儀式の行程の緻密な描写と、決して「返し」てはいけないという禁忌の明確さにより、尋常ではない緊迫感が全編を支配する、上質な恐怖を堪能できる作品です。儀式の掟と対照的に、主人公の思考が現在と過去を行きつ戻りつすることによって話が進む構成自体も、読者自身が「返し」の禁忌に触れているかのような効果を生んでいて、とてもおもしろかったです。最初から「読み返し」たくなる、しかし「読み返す」のが恐ろしくも感じる結末まで、一気読みで楽しめました。