第1話
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「こんにちは、皆さん。君たちにこの世界について簡単に説明しようと思う。
この世界には“異界種”と言われる化け物がおり、奴らは人間に化けて過ごしている。そして奴らは人間を孕ませて繁殖していく。一応男も可能だ。
ところで“異界種”とは今のところ人間に化け、孕ませてくる怪物だと言うことしか分かっていないだろう。そんな君たちに詳しく話してあげよう。まぁその名の通り異界の者だ。安直な名前だなぁって笑っている奴らもいるだろうが、この世はそんなものが多いんだぞ。よく発明したその人の名前を付けるとかな。
あぁ、話が脱線してしまったな。すまん、すまん。
それで異界というからには、こちらの世界に繋がる門がある。その門は色々な形があり、空間にヒビが入ったようなものやブラックホールみたいな物などなど、沢山あるんだ。その為、小さい門の場合気づかれずに“異界種”が入ってくることがある。
そんなヤバい奴がこの世界に来たらどうするんだよ!って焦るだろうが安心しろ。昔から化け物には其れらを狩るものがいる。悪魔や妖怪を退治するエクソシストや陰陽師などがいるだろ? “異界種”にも其奴らを倒す奴がいる。その名は“異界を狩る者”。これも安直な名前だがなww」
これから語るは“異界種”と“異界を狩る者”の物語──
風で軽やかに舞う夜のような青髪。深い海のような青藍色の瞳。肌は陶磁器のように滑らかで白く、身体は細いが男らしいゴツゴツとした手。
「翡翠って本当にバカで可愛いよな」
嗤いながらそう言ってきたのは彼「鏡夜」だった。
春を越え、夏に差し掛かろうとしている、まだ涼しい風が吹く季節。時刻は子の刻──
そんな真夜中、夜の道を二人で散歩をしていると、急に僕「翡翠」の方を振り向き、目を細め嗤いながら鏡夜くんは言ってきた。
『はぁ……?』
僕は急にディスられことに意味が分からず、口をポカンと開け、鏡夜くんを見つめる。
「ほら、そういうところ。」
トンッと跳んだかと思えば、橋の手摺りの上に立ち、手を後ろで組み、クルッと半回転した。僕は不安定な場所なのに半回転出来ている、鏡夜くんの運動神経に驚いた。
「ねぇ、本当は気づいているんでしょ?」
鏡夜くんの深い海のような青藍色の瞳が怪しく光る。口元に弧を描き、妖艶な笑みを浮かべている。
「俺が“異界種”であることを……」
鏡夜くんはそういうと目を閉じ、ゆっくりと開く。さっきまでの溺れてしまいそうな青藍色の瞳は消え、血の様な深い深紅の瞳へと変わった。夜のような深い青い髪と対比する赤い瞳はとても綺麗だ。そして後ろに大きく輝く満月が鏡夜くんを照らし、より怪しい雰囲気を醸し出す。
『えっ、異界種って?』
僕は少し首を傾げ聞く。耳にかけていた自分の翡翠色の髪がはらりと落ち、目にかかる。
「恍けても無駄だよ。全部知っているんだから。翡翠が “異界を狩る者” の一族だってこともな。」
『そっか……』
僕も目を閉じてゆっくりと開くと、瞳は鮮やかな黄緑色から常磐色へと変わり、左の目に黄緑色の線で描かれた不思議な紋様が淡く光る。僕は普段あまり笑わないのだが、何故か勝手に口角が上がり微笑んでいる。
『そうだよ。“異界を狩る者” の血が流れてる。だから僕も鏡夜くんのこと全部知っているよ。』
淡く光っていた紋様が強く光出す。夜の暗さでもはっきりと見えるほどに輝いた。
『でも、僕のこと全部知っているのに近づいてくるなんて、バカなのは鏡夜くんの方だよ。』
少し嘲笑うように言えば
「はぁ?」
と鏡夜くんは低い声を出し、イライラしている様子で僕を見てくる。それでも僕は
『流石に鏡夜くんが異界種の中で結構強くても僕には勝てないよ。』
と煽り続ける。鏡夜くんはよく色んな人を煽っているから、時々やり返されることもある。その為に煽り耐性はあるが、僕は例外みたいだ。何でなのかは知らないけど。
「俺が負けるはずないだろ!」
真紅の瞳が僕を睨む。鏡夜くんは何を思ったのか月を見始めた。鏡夜くんは月を見つめると次の瞬間、怪しげな風が吹き抜け青白い風が鏡夜くんを包み込み、隠す。風が収まるとそこには狼のような耳が生え、爪は長く尖っている、鏡夜くんがいた。鏡夜くんはストンッと橋の手摺りから降りた。
