 そしてスマホでYou○ubeを開くと、

 登録者140万人のメスガキ系Vtuber、【白菊ともか】のゲーム実況動画を見始めた。


 彼女の、「コンきくーー!!」という挨拶に

 俺も心の中で「コンきくーー!」応える。


「さぁ、来たわね愚民ども!

 アタシはVラッシュ所属!

 2期生の【白菊ともか】よ!

 ガチ恋くんも初見さんも、私のオトナの魅力に取り憑かれて、せいぜいゆっくりしていくのよ!

 さーて! 今回アタシが実況するのは、レオシックスの新作、「マナ・レジェンズ」っていうゲームよ!

 まあ、天才のアタシにかかれば! こんなゲーム簡単にクリア出来るから! お前らは、私の神プレイイングを見てなさい!!」


(うわぁ、ゲームグラフィック綺麗だなぁ…楽しそう)


「わわっ、嘘っ!、ちょっと何でよ!! 今避けてたじゃない!! ……タイミング遅いって ……はぁ!!?」


 ゲームの魅力に圧倒されつつ、ともかちゃんの面白い実況にクスっと笑わせられるのだ。

 この時間は至福の時間だ。

 残酷な現実から目を背けられる。




 キーンコーンカーンコーン……


 と、非情なチャイムの音で、俺の至福の時間は終わりを告げた。

 俺はイヤホンを外し、現実世界へと戻ってくる。


 ごく普通の、高校の教室である。

 雨の教室では、女子はとっくに戻ってきており、トランプや雑談をしていたようだ。



ーーー-



 昼休みが終わり、5限目の数学Aの授業が始まった。

 AかつBやら、少なくとも一つ、やら、

 数学というより国語の授業に思えてくる。

 俺は計算は嫌いじゃないが、数学Aは言葉ばかりで頭が痛くなってしまう。

 俺の前の席では男女二人が、楽しそうに分からない所を教え合っている。

 非常に羨ましい。

 

 

(……学校でイチャイチャしやがって)


 リア充達を見る度に、自分の惨めさにうんざりする。

 俺は他人が怖いのだ。

 嫌われるんじゃないか? 変に思われるんじゃないか? 

 って不安がどんどんと膨らんでいって、

 何も言葉が出てこない、上手く話せない。

 そんな自分が大嫌いだ…


 ああ…俺も異世界転生したいなぁ。

 異世界にいけば可愛い女の子がいて、ぼっちの俺に話しかけてくれるんだ。

 それで俺がチート魔法を使ったならば、皆に尊敬されて、女の子からもモテモテで……

 ああ、いいなぁ。

 俺も、ラノベや漫画の主人公になりたい……

 

 強く、そう願ったときだった。

 その時突然。

 


 前触れもなく、視界が真っ白に包まれた。


(なんだ??)


 じわぁあぁ・・・


 と、身体が溶けて、焼かれていく感覚がある。

 でも、熱くない…


(まさか、俺、死ぬのか??)


 俺は、何も考える暇を与えられず、

 純白の光に身を焼かれて……



◆◆◆

 

 

(どこだ、ここは…)


 目が覚めると、俺は薄暗い場所で寝転んでいた。

 見つめる天井は遥か高く、真っ暗闇に覆われてみることが出来ない。

 空気が重苦しく冷たい。


(あれ、俺、教室で授業を受けていたよな…?)


「どこだ、ここは…」


 俺のすぐ隣で、知っている声がした。

 隣の席のイケメン君、竹田慎吾たけだしんごである。


「今の何だよ??」


「私、死んだの??」


「いやぁあっ、なんでっ!?」


 口々に、クラスメイトの困惑した声が聞こえた。

 静かだった空間に、一気に騒がしくなる。

 俺は身体を起こして、周りを見渡した。



 どうやらここは、綺麗な石で造られた、円柱状の構造物の中のようである。

 床に嵌められた無数の青い宝石が、淡い光を発しているが、

 かなり薄暗い空間だ。

 巨大円柱空間に閉じ込められるように、

 俺のクラスメイト達、一年一組の生徒が集まっていた。


「どこだよここ!? 何が起こったんだ!?」


「なんで?? みんなの位置が、席順そのままだ」


「怖いよ、これ、閉じ込められてない?」


(何だ? 何が起こっているんだ!? 気づいたら皆、こんな場所に居たなんて、どう考えてもおかしいだ。

 誘拐か、まさか死後の世界とか!?

