SS
SS3【はちみつ】
「......なぁ、沙優」
「んぅ......どうしたの?」
行為の後。たまに赤ん坊のように、無性に沙優の乳首へとかぶりつきたくなる。
まさに今がそれなのだが。
「最近、乳首に何かやってるか?」
「え、どうして?」
「なんというか......以前よりも香りと甘さが増したような気がして」
どうやら俺の指摘は当たっていたらしく。照れ混じりに微笑んで、こう告げた。
「しゃぶっただけでわかっちゃうなんて凄いね。実は少し前からはちみつパックを始めてみたの」
「はちみつパック?」
聴きなれない言葉に目を細め、頭を横に傾ける。
「はちみつにプレーンのヨーグルトをちょっと混ぜた物を、胸のトップ、乳首に何回か分けて塗るの。人によっては、薄めないでそのままはちみつを塗る人もいるみたいだけど、私は混ぜた物の方が効果がある気がするんだよね。体の相性的に」
「なるほど。どおりでな」
そういえば昔、有名な美人女性タレントの姉妹が美容のためにはちみつを塗ってるとかいうのを、SNSか何かで耳にした覚えがあるような、ないような。
実際目の前で試している人間がいるとなると、それなりに世間的には認知されているらしい。
「塗る時、くすぐったくないのか?」
「そりゃくすぐったいよ。誰かさんがいっぱい弄るから、すっかり感度良くなっちゃったし」
「......わりい。つい、な」
男はどんなに歳を老っても、女性の乳首の前では赤ん坊に幼児退行してしまう、惨めな生き物なのだ。
子供は産んでいないのでもちろん母乳は出ないにしても、沙優のそれはスタイル同様、実りもほどよく。少し弄ってやると、そこだけ別の生き物みたいにぷっくり突起して愛らしい。
愛らしすぎて思わず過剰にこねくり回したり、時には甘噛みして反応を楽しんでしまう。
「今度からやりすぎないよう、できるだけ注意するよ。沙優の乳首は俺だけの物じゃないしな」
「そうだよ。赤ちゃんが生まれて、その子が初めて母乳を飲むときに「あれ? ママのおっぱい、おじさんの唾液みたいな臭いがする」って思ったら嫌でしょ?」
「生後間もない赤ん坊におじさんの唾液臭が認識できるか」
沙優の言うことはごもっともだ。
女性の乳首は生まれてきたばかりのか弱い
決して男の性欲・性癖を満たすものではないと、世の男性は肝に銘じるべきだ。
「吉田さんもお母さんのおっぱいから、お父さんの唾液の臭いがしたら嫌でしょ。それと一緒」
「またわかりやすくとんでもない例え方を。だよな。生まれてくる子供がまず最初に口にするのは、母ちゃんのおっぱいだもんな」
沙優との子供――か。
外で小さい子連れの仲睦まじい家族を見る度に思う。
自分もいつかあんな風に温かな家庭を築けるとは想像もできない。
ただ、無条件で周囲を幸せのオーラに包み込むあの雰囲気には、子供が苦手な俺でも憧れを抱いてしまう。
そう思うようになったのは、きっと沙優と出会い、結ばれたおかげなのは言うまでもなく。
「でもさ、赤ちゃんが生まれるまでは、吉田さん専用だから......これからもいっぱい弄ってもらってかまわないからね」
「じゃあその時まで思う存分堪能しないとな」
「んぅッ!? ...もう......吉田さんのいじわる」
肩をビクンと大きく震わせ、甘美な表情で息を荒くした沙優が、俺の頭をそっと優しく撫でた。
爪先をほんのちょっと引っかけただけなのにこの反応。
愛する者の身体が自分好みにどんどん開発されていく――背徳感に酔いしれそうになるが、これまでの経験値によってギリギリの堕ちる寸前で毎回ブレーキが働く。
日々勉強を重ね、壊さないよう、それでいて最大限の快楽を与えるよう努力する。セックスとは、とても奥が深い道なのだ。
「さっきのはちみつパックなんだが......他の場所でも効果はあったりするのか」
ふと、ここである疑問が頭に思い浮かんだ。
「他の場所って言うと?」
「例えば......下の方、とか」
好奇心は茂みの中。
見下ろす沙優はため息一つ吐き出し、呆れの混ざった笑みを浮かべ告げた。
「吉田さん、もう私に全然遠慮しなくなってきたよね」
「仕方ねえだろ。沙優が魅力的すぎるのがいけねえんだから」
「そう言えば何でもやらせてくれると思ったら大間違いだよ。......じゃあ、今から試してみる?」
「よろしくお願いします」
嫌よ嫌よも好きのうち。
なんだかんだ、沙優も嫌がらず俺の提案という名の新プレイの開拓に乗ってくれる。
隠さなくてもいいのに、「どんなに身体を重ねても、恥じらいだけは捨てたくないから」という理由から、沙優は絶対に生まれたままの姿では部屋を歩き回ったりはしない。
そんなバスタオル越しでも安産型の尻だとわかる沙優は、これでもまだまだ成長途中なのだから
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