「これでも負けると?」
ニカっと笑い、鋭く尖った牙を見せてくる。普通の人だったら怖いなどと思うのだろうが、僕は何も思わなかった。
『そうだね。でも、全ての力を使いこなせていないみたいだけど?』
「ッ……!?」
『鏡夜くんってもったいないよね。狼と蝙蝠の力があるのに。』
「煩い!」
『だってそうでしょ?』
鏡夜くんはキッと睨みつけてくるが、僕は一切怖くない。だって今は僕の方が優位な立場なんだから。
『今日は満月のせいで狼の力しか使えない。だけど新月になれば蝙蝠の力が使える…なんて不便過ぎ。』
クスクスッと小さく笑いを零す。
『一度にどっちも使えないなんてね。勿体ないよね? 狼は力とスピードに特化しているだけだけど、蝙蝠は支配に特化しているんだから。支配は空間だけではなく、人までも出来る。そんな異界種で上位の存在の血が流れているのに使えないなんてね?』
「煩い! 欠陥品が」
『欠陥品、ね。懐かしいなぁ、その言葉。昔よく言われたよ。』
目を閉じてあの頃の事を思い出す。
「全部知っている。お前が“異界を狩るもの”の名家に産まれたのに、一番弱く欠陥品と呼ばれていたことを。」
『へぇ〜 一応僕のこと知っていると言うだけあって、ちゃんと調べているね。だからこそ僕を狙ったんでしょ。自分の“異界種”の血と“異界を狩るもの”の血の流れた子供を僕に産ませるために。』
「………」
『鏡夜くんって当てられるとよく黙るよね』
「で? 俺の目的が分かっているなら素直に受け入れろ。」
『あはははっ!』
僕が急に笑ったからだろうか、鏡夜くんは驚き怪しむように睨んできた。
『鏡夜くんは自分の立場が分かっていないみたいだね?』
僕は靴音を鳴らしながら鏡夜くんに向かってゆっくりと歩く。鏡夜くんは自分が勝つと自信があるのだろうか、一切動かなかった。近くまで近づき、鏡夜くんの左頬を右手で優しく包み、鏡夜くんの耳に顔を近づける。そして──
『鏡夜くんは“孕ませる”側ではなく“孕まされる”側だよ。』
「なっ!?」
左頬を触れていた右手をゆっくりと首、胸、お腹へと沿ってスーッと撫でる。そして指先でトントンと軽くお腹を叩く。
『鏡夜くんは此処に僕のを沢山注がれて孕むんだよ』
「んっ……」
僕は背伸びをして鏡夜くんの首に手を回す。その瞬間カチッとこの場に合わない無機質な音が響く。
「ん?」
『ふふふっ♪ 似合っているよ』
「ひ、翡翠?」
『ん〜どうしたの。そんな驚いた表情して』
「な、何付けたんだ?」
『対狼用の首輪だよ。うん、似合ってる』
鏡夜くんに付けた首輪をスーッとなぞると、鉄の冷たさが僕の熱を指先から奪っていく。
「外せよ!」
無理矢理外そうとするがビクともしなかった。
『諦めなよ。その辺の雑魚が作ったのとは違って、僕が作ったやつなんだから壊れるはずないでしょ』
「だってお前……」
『面倒くさくて本気出してなかったら、欠陥品って呼ばれたんだよね〜』
「えっ、じゃあ……」
『僕本当は一番強いんだよ』
ニコッと笑うと面白いぐらいに鏡夜くんの顔が青ざめていく。
「えっ、あっ……」
『鏡夜くんって本当にバカで可愛いね』
鏡夜くんに付いている首輪を撫で、嗤って言う。
「〜〜〜ッ!」
まさか初めに僕に言ったことをそっくりそのまま返されると思ってもいなかったのだろう。魚のように口をパクパクさせていて、もの凄く可愛い♡
『ほら、帰るよ』
「えっ?」
『ん? もしかして此処で犯されたいの?』
「はぁ!?」
『この辺の空間一帯に認識妨害の結界を張っているから、他の人にはバレないかもしれないけど…もしかして、そういうプレイが好きなの?』
「好きじゃない!」
『そっか、じゃあ帰ろうか』
「……新月になったら絶対逃げてやる」
『そうだね。新月になったらその首輪意味ないもんね。蝙蝠になって逃げれちゃうから。でも、あと15日もあるんだよ。鏡夜くんは何日で僕に堕ちるんだろうね〜』
「童貞の翡翠なんかに堕ちるかよ」
『楽しみだなぁ〜 僕から離れられない体に改造してあげるからね♪』
バカで可愛いのは君の方 青 @Aonosekai_
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