 とにかく異常事態である。)

 


 ガンガンガン!!!


「くそっ!出せよっ!どこだよここは!!」


 石の壁を強く叩きながら怒鳴り声を上げるのは、岡野大吾おかのだいごである。

 うるさくて生意気な、俺の嫌いなタイプである。

 野球部で一年生ながらレギュラーの、クラスの番長的存在である。


 素手で石壁を叩いて、手が痛くならないのだろうか?



 ギギギギギギギィィ……


(え?)


 重たい軋むような音が響いた。

 その音の出所からは、明るい光が差し込んでくる。


 壁にある大きな石扉が開かれたのだ。


 俺たちは、皆、シーンと鎮まりかえり、息を呑むようにその眩しい光の向こう側を見つめた。



 カツン、カツンカツン、カツン……


 石扉の向こうから、複数の足音が鳴り響く、

 二つの人陰が現れた。

 背が高い一人と、背が低い一人、

 赤と白の複雑な模様のコートを、ヒラヒラとなびかせながら、大きな白い仮面を被っている。



「ようこそお越しくださいました、ネラー世界の皆様。

 私の名は、案内人、ギャベルと申します。

 驚くかも知れませんが、ここは貴方達の世界とは全く異なる世界

 ナロー世界という世界でございます。」


(なにぃぃ!?

 異なる世界って、

 まままままさか、異世界ってヤツか?!!

 これは所謂いわゆる、クラス転移ってやつ!?)


 俺背の高い仮面男「ギャベル」が発したセリフに、

 転生アニメでお決まりのセリフに、

 俺は興奮せざるを得なかった。


「とつぜん召喚してしまい、申し訳ないのですが、緊急事態なのです。

 私たちの頼みを聞いて下さい!

 私たちは、あなた達ネラー世界の勇者さま方に、ダンジョンの攻略をお願いしたいのです。」


(出ました! お決まりの「世界を救って下さい」展開!!)


 ダンジョン!? 勇者!?

 なるほどな、面白くなってきたじゃないか!!

 これで俺が勇者として活躍すれば、

 クラスの人気者になって、陽キャになれるかも知れない。

 あわよくば、彼女を作ってセッ○○だって…!!

 俺はワクワクとした気持ちで、ギャベルさんの次の言葉を待った。



「ハァ!? 勇者!? ダンジョン? ふざけた事言ってんじゃねぇよ! 早く俺たちを元の場所に返せ! 俺は部活で忙しいんだよ!」


 そう叫んだのは、野球部の岡野大吾おかのだいごである。

 いやまあ、気持ちは分かるけどさ、異世界だよ??

 ワクワクしないのだろうか?


「そうだよ、訳わかんねぇ! ちゃんと説明しろ」

「誘拐だよね、コレ」

「怖いよっ、何言ってんのあの人」


 岡野大吾おかのだいごの言葉に続いて、クラスの皆が、一気に騒がしくなる。


 どうやら、この展開にワクワクしているのは俺だけのようだ。

 他のクラスメイト達は、異常事態への不安や恐怖の方が大きいらしい。

 確かに不安はあるけどさ…… 

 でも異世界だよ!?

 きっと魔法が使えるよ!?


 ザワザワとした空間の中、仮面男ギャベルは説明を続ける。


「皆さま、どうかお願いします。たった一日で終わる簡単な任務です。

 【特殊スキル】をもった貴方達にとっては、簡単な任務の筈です。

 任務完了時には、19億円を報酬として支払わせて頂きます。」


(はぁ!?

 じゅじじゅじゅうきゅうおくぅ!!??」


「は?」

「19億って!??」

「はぁ!? なに言ってんだ!?」

「特殊スキルって何?」


 仮面男ギャベルの、19億という数字に、クラス中がどよめいた。

 報酬が19億円って…嘘だろ!?

 幾らなんでも、ぶっ飛び過ぎだろ!?



「19億!? たった一日働いただけで!? そんなのやるしかねぇだろ!? なぁ皆!」

「いや、嘘だろ」

「冗談はいいんだよ!早く教室に返せ!」

「ダンジョン攻略とかって危なくないんですか!?」

「簡単な任務と言ってたから、怪我の心配はないんじゃないか?」


 クラスメイトが、ザワザワと騒ぎはじめる。

 しかし、19億円という破格の値段に、魅力を感じないものはいないだろう。



「ちょっと待って下さい、19億円なんてっ! 私達をバカにしてるんですか!? 

