DEMON LORD DESTROYED

 無限にも等しい時を経て、数え切れないほどの攻撃を受けた有明は時間の感覚を失っていた。分かるのはサタケのライフだけだ。


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サタケ         

17   

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 サタケの体は痩せ細り、果てようとする重病の老人を思わせた。

 有明は、そんなサタケをじっと見ている。眼差しには慈悲すらも感じられた。


「ぼくちゃん、ぼくちゃんは……すくわれたい……だれか、たすけて……」


 サタケは小枝のような手を掲げ、細い棒きれを空中に生成する。手を伸ばしても棒を掴めず、前のめりに倒れた。


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サタケ         

0

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 サタケの体はモンスターのように灰となり、溶けて消滅した。


「お疲れさまでした」


 有明の言葉は冷淡にも思えたが、心中では死にゆくサタケの安らかな眠りを祈っていた。看取り人の心境と同じだ。


 死すべき定めの者をいくら叱咤激励しようが、罵倒しようが、どうしようもない。ただ祈るしかない。安らかであれと願うしかない。

 だから「お疲れさまでした」以上のことが言えない。


 何もない空間、ダンジョン「万魔殿パンデモニアム」の天井や床に亀裂が入った。魔王サタケの死亡に基づくダンジョン崩壊だ。


 ダンジョンは大地震のように揺れ、あちこちの亀裂は音を立てて大きくなる。割れ目の奥は真っ暗で、深淵のように見えた。


「終わったのかな」


 有明はほっと溜め息をつき、へたり込んで倒れ、目を閉じた。

 本当に疲れたと思いながら。


 コンクリートが割れるような音を立て、ダンジョンが壊れていく。天井は崩壊し、床は砕け、広がる亀裂が有明を飲み込んだ。


 意識が遠のくのを感じつつ、有明は思った。

 お父さんとお姉ちゃんに会いたかったなあ――。

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