52.嫌な予感

 



「え? リックが居なくなった?」


 白く艶やかな鳥を前、不思議そうに首を傾けるリレイヌ。目を瞬き、どうして?、と言いたげな様子を浮かべる彼女に、先程シェレイザ家より一報を受け取ったシアナは困ったように頬に手を当て首を振った。


 わからない。


 暗に告げる彼女に、リレイヌはさらに目を瞬く。


「リックくんが何も言わずに脱け出すような子じゃないのもあって、行き先も検討つかず困ってるみたい。こっちにも来てないかって聞かれたけど……」


「そっか……ウンディーネ」


「はぁい」と声がし、水の彼女が現れる。優雅に漂う彼女に「リック知らない?」と問いかければ、彼女は不思議そうな顔をしてから思案顔に。「そういえば最近呼ばれないわね」と口にする。


「何かあったのかしら。あの子、毎日私のこと呼んでたのに、三日前くらいからパタリと連絡なくなったのよねぇ」


「ウンディーネも知らないの?」


「私も常に一緒にいるわけじゃないですからね」


「何かあったんですか?」、と訊ねられ、リレイヌは視線をシアナへ。それを受けたシアナは、「行方不明らしいわ」と口にし、ウンディーネがポカンとする。


「ゆ、行方不明って……あの子が? あの素晴らしく見目のいい、あの子が?」


「見目はともかく、突然家から居なくなったみたい。丁度三日前くらいから、ね」


「そんなの事件じゃないですかぁ!」


「ヤダァ! 私の癒しがぁ!」と叫ぶウンディーネを苦笑気味に見て、リレイヌは「私探してくる」と立ち上がった。シアナが「あら、探しに行くの?」と彼女を見る。


「うん。探しに行く。ウンディーネたちもいるから危なくないし……それに、なんだか心配」


「リレイヌ……」


 シアナはそこで微笑むと、そっと膝を曲げ、まだ小さな彼女を見下ろした。「危険だと思ったら引き返すのよ?」と告げられ頷く娘に笑い、シアナは漂うウンディーネに目を向ける。


「この子のことは任せます。それと、嫌な予感がするわ。早く行ってあげて」


「仰せのままに」


 深く頭を垂れたウンディーネが、「リレイヌ様」と少女を呼ぶ。それに頷くリレイヌは一度シアナを見て、すぐにその場を駆け出した。

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