 お金なんていりませんから。私達を元の世界に返して下さい!」


 一際大きな声を張って叫ぶのは、新崎直穂にいざきなおほさんである。


 黒髪ショートカットで、ツンとした目の真面目な女の子だけれと、

 話してみると案外面白い人である。

 そしてこの学校で唯一、俺と同じ中学校の出身である。

 しかし俺が中学の時、彼女に告白してフラれたこともあって、あれ以来まともな会話をした事はない。

 いやフラれたといっても、もう未練なんてないんだからな。

 今は三次元リアルよりも、二次元バーチャルしか勝たん!



「確かに、19億円は高いかもしれません。疑い怪しむ気持ちも分かります。

 ですが、ダンジョンのボスの攻略報酬である。

 三つの【ネザーストーン願いを叶える石】という宝石には、19億円以上の価値があるのです。

 さらにダンジョンの攻略期限は、あと3日しかありません。

 私たちは、【特殊スキル】をもつ勇者様の方々に頼る他にないのです。

 どうか私たちに、力を貸して下さい!」



 背の高い仮面の男ギャベルは、膝をついて土下座をした。


 一方で、彼の隣にいるもう一人の背の低い仮面の人物は、じっと腕を組んだまま微動だにせずたたずんでいた。

 おいおい。

 ギャベルさんが必死で土下座しているのに、お前はリアクションも無いのかよ。

 ギャベルさん可哀想に…



「だってよ! とにかくやってみようぜ!!19億なんて最高じゃないか!!」

「土下座までされたら、ね?」

「俺たち、魔法とか使えるんじゃないのか?! 俺こういうの夢見てたんだ!!」

「しょうがねぇなぁ、困ってるなら、手伝ってあげようか」


 仮面男ギャベルさんの誠意の土下座と、なにより19億円という破格の数字に圧倒されて、

 クラスの意見は、ダンジョン攻略に力を貸すという方向でまとまっていった。



◆◆◆

 

 


「皆様、ご協力ありがとうございます。

 ではまず、今後の予定を説明していきます。

 まずは【特殊スキル】の確認と、実践練習、そしてダンジョンボスの攻略を行ってもらいます。

 その後、最高級ホテルでディナーパーティーの後、報酬の19億円を支払って現実世界に帰還という形になります。

 帰還に関しては、安心して下さい。

 私たちは、あなた方を、召喚直前に居た時刻・・場所・・に送り届ける事ができます」


(マジか、元の時間と場所に戻れるのか、

 良かった。

 それなら今日の【白菊ともか】ちゃんの3周年記念配信を、リアルタイムで見る事ができる!)


「同じ時刻って? どういう事??」

「タイムスリップってヤツだろ。ここでの時間がなかった事になるってコト」

「へぇ。じゃあ、何も心配いらないじゃん」


「はい、皆様は安心してボス攻略に励んで下さい。

 ではさっそく、【特殊スキル】について説明します。

 まずは皆さん、心の中で「ステータスオープン」と、叫んで下さい。

 そうすれば「ステータスウィンドウ」を見る事ができます。

 現れた「ステータスウィンドウ」には、自分のステータス、レベル、スキルに身長体重など、様々な個人情報が載っております。

 ああ、本人にしか見ることが出来ないので、プライバシーが気になる方はご安心を」


 仮面男ギャベルはそう説明した。


 

「うおお、マジのステータス画面じゃん!!すっげー!ゲーム画面よりかっけー!」

「特殊スキル、【火爆ファイヤバーン】!?、なんだこれ。」


 さっそく試したのであろうクラスメイトが驚愕の声をあげる。



「【特殊スキル】は、個人の得技とくぎもとになっています。

 あなたの得意な事を、最大に生かして、ダンジョンボスと戦えるはずです」


 仮面男ギャベルは、そう付け加えた。



「へー。私はサッカー部だから、【剛蹴スチルキック】と【爆走バーンダッシュ】ってカンジなのね」


 と、呟いているのは、朝尾和奈あさおかずなさんだ。

 先ほどの【クラスのエロい女子ランキング】で一位を取っていた彼女であるが、彼女は明るくて、サッカー部で唯一の女子部員として汗を流している。

 加えて、彼女はパイがデカい。

 彼女が二つの果実をユサユサと揺らしながら駆け回り、玉を蹴る姿は、多くの男子の期待と股間を膨らませる。

 彼女が、このクラスで一番モテるのも、必然である。



 彼女のスキルは、【剛蹴スチルキック】と【爆走バーンダッシュ】だとぉ?!

 名前からして、無茶苦茶強そうなスキルじゃないか!

 さて、俺の特殊スキルはなんだろうか?

 俺の得意な事といっても、あまり心当たりがない。

 なにせ俺は、成績不振で運動音痴のひょろがり陰キャぼっちだ。

 ゲーム作りとアニメとVtuberにハマっている二次元オタクだ。

 友達なんて、ネットの世界にしかいないのだ。



(ステータスオープン!!)


 俺は、心の中でそう叫んだ。

 頼む!

 どうか強いスキルでありますように!!




 

 万浪行宗まんなみゆきむね

 ――――――――――

 身長 165cm

 体重 59㎏

 ルックス   21   

 ――――――――――

 レベル  27/100

 職業   召喚勇者

 ――――――――――

 攻撃力    18

 防御力    28

 魔法力    58

 魔法防御力  32

 敏捷性    14

 知能     42

 ――――――――――

 総合値 162/600 

 ――――――――――

 特殊スキル【自慰マスターベー〇ョン

 ――――――――――







 はぁ???





 いや…待て待て、落ち着け、

 そんなバカな事あるか??


 いや無いな……

 ふぅぅ…… 落ち着けよ

 見間違えただけだ。

 そうに違いない。


 もう一度、見てみよう。


 えーっと、俺の特殊スキルは・・・・・・




 ーーーーーーーーーー

 特殊スキル 【自慰マスターベー〇ョン

 ーーーーーーーーーー




 ・・・・・・




 どうやら、見間違いではなかったらしい。

 これが俺の特殊スキルだとぉぉぉ!??

 嘘だろ!??

 見間違いであってくれよ!!


 自慰!マスター○ーション!!

 即ちオ○ニー!!

 エ○イ妄想をしながら、一人で自身の○器を擦り、快感に浸るという、俺の日課じゃねぇかよぉ!!

 


 仮面男ギャベルの説明では、

「【特殊スキル】は、個人の得技とくぎもとになっています」

 と言っていたが……


 【自慰マスター○ーション】が、俺の得技とくぎだって言いたいのか!?

 人として終わってるだろ!?

 

 確かにさぁ! そりゃ好きだよ!!

 学校から帰れば、両親に内緒で買ったオ○サポ音声、エ○アニメ、オ○ホールを使って、

 毎日むちゃくちゃ○コってるよ!!


 でも仕方ないじゃないか!!

 俺は健全な男子だぞ!?

 クラスメイトとまともに会話できない俺に、彼女ができるわけもないんだ!

 オ○ニー以外に得意な事がないからって、こんな仕打ちはあんまりだろ!?

 せめて、「スキルなし」の方がマシだったわ!!



 それに【自慰マスターベー〇ョン】スキルって、一体何だよ!?

 オ○ニーで戦えってのか?!

 ただ自分がめちゃくちゃ○持ちいいだけじゃねぇかよ!?


 そんなツッコミを入れると、ステータスウィンドウがさらに開いた。



ーーーーーーーーーー

 【自慰マスターベー〇ョン

 自慰行為のフィニッシュ後、10分間のあいだ。

 ステータス上昇し、賢者となる。

ーーーーーーーーーー


 

 誰が賢者タイムじゃ!!? 

 ふざけんじゃねぇ!!

 強くなる為には、毎回オ○ニーしろって事かよ?

 ボスとの戦闘中に!?

 クラスメイトのいる中で!?

 出来るわけねぇだろうが!!



 最悪だ。生物として恥ずかしい。

 こんなスキル、誰にも知られる訳にはいかない…

 誰かに訊かれたらどうしよう……


 俺はステータスウィンドウをさっと閉じて、

 周囲の様子を確認した。




「うぉー、俺様は五個も特殊スキルがあるぜ!」

「まじ!?流石だな、何持ってんの!?」

「【怪力パワー】と、【空中浮遊エアフロー】と、【聖騎士ホーリーナイツ】と・・・」

空中浮遊エアフロー!?飛べるの?いいなぁ!!」

「私は【超炎魔法ハイパフレイム】と、【真空斬バキュースライス】だった、なーちゃんはどうだった??」

「え? 私?? ……私は、【超回復ハイパヒーリング】の、一つだけみたい……」



 五個!? 

 何でやねん!!

 俺はゴミスキルを一つしか持っていないのに!?

 五個だと!?

 【特殊スキル】を五個もつチーターの名は、野球部の岡野大吾おかのだいごであった。

 まあスポーツ万能の彼なら、当然かもしれない。



 さーて、困った……

 もし誰かに

「なあなあ、お前の特殊スキルは何だった?」

 って訊かれたら、

 なんて誤魔化せば良いんだ!?

 嘘をついても、結局あとでバレてしまうし……

 

 まあでも心配ないな。

 俺は生粋の陰キャぼっちだ。

 俺に話しかけようとする人なんて、誰も居ない。


 俺はそう思い、安心していたのだが……




 クラスで一番大嫌いな男が、俺に話しかけてきた。


「なぁなぁ、おっぱいクン?? お前の特殊スキルは何だったんだ?!」


 野球部の、岡野大吾おかのだいごが、

 わざわざ俺に、そう聞いてきた、


 岡野大吾おかのだいごは、ギャグのセンスもあって、

 クラスの雰囲気を盛り上げるリーダー的存在である。

 しかし一方で、声が大きく暴力的で、俺たちのようなぼっち陰キャを見下してくる側面があるのだ、

 クラス内には俺以外にも、心の中で彼を嫌う者は少しはいるだろうが、それが口から外に出ることはない。

 陽キャは多少性格が悪くても、面白ければ陽キャなのである。

 

 ちなみに、おっぱいクン、というのは、こいつが俺に付けたあだ名だ。

 俺の名前の「行宗ゆきむね」の、

 "むね"、が、"胸"になって、おっぱい君というあだ名になった。

 

 本当に、こいつはクソ野郎だ。



「おい、なんか言えよ。俺様が聞いてんだぞ!?」

「・・・言いたくない・・・」


 俺は断った。

 言えるわけがねぇ、こんな奴に、

 もしスキルを言ったら、絶対に皆んなの前で暴露されて、

 クラスメイトから白い目で見られて、

 俺のあだ名は「オ○ニー君」に降格してしまう。

 俺のクラスでの居場所は、本格的に消滅する。



「ふん、やっぱりお前、クソつまんねぇなぁ。

 だから友達いねぇんだよ。」


 岡野大吾おかのだいごはそう言い捨てて、去っていった。


 岡野大吾おかのだいごは、ここで俺にキレたり、暴力を振ったりしないのだ。

 そんな事をすれば、クラスメイトからのヘイトを買ってしまう。

 あくまでクラスの中心として、陽キャとしての立場を崩さずに、

 俺を貶してくるズルいやつなのだ。


 

 まあ、とにかく一安心だ。

 俺のスキル情報は守られた。



「皆さま静かに、話を進めたいと思います。」


 仮面男ギャベルが、大きめの声で皆の注意を引いた。 

 なかなかに渋い声で、迫力がある。 

 途端に、この空間はしーんと、鎮まりかえった。


 

「さて、スキル内容は確認出来ましたでしょうか?

 では時間もありませんので、さっそく実戦の中で「特殊スキル」での戦闘に慣れてもらいます。

 お手洗いや軽食を済ませた後、バルファルキア大洞窟。深層第七階へと集団転移いたします。」


 ギャベルは、静かな声でそう告げた。



 ええ? もう実戦をするのだろうか? 

 たしかに日帰りの仕事って話していたから、 今日の内には現実世界へ帰してもらえるそうだけど。

 

 戦闘初心者の俺たちが、日帰りでダンジョンをクリアなんて出来るのだろうか?

 簡単な任務なのかもしれないな。

 夢の日帰り異世界旅行。

 俺にとっては、物足りなくて残念だけど、

 クラスの皆はやる気のようだ。


 さらに、俺のスキルは使いものにならない。

 

 特殊スキルを使わずに、戦闘なんて出来るのか?

 俺、要らない子では??


 モヤモヤとした不安を抱えながら、

 俺はクラスの皆と共に、ダンジョンへと向かうのだった。

 

